(007) 時をかける化粧師『ラ・マキユーズ~ヴェルサイユの化粧師~』(漫画紹介)
現代人が過去にタイムスリップする漫画や小説はたくさんありますね。
漫画だと、
信長のシェフ(料理人)、ジパング(海上自衛隊)、JIN ~仁~(医者)。
小説はそれこそたくさん。
戦国自衛隊(陸上自衛隊)、中高生が主人公のジュブナイルSF……。
マーク・トウェインの『アーサー王宮廷のコネチカット・ヤンキー』は19世紀のアメリカ人・職工が頭を殴られてアーサー王の時代に行ってしまい(なぜ?)、(当時の)現代人の知識とヤンキー特有の余計な親切心でブリタリアの近代化を図ります。
これから紹介するのは『ラ・マキユーズ~ヴェルサイユの化粧師~』は時をかけた化粧師の話。
主人公は化粧品会社に勤める敏腕研究員・江藤流花は、リケジョにして重度の方向音痴。出張先のフランスのホテルで方向音痴のせいで18世紀のフランス革命前のパリにタイムスリップしてしまいます。まだマリー・アントワネットが輿入れする前です。
途方に暮れるルカは、自称・天才髪結い師で貴族への野望を抱くレオナールの手助けと、持ってきていた化粧品と化粧の化学的知識で魔術師としてなんとか18世紀を乗り越えていきます。
話の形としては、戦国時代にタイムスリップした料理人が、当時なかった知識と手に入れられない素材をどうにか工夫して絶品料理を作り、様々な政治的難問を解決する『信長のシェフ』に近いかもしれません。
この話では当時の、特に高貴な女性の地位、女性の美について描かれています。現代は違って、当時の高貴な女性にとって自らを綺麗に保つことは家のためであり、自分の存在意義でもあることがうかがえます。
特に、マリー・アントワネットの実家・ハプスブルグ家での逸話は、アントワネットの実姉で「せむしの皇女」アンナや絶世の美女と称されながらも天然痘のために痘痕面になったエリーザベトが切ない。
そして、この漫画に出てくる人物はほとんどが実在の人物です。
そこも注目ポイントです。かなり駆け足ではありますが、当時のフランスの上流階級がわかります。企画・原案の堀江宏樹さんのコラムも〇。
全5巻一気読み必然の一作です。
みやの はる (著), 堀江 宏樹 (企画・原案, 監修)『ラ・マキユーズ~ヴェルサイユの化粧師~(全5巻)』(BRIDGE COMICS)
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