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重い本と軽い本、わかりやすさの罠
(少し毒)
重量の重い軽いではありません。
鬱になるような重さ、軽快なスキップするような爽やかな軽さ、でもありません。
難しい本、易しい本と思ってもらえれば。
(だったらそう書けばいいのにね)
村上春樹の本はどうでしょう?
文章は難しくなく読みやすい。けど、難しいか易しいかと言うと難しいと私は思います。ひとつひとつはわかるけど、全体で見るとわかりにくい。
そんな村上春樹を評論したのが、加藤典洋『村上春樹は、むずかしい』(岩波新書)です。
典洋さん自身の文章は少し読みにくく理解しづらいのですが、読みにくさとわかりにくさのバランスがいいと思います。
逆に文章は読みにくいけど、大したことは書いていない、ハッタリだけの本というのもあります。一言で、下手くそな本。気の毒なので例示はしません。
忙しい現代人にとって、読みやすい、わかりやすい、早く読める、の牛丼チェーン店のような本がいいのでしょうけど、そんな都合の良い本はなかなかありません。
著者の努力によって読みやすさはクリアできても、ある一定のレベルをキープするのなら、わかりやすさや早さは犠牲にならざるを得ないと思います。
三拍子揃った本は、たいてい初心者に向けられた、軽い本が多い気がします。わかりやすさを重視すると、正確さも犠牲になってしまい、読者のレベルによっては誤解がそのままひとり歩きし兼ねません。そのレベルの読者だと自分で修正する能力に欠け、先に進む努力を惜しむことが多く、害悪を撒き散らしかねないと考えるのは偏見が過ぎるでしょうか?
Amazonのレビューを見ていて気になるのは、「わかりやすさ」を評価軸に置いているレビュアーの多さです。わかりにくい本は「重い本」にカテゴライズされ、正当に評価されていないのではないかと危惧しています。
本はわからないから面白いのだし、わかりにくいから読むものだと思うのですが、いかがでしょうか? 目的次第ではありますけれども。
以上です。
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