2021年11月1日週 『とにかくうちに帰ります』、『オーギー・レンのクリスマス・ストーリー』
11月1日から11月7日までの読書に関する日記・備忘・そのほか。
津村記久子『とにかくうちに帰ります』
参加した読書会で取り上げられた本だ。
文字ではなく直接口頭でのお勧めがあると、とりあえず読むことにしているので読んでみた。
三つの短編(中編?)が収められており、どれも饒舌な感じで割と好きだった。
表題作『とにかくうちに帰ります』は暴風雨の中を“埋立洲”から“本土”に帰る話。本土に渡るバスが止まってしまい、否応なしに本土にある最寄り駅まで歩かなければならない。埋立地だから運河だか海だかで隔絶されていて、掛かっている長大な橋を渡らなければならない。そんな二組の二人組の様子や会話を描いている。
長い高い橋が苦手な儂に言わせると、橋を渡ること自体に躊躇せず、橋の上で動けなくなることもなく進めることが信じられない。
何が良いか説明しにくいが、基本的には何もない小説で、何もないのがいいのかもしれない。
ポール・オースター『オーギー・レンのクリスマス・ストーリー』
ポール・オースター自身が脚本を書いた映画『スモーク』の中にでてくる挿話の原作。ややこしいな。
元々『オーギー・レンのクリスマス・ストーリー』という原作があって、それを膨らませたのが映画『スモーク』と言えば良いのか。
イラストレーターのタダ ジュンの版画を挿絵にした小さなかわいらしい絵本。
話もオースターらしい、ニューヨークで起きた本当か嘘かわからない話で、これもまた、何もない話だ。素晴らしい。
煙草屋のオーギー・レンはカメラが趣味だ。
決まった時間に決まった場所から街を十年も写真に撮り続けている。写真を趣味にしたきっかけになったクリスマスの日の話が彼の口から語られる……。