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『7本指のピアニスト』西川悟平さんに学ぶ逆境の乗り越え方

私が西川悟平さんの『7本指のピアニスト』という本に出会ったのは、2020年の春のことだった。パラリンピックの閉会式の『この素晴らしき世界』の伴奏で脚光を浴びた悟平さんはジストニアという病気のため、左手2本と右手5本の7本指でピアノ演奏をしている。この本を読んで私はすっかり悟平さんのファンになり、今でも時々、ページをパラパラとめくりながら元気をもらっている。

私は、2019年夏、手術の後遺症で左半身に感覚障害が残ってしまった。幸運なことに日常生活にはほぼ問題がないところまで戻ったが、左手指がうまくつかえず肝心のピアノがどうしても以前のようには弾けなくなってしまった。その現実を受け入れられず、とにかく治したい一心でガムシャラにリハビリを続けていた。

その頃、友人たちとライブやらコンサートの企画もあって、弾きたがり屋の私も当然一緒にステージに立ちたいと思ったものの、圧倒的な実力差にひとり劣等感を深めて苦しくなっていた。そんな自分にも嫌気がさして、なんとかこの底なし沼から抜け出したくて手にしたのがこの本だった。

15歳というプロになるには考えられないほど遅い年齢からピアノをはじめて努力を続けた結果、ニューヨークで華々しくデビューした悟平さん。でもジストニアに見舞われピアノをプロとして一生弾けないといわれたとき、どんな思いだったか想像するだけで胸がギューと痛くなる。努力して築き上げたピアニストとしてのアイデンティティーが崩れ去ってしまうわけだから、自殺を試みたというのもうなずける。

そんな苦しみは想像を絶するものがあるけれども、今や大ブレイクしてコンサートやテレビでも大活躍だ。もし、魔法が使えてジストニアが治せるといっても、「このまま治さない」と迷いもなく言っている。むしろ、「この病気はギフト」だとも。逆境をさまよった人はお土産を持って戻ってくるというけれど、それは西川悟平さんみたいな人を言うんだな~とえらく感動した。

では、どうやってその逆境を抜け出したのだろうか。

最悪の出来事も最高の出来事に変わる。それぞれの出来事を生かすも殺すも、自分自身の考え方と行動次第なのだ。

『7本指のピアニスト』

悟平さんも何年も何年もジストニアを治そうとリハビリを頑張ったけれど、行きついたところは、動く指だけで弾こうと考え方を変えたことだ。そこから今の大躍進が始まっている。なんと、当時はまだ左手2本右手3本しか使えず、その5本の指でプーランクの『幻想曲第15番』(エディット・ピアフを讃えて)を何年もかけて弾けるようになったとのこと。(この曲はお洒落で素敵!)そしてテクニック重視から音色重視に切り替えて音の美しさを追求していったそうだ。

そして何といっても行動力がすごい。思いついたとことは、無理と思えることも大胆にも行動にうつしてしまうのだ。できなくなったことばかりに固執してしまうと、前に進めなくなってしまいがちだけれど、苦悩を抱えながらも行動していくことが、「最高の出来事」につながっているのだとおしえてもらった。そしてこんな風にも言っている。

闇が暗い分、出口の先に広がっている世界は、本当に光り輝いている。

世の中、生きていれば理不尽と思えることもあるけれども、起きてしまったことは変えられない。それをどう解釈し、次の行動にうつしていくかで、逆境は乗り越えていくのだと感じた。さあ、わたしも行動しなきゃ(笑)

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