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佐倉市立美術館・収蔵作品展「さくらと花と」

今年の3月は妻と二人で体調を崩してしまい春を探しにぶらりとどこかへという事もなかった。啓蟄もとうに過ぎたのでそろそろ穴倉から這い出さなければならない。

佐倉市美術館で今「さくらと花と」と題した収蔵作品展をやっている。この時期佐倉市は京成電鉄も巻き込んでさくらさくらの花盛り。美術館も例外ではなく収蔵作品の中から春や花にまつわる作品を毎年展示している。

佐藤事「桜華雲-神楽に依る」

「桜華雲-神楽に依る」という絵は、佐倉の学校で美術を教える一方で洋画家として活躍した佐藤事という人の1978年の作品。事は「つかさ」と読む。花の間から顔を覗かせているのはカエル。なんとも不思議な取り合わせなのだが、膨らみを感じる色彩に溶け込んで一見だまし絵のように見える。春の神楽に呼ばれて先を争うように出てきたようだ。

堀柳女「木花開耶姫」

堀柳女(ほりりゅうじょ)という人は人間国宝の衣装人形作家。「木花開耶姫」は1953年の作品。「コノハナサクヤヒメ」と読む神話の女神。名義は「桜の花の咲くように咲き栄える女性」とWikipediaにはある。が、その人生(そうは言わない)は短くも苦難に満ちたものであったと言われている。安定感のある下半身の造形はなるほど安産の神なのだ。

香取秀真「鉄瓶 菊桜文」

鋳金工芸家作家のレジェンド・香取秀真も佐倉市ゆかりの人物。5歳で麻賀多神社の宮司の養子となり10代の多くを佐倉で過ごした。地元の作家ながらとんと関心がなく、もう20年近く前になるだろうか今はなき印旛沼畔の「メタルアートミュージアム」でその名を初めて知った。「菊桜文」の制作年は不明。

こうした収蔵作品展は、展示されている作品どれもに感嘆するということはない。むしろ足を止めるものの方が少ないかもしれない。そんな中で「ああ春だなあ」とわけもなくほっこりしてしまったのが、見出しの作品。家里美千子という人の作品で「野辺」。堀柳女の教えを受けた人形作家で1968年の作品。傍らの草木や鳥のさえずりが聞こえてきそうだ。右上にスピーチバルーンを飛ばしたくなるのを我慢する。

一つ上のフロアで「佐倉水墨画展」というのが開催されていた。ちょっと覗いて行こうと思ったら、何やらけたたましい女性の笑い声。しばし見ていると関係者なのか作者本人なのか知らないが3人の50代くらいの女性が耳をつんざくような大声で喋っている。作品の前で写真を撮ったりそれはもう姦しい。監視員のいないこういうアマチュア団体の発表会では時折見かける風景だ。これはたまらないと早々に退散。10000ヘルツのゴジラたちという言葉が浮かんでくる。町田そのこさんに謝りなさい。

浅井忠像。

美術館の右手の細い道に入ると佐倉藩士の子として生まれ、この地で育った洋画家・浅井忠の像がある。近代洋画の先駆者の一人である人の像としてはなんともかわいそうな場所に置かれている。表通りから裏通りへの抜け道なのだが、狭くほとんど人は通らない。しっかりと前をみつめているが彼の内心はどうなんだろう。「またくるから」と言って本日はここまで。

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