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バージ二ア・リー・バートン「ちいさいおうち」

昨年、黒姫山童話館で衝動買いした「ちいさいおうち」をブックスタンドの端に立てかけた。子どもの頃のマイ・フェイバリット・絵本のうちの1冊。こんな素敵な絵本を背表紙だけしか見せないのはもったいないと”昇格”。小高い丘の上に建つ小さな一軒家、移ろう四季をながめながらの穏やかな暮らしが、やがて都市化の波に飲み込まれ今が夏なのか冬なのかさえわからないように・・・めまぐるしく変わる周囲の変化の中、今にも朽ち果てつきそうになるその時に・・・というお話。時折パラパラと開いてみても、やっぱりいいなあ。絵の中に人間はモブとしとしてしか出てこない。主役はあくまで「ちいさいおうち」。

作者のバージニア・リー・バートンは自然に根ざした生活を身上とし、自然保護活動にも積極的だった。この作品の根っこにもそんな思いがあるのは間違いない。物語の締めくくりがはっきりと示している。とはいえ、これがただの田舎礼賛・自然賛歌だったら今読み返しているひねくれ者のこの自分が「いいな」と思うわけがない。Wikipediaによると、この作品は ”早い速度で動いていく社会の歴史を表している。そして「歴史を全体像としてつかむこと」や「時の流れといった考え方」を子どもにわかる言葉で伝えようとした” のだとコールデコット賞(アメリカの児童図書館協会が授与)受賞のスピーチで作者が言っている。なるほど。ガッコウでぜんぜん教えないこと。

「ちいさいおうち」は正対した姿しか読者には見せていない。とりまく風景が定点観測で描かれる。「たゆたえども沈まず」そんな言葉がよぎったりたりして。よし、自分も「ちいさいおうち」になるのだ?ならばダイエットをしなさい。絵本は、自由だ。

「ちいさいおうち」は岩波の子どもの本シリーズとして1954年に刊行された。1965年に原書と同サイズの絵本として再度出されているので、おそらくこの時のものを読んだのだろう。ただこの頃の岩波シリーズはすべて縦書きだったという。字組みはとんと記憶にない。あの頃、幼稚園の年長さんは何を感じながらページをめくっていたんだろう。








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