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「河童の三平」50余年後の再読。

友人から水木しげるの漫画をどさっと借りる。手始めに「河童の三平」(ちくま文庫版)を読む。漫画とはいえ700頁の厚さ。「三平」が初めて世に出たのは1961年貸本からのようなので、さすがにこれは知らない。1960年代後半の「ぼくら」や「少年サンデー」連載のシリーズを読んでいたはず。借りたちくま文庫版は「河童の三平」にかかわる諸作品を整理、再編集し、長編マンガにまとめたとあるので、コンプリートされたものではない。

「河童の三平」は主人公三平と物の怪たちの交流を描いた牧歌的なものというのがおぼろげな記憶だった。Wikipediaでもそのような説明があるが、少なくともこのちくま文庫版を読む限り「牧歌的」というのには無理がある。もちろん水木しげる特有のとぼけた味わいが全編を貫いてはいるが、これは河原三平と河童のコンビが様々な困難に立ち向かう冒険活劇だ。「ストトントノス7つの秘宝」という「ロマンシング・ストーン秘宝の谷」も真っ青なタイトルの章がその中核をなしている。この章は少年サンデー版で連載されているので、間違いなく読んでいるはずなのに記憶はほんとうにアテにならない。

荒唐無稽などへのかっぱ、とかなり強引にストーリーは進む。が、これがけっこう面白い。なんたって三平が身につけた大きな武器は「屁」なのだ。「屁」で国体にも出れば、音楽も奏でる(第一楽章アレグロヘデラート・ヘ長調!)。もう水木しげるのあの顔が浮かんで、それだけで降参するしかない。何年も前「サンダーバード」を再び見てえらく退屈したのとは大違い(あれは基地とメカに目を奪われただけのものだった)。いや、そもそも比べるのもどうかとは思う。

脇役の魅力は不可欠。右側は死神とたぬき。ニンゲンさまもタジタジの人間らしいキャラクター。死神はさしずめねずみ男。三平をあの世につれていくつもりが、クビになってしまう。死神のくせに妻子がいる。

「ぼくは反抗的精神をもたないやつはきらいなのだ」「きみは反代々木だな」なんて会話が出てくるのは時代。きっと深い意味は、ない。さて借りた中には「悪魔くん」もある。秋の夜長に水木ワールド、なかなか悪くない。






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