国立歴史民俗博物館「江戸の妖怪絵巻」
お盆期間中、家族連れや何やらで盛況の歴博。いつもは隣接の城址公園をふらふらするだけだが、時には館内を歩いて歩数を稼ぐ。とにかく広いのなんのなので足を運んでも見どころはある。今夏の特集展示は近世の展示室に設けられた「江戸の妖怪絵巻」、夏休みの企画ということもあって畏怖や戒めといった側面はとりあえずおいて、内容はエンタメより。妖怪ブームと言われた江戸時代の禍々しくも微笑ましい彼ら妖怪たちの姿が紹介されている。
上の絵はいずれも「大石兵六物語絵巻」という絵巻物。鹿児島を中心に広く流布していた兵六さんの狐退治の物語を絵巻にしたものという。本文を読まずとも兵六さん先々でなかなか散々な目に会っているご様子。最後には2頭の狐を捕えて仲間たちに賞されたらしいので、まずはよかったねえ。
調度品が化けて出てくる「百器夜行絵巻」。京都・真珠庵本系統の「百鬼夜行絵巻」に書き加えられたもの。色々ぶちまけちゃっているが、朝には何事もなかったようにちゃっかり片づけられたりしているのだろうか。
「百鬼夜行図」に描かれる妖怪たちは異形でユーモラス。今昔物語などをベースにした室町時代の作品をベースにしている。作者はなんと狩野派の正統派・狩野益信。
車座になった鬼たちが持っているのは、地獄に落ちたヒトビト。地獄では生前の職業や趣味などに応じた手段で「どんな責め苦を与えるか」決められるという。この人間の鎖ならぬ人間の輪にされたヒトビトは一体何をしてしまったのか。この趣向のものはかなり人気があったというから、まったくヒトって生き物は。
一カ月の間、妖怪や怪異の出現にも動じなかった16歳の少年(成人して武太夫)に、魔王がその胆力を褒め称えて去るという「武太夫物語」。上のシーンは飛び去る魔王の行列らしいのだが、えらい迷惑な魔王ですな。
「化物絵巻」は25種の妖怪を配したいわば図鑑。河童のとなり、センターにいるのは「山童」、左にいる犬の変異のような妖怪は「山彦」とキャプションがある。
特集展示のコーナーを離れても妖怪たちはまだそこかしこにいるので、せっかくの妖怪たちとのご対面の機会を逃さないようにご注意を(見出しの写真もとなりの展示室で発見)。
しばらくぶりの入館だと、新しい展示や見落としがある。個人的にはミュージアムショップのこの特集コーナーにフィギュアのようなものがなかったことがちょっとだけ不満なのだ。