
安曇野アートライン「大町山岳博物館」
安曇野市からほんの少し足をのばして大町市にある市立安曇野山岳博物館へ。ここも「安曇野アートライン」の一端を担っている。山腹にある3階建ての施設の入口ではニホンカモシカの親子が北アルプスの方角をじっと眺めている。館内は「山と人」「山といきもの」「山の成り立ち」のコーナーに分かれ、多角的に山の基礎知識を学ぶことができる。

3階には展望ラウンジがあり、白馬岳や鹿島槍ヶ岳、蓮華岳など北アルプスの山々を望むことが出来るが、この日はあいにく雲の中。それでも大町の町並みを見渡す景色は十二分な目の保養になる。

そして、この博物館に来た大きな目的のひとつが「ライチョウに会う」ということだった。付属の動植物園でライチョウやニホンカモシカ、トビ、チョウゲンボウなどを飼育していて、その姿を間近に見ることができる。希少種の保護繁殖のほか、トビなどは救護されここで暮らしているものも多い。ニホンライチョウのほか、スバールバルライチョウという北極圏に生息する種も飼育されている。もちろん絶滅危惧種。

ライチョウは、狩猟対象だった欧米に対し日本では江戸時代までは「神の使者」として崇められてきたが、明治期に入り西洋思想の流入により狩猟の対象となり一時乱獲が進んだ。加えて低地からのキツネ、ハシブトガラス、ニホンザルなどの捕食者の侵入と植生の破壊、登山客の増加が拍車をかけ、ライチョウの平和は一気に脅かされるようになった。今、日本国内の生息数は約3000羽ほどと言われている。ちなみに信州土産の代表格「雷鳥の里」は、売り上げの一部がこの山岳博物館に寄付されている。ニンゲンサマはと言えば、相変わらずこの地球に君臨しているつもりらしく、自分たちが絶滅危惧種になるかも知れないなどとはつゆほども思っていない。