「ガソリン生活」ー今の君は昔の君じゃないけれど
主人公の「緑デミ」とそのオーナーである望月家が次々と降りかかる事件に巻き込まれていく伊坂幸太郎の長編「ガソリン生活」。荒唐無稽な出来事も、ユーモアと愛情で難なく突破するストーリーの巧みさには毎度の事ながらうならされる。といっても、伊坂幸太郎の小説について、というわけではなく(ごめんなさい)、語り手である「デミオ」のお話。
我が家とデミオの歴史は長い。何せつきあいは初代のデミオに始まる(先々代に至ってはそれこそ「緑デミ」だった)。それまで乗っていたファミリアをそろそろ買い替えようかと考えていた頃、ディーラーの担当者Kさんが「もうすぐシズさんのためにあるようなクルマが発売されますよ」と言ってきた。熱狂的カープファン(さすがマツダ)で、時候の挨拶はお互いの楽しい「腹の探り合い」だ(わが方はツバメ党)。「へえ」と思い乗ってみたら、なるほど室内は広く、少し高めの車高で視界もいい。我が家の狭い駐車場にも入れやすいコンパクトボディ。カーマニアではないが、日常の足とたまの遠出にクルマは欠かせないという我が家にはうってつけだった。Kさんの巧みな話術と人柄もあと押しして、初代デミオはやってきた。
あれから約25年。Kさんもすでに遠く新潟に転勤してしまったが、13年乗った先代デミオ(通称紫デミ)に代わって3年前から我が家の駐車場に控えていただいているのは、やっぱりデミオ(通称青デミ)である。初代のずんぐりとした面影はなく、室内はむしろ「狭い」とも言わている。車長もモデルチェンジ毎にじりじりと長くなりついに4mを超えてしまった。初代の売り文句はどこへやらである。それでも乗ってみると不思議と体にフィットする。病後のドライブも、むしろ病前より疲れを感じない位だ。昔のふっくらした君が好きだったけれど、スタイリッシュな君も素敵だよというところか。これからもココロとカラダの健康のためにウロウロするので、どうかひとつよろしくお願い申し上げます(それにしてもデミオという名称がなくなるのは寂しい限り。「MAZDA2」うーん)。
蛇足
「ガソリン生活」文庫本カバーの裏面には「書き下ろし番外編」として、ガソリンスタンドでのデミオとフィットたちの会話のショートストーリーがあります。久々に読んでみたらやっぱりクスッと楽しい伊坂ワールドでありました。