「楽しく農業の家族経営をするには」−岩手県盛岡市 りんご工房きただ#11
お久しぶりです。全国の農家を旅している、でみです。
4月から始まった農家訪問の旅。前回の記事から少し時間があいてしまいましたが、その間も全国の農家を猛スピードで訪問していたので、記事の執筆を再開します。
今回は盛岡で、りんごを栽培しているりんご工房きただのイノベーター北田富士子さんにりんごの栽培についてお話をお聞きしました。また、そこから家族経営についても私なりに考えてみました。
農業はやらないって決めて嫁いだ
➖元々りんご農家になりたかったのでしょうか?
元々は農家ではなく、サラリーマンをしていました。
当時の仕事自体はとても楽しくて。
結婚した相手が、たまたまりんごの農家さんでした。
最初は農作業を知らないふりしていました。
農業は旦那さんがやればいいんだって思っていて。
➖え!そうなんですね。
あれ、でもいま農業されていますよね?
はい。でも、実際農業をやってみて、すごく楽しかったんです。
例えば、台風が来て、りんごが落とされたら落とされたで、どうするか考えるきっかけがあって、とっても楽しかった。
経営を自分でやれる。
目標を設定して、それに向けて頑張る。
やった結果が実感できる。
自分が農業をやるんだって決めてやったら、おもしろくて。
生きていくためにも、楽しみながらやりたいと思っています。
ただ、ガツガツと自分を追い込み、疲れ果ててまでやることではなく、自然体で取り組みたいと思います。
➖自然体で、とても素敵ですね。農業を楽しんでいる富士子さんだからこそ、いろんなアイディアを実践されているのでしょうね。
うちは家族経営協定を結びました。
家族で経営計画を立てたり、お互いが理解しあって農業をしています。
夢を出し合って、海外研修に行きたいという思いも会議で出ました。
そして、実際に農家めぐりをしながらイタリアに行き、アグリツーリズモの体験もしました。
その経験も今につながっていると思います。
蔵をどのように利活用するか
➖宿泊してみて、まず驚いたのが蔵一棟を貸切できることです。また、きれいな独立キッチンや家具があり、静かでとても快適です。蔵ってこんなに素敵な住まいになるんですね。
そうなんです。
うちの場合は、外壁を塗り直して、140年くらいになります。
蔵だとお宝が出てくるかと思ったら、古物商の人に全然価値がないって判定されて。
「うちのご先祖様はケチだったもんね」なんて言ってるんです笑
この蔵は元々、壊されようとしていたんです。
でも、もったいないし、人が交流できるような場所にしたいと家族に提案し実現しました。
宿泊所として食事が提供できるまで認可を取っていますが、農業が基本なので、素泊まりを推奨しています。
それに、少しでもまわりの飲食店へ行ってもらえれば地域の貢献にもなると思って。
今後は蔵✖️利活用✖️ネットワークを略して「クラリネット」を結成したいと思っています。
使われなくなった蔵はたくさんあるのですが、壊すのもお金がかかるから、朽ち果てるのを待っている家もあります。
そういった蔵を利活用する人がもっと増え、お互いに交流していけたら、岩手がもっと元気になるんじゃないかと思っています。
特別栽培のりんご
今年は霜の影響で、りんごの木が弱り、かなり厳しい状況です。
弱っている木は、花を全部落としてその年は休ませてあげる。すると、次の年には良い花を咲かせてくれることもあります。
りんごは、他の国に比べて、中国、韓国、日本は農薬を使う頻度が高いと言われています。
たくさんの虫などが来るのですが、りんごの木を助けるという意味合いで農薬を使っていることが多いです。
ただ、生き物は薬だけに頼っていると免疫力や自分で頑張る生命力が落ちてきてしまうため、うちは特別栽培という岩手県の農薬使用基準の半分以下に抑えるようにしている。
➖農薬を減らして栽培するのも難しそうですね。
そうですね。うちはマメコバチに受粉を助けてもらっています。
特別栽培だと中途半端だっていう人もいます。また、無農薬とか特別栽培が虫や病気を蔓延させている等言われることもあるから、それも含めて難しいです。
りんご工房きただのりんご
➖りんごのゼリー、まろやかな甘みでとってもおいしいです。
むむ、きたろうって書いてますが、これはなんでしょう・・・?
「きたろう」っていう品種のりんごでつくりました。
実はうちでは20種類以上のりんごを栽培しているので、8月から翌年3月まで、各時期で旬のりんごを楽しむことができます。
また、りんごはジュースやゼリーにも加工しています。
飲みきりサイズや量の増減、アレルギーを持っている方のため無添加や自然由来の物を使用するよう心掛けているので、お子様もおいしくいただける商品になっていると思います。
➖サンふじもいただきましたが、品種の違いでここまで味が異なるなんて、驚きです!
どこで購入できるのでしょうか?
うちの商品はオンラインショップでも購入できますし、お電話でのご注文もお待ちしております。
宿泊の際はこちらからご予約ください。
家族経営について考えてみた
日本では家族経営体が農業経営体全体の97.6%を占めるという調査結果が出ています。(出典:農林水産省「2015年農林業センサス」)
つまり、ほとんどの農家が家族経営。
一般企業では経営会議が定期的に必ずあり、経営方針を決めています。でも、農家訪問をしている肌感覚では、家族で経営会議をしている農園はごく少数。どうしても日々の業務に追われ、会議をしたとしても業務改善のみを話し合う傾向性があります。また、生活と仕事の境目が不明確になり、家族の誰かが不満を抱えることもあるかと思います。
りんご工房きたださんでは何を目指し、農園をどう経営していくか、家族で経営会議の場を設けるルールをつくり、意見を出し合って経営方針を決めています。
ライフを共にしている家族だからこそ、改めて経営方針やライフとワーク両方の役割分担、働き方について話す機会をつくる必要性を感じました。
それにより、お互いに無理なく気持ちよく働いていくことができるのではないかと思います。
【参考URL】
農林水産省「家族経営協定」
農林水産省「国連「家族農業の10年」(2019-2028)」
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今日も皆さまにとって笑顔あふれる1日となりますように。
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