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3-4.M&A仲介業者の取扱説明1

1.国際比較しつつ、予備知識が記載されているWebサイト

「BusinessBrokers.jp」というWebサイトを最近見つけたのですが、こちらにM&A仲介業者にかかる予備知識や注意点はすべて記載されているといっても過言ではありませんので、まず予め記載いたします。ぜひ、M&A仲介業者と既にお付き合いされている方は多いと思いますが、必見の価値ありにてご参考にしていただければ幸いです。

2.当方が実際に目にした事実より

その上で、当方が実際に顧客のM&Aアドバイザリーで目にしたM&A仲介業者にかかる共有しておきたい教訓を以下に記載したいと思います。もちろん、守秘義務に反しないようデフォルメしつつ、公共の利益に資するものとして記載したいと思います。

また、大半のケースでは、M&Aプロセスが適時適切に進行されているのかなとは思われますので、こうしたことも時にはあるのだな、という捉え方をしていただければと思います。

①売り手と買い手双方の仲介による利益相反

同じ人間・チームで売り手と買い手を担当する場合には利益相反リスクは完全にありますが、時折、こういう話を聞くことがあります。当事者のみならず、他の金融機関の方も、「M&A仲介業者で売り手担当と買い手担当で分かれている場合には利益相反リスクへの対応が取られていますよ」と。
ディールをやめるという選択肢を取ることができない限り、私は利益相反でしかないかと考えます。

中には、利益相反リスクをきちんと意識して売り手買い手双方の利益になるよう配慮され、かつ当該リスクの肝に直面する際には双方に了解を取られる、そして必要であれば当該ディールの中断を進言される、といった良心的な対応をされる方もおられると思います。そんな方は、ディールクロージング後も、当事者と継続的に良好な関係でお付き合いできているでしょうし、それが当該リスクに適切に対処してきた証左でしょう。

しかし、時には利益相反どころか、下記の内容をご覧いただければ分かるようにM&A仲介業者自身への自己利益誘導の構図が感じられることもありますし、「クロージング後は、当事者に近づかないようにする」としみじみ言うM&A仲介業者の方も以前におられました・・・

②アドバイザリー契約は、着手金や中間金ふくめて内容は交渉可能

状況と力関係によりますが可能です。
基本的には、売り手でも買い手でも、”いい会社”が強い交渉力を有します。
それは、対M&A仲介業者だけでなく、相手方に対しても、です。

売り急ぐ必要がないが売却を検討している”いい会社”は、安売りせずに良い価格・条件で売却交渉できるので、こうした売り手が一番強い。
M&A仲介業者も、こうした案件を扱いたいので、多少、手数料を減額しても受託するケースがあります。また、こうした売り手であれば、専任媒介契約とせずに、並列的に複数の業者と契約して競い合わせることも可能ですし、その過程で減額交渉も相乗効果を獲得できるかと思います。

その次にリピーター、もしくはリピーターになりそうな買い手が強い。
対M&A仲介業者だけでなく、こうした買い手は事業や財務状況、管理体制も比較的良好でしょうから、買い急ぐ必要はないので相手方に対しても強いでしょう。

売り急ぐ必要がある売り手は、知識や経験が十分でなかった場合、何の手立ても講じないと、なされるがままになるしかない。

そして多数存在する買い手候補のうち、知識や経験も十分でないのに慎重さを欠くところが長い目でツケを払うことになると思われます。

③スケジュールに注意

状況を冷静に見極め、DDなどの必要なプロセスや、契約書の検討・交渉に必要な時間・労力をかけたい経営者は、とにかくやたら急かされるときは特に要注意!

買い手や売り手の会社経営者や管理担当者の知識や経験が十分でないとみられると、他からのアドバイスを得るなどして知恵をつけるまでに、一気に事を運んでしまおう、という思惑がM&A仲介業者の担当者に働くと思われます。

「相手方が急ぎたいというご希望です」とか、「急がないと、他の候補者に遅れてますので取られますよ」とか、ウソか誠かのセリフがM&A仲介業者の担当者からささやかれることと思います。

もちろん、いい会社である売り手候補の案件ならば、いい買い手が殺到して早期に決着する必要があるでしょうし、また、事業再生的な案件の場合には売り手の財務状況が悪化するので急ぐ必要があるでしょう。
いずれにせよ、冷静で客観的な状況判断が求められます。

④DD;まともなDDをできたらさせたくない?!

時折、こういう買い手経営者の方がいらっしゃいます。
「今回の案件は同業で大体リスクや事業状況もイメージできるし、M&A仲介業者は高い報酬を取るアドバイザーとして、DDも売り手としてやっているから、改めて第三者に高い報酬を払っての財務等DDも必要ないだろうし、全部、M&A仲介業者に任せておけばいいんじゃないですか?」と。
皆さんはどう思われますか??

状況を冷静に見極め、必要なプロセスや、契約書等の検討・交渉に必要な時間・労力をかけたい会社・経営者で、社内リソースに知識や経験が十分にない場合には、M&A仲介業者の案件であっても買い手による財務等DDは第三者に依頼されて下さいと指示されて、このあたりの時点から当方のようなアドバイザーに依頼をされることが多いかと思います。

(なお、依頼できる先が知り合いでない場合には、M&A仲介業者から紹介を受けることも可能ですが、下記をご覧いただくと、それもリスクがあるのではないかと思ってしまうのは杞憂でしょうか。。)

DDについては、別途改めて記載する予定ですが、以前にM&A仲介業者のある案件であったのが、事前に預金通帳や取引先からの請求書や納品書などの一次原始証憑を含めて依頼リストでお願いしていたにも関わらず、いざデータルームに行ってみると、主な契約書の他は、プリントアウトされた元帳だけがずらっと並べられていることがありました。

元帳はすでに事前にCSVやPDFデータで入手していたので、「この紙の元帳は不要であり、お願いしていた預金通帳や取引先からの請求書や納品書などの一次原始証憑は拝見できないのでしょうか? また、御社(M&A仲介業者)では、買収監査はいつもこういったアレンジをされ、それで済んでいるのでしょうか?」とたずねたところ、「これでよしとされる買収監査担当の方もおられますので・・・」とうつむき加減に返答され、最終的には原始証憑類など必要な資料をすべて売り手の会社から提示いただけはしました。

別の案件では、M&A仲介業者の担当者がDDの立会に、”遠方で忙しいので・・”として当初来ず、途中で売り手の経営者が怒って呼び出していたこともありました・・・

もちろん、大半のケースでは、きちんとしたDDができる環境が用意されているのかなとは思われますが、上記のような状況があった際には皆さん、どう思われるでしょうか??

⑤企業再編に要注意(別途手数料が意図されてないか)

対象会社の財務等DDの結果、簿外債務リスクに注意したい際に採用されることが多いスキームである事業譲渡は、契約関係の個別移行が必要になり煩雑となるのが一般的です。

それゆえ、M&A仲介業者は事業譲渡手続きには全くタッチしてきませんが、そうした場合、簿外債務リスクに配慮もできるとして、事業譲渡に比べると格段に手続きが楽になる会社分割を強くすすめてくることがあります。

なぜなら、一般に、会社分割や合併等の企業再編手続をM&A仲介業者で行う場合、企業規模や難易度にもよりますが、最低でも数百万~1千万程度の別途手数料を得られる志向があるのは否めないと感じてます。

客観的に会社分割でもよしとされる状況ならば、もちろん簡便手続きで済むのでそれで当然よいのですが、以前に買い手のDDからアドバイザーとして関与した案件では、会社分割ではリスクヘッジしきれないと法務アドバイザー含めて判断し、事業譲渡手続を取りたい旨、買い手経営者と同席してM&A仲介業者の買い手担当者へお伝えした際、猛烈に抵抗されたことがありました。

その方は部長の肩書で、輝かしい金融機関の職歴をお持ちでしたが、「会社分割が事業譲渡よりも、簿外債務のリスクヘッジできない判例を示してほしい」とか「その煩雑な手続きは、買い手さんだけでなく、売り手さんにも負担をかけるので、この案件は流れるかもしれませんよ」となぜか強くおっしゃるので、「会社法でなぜ事業譲渡の定めが残っているのですか?」とか、買い手経営者が「これで売り手さんが応じないというなら、この案件はやらないまでだ」とキッパリ話されると、当該M&A仲介業者の買い手担当者は押し黙っておられました。

皆さんはどう感じられますか??
(余談ですが、最終的には、上記担当者は、買い手経営者から途中で出入禁止とされました。。。)

3.今回のおわりに

経営者同士の付き合いでは見栄の張り合いもあるので失敗例が共有されることは少ないでしょうが、相手方との交渉がストレートに反映されたものならまだしも、もし仲介者の思惑で相手方との意思疎通が捻じ曲げられたり、M&Aプロセスが不適切・不十分で、結果として不利益を被った際には、取引当事者としては後で泣き寝入りせざるを得ないと思われます。

相手方との綱引きの結果にて全てにおいて完全に満足できるM&Aディールは存在しないと思いますが、双方が最低限許容できるものにしつつ、何より、クロージング後のPMIでの、売り手買い手一体となっての対象会社・事業の価値最大化がM&Aの本来目的なのですから、そこへ円滑に移行し、安心して注力できるような内容での契約締結および体制構築ができるようにすべきと考えます。