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ずぶ濡れの現役アイドルを拾いました。

午前2時半。ゲリラ豪雨のとんでもない音で目を覚ました。
◯◯:うーん...?雨かぁ...

僕は精神年齢クソガキなので、大雨を見るとテンションが上がる。へへ。
なのでワクワクしながら窓を開けて外を眺めることにした。
◯◯:うおー降ってる降ってる!いいねえ!...あれ?

この超ド雨にも関わらず、傘をささないで突っ立ってる女性がいる、、

とりあえず傘とタオルでもと思い、持ってその人の元に出ることにした。
◯◯:あの、大丈夫...ですか??
??:うーん、大丈夫ではないかも...しれないです...
◯◯:とりあえず傘入ってください!よければうちで雨宿りします?
??:うーん...いやー...うーん......どうしよ...
◯◯:それともこの豪雨の中傘無しでほっぽり出されます?笑
??:う、じゃあせっかくなので...

流石にこのまま外にいさせるわけにもいかなかったので、傘無しで...ってのは冗談だったんだけど。
◯◯:狭いし散らかってますけど上がってくださ...!?

そう笑顔で振り向いた瞬間、腰を抜かしてしまった。
◯◯:う、梅澤美波...!?
梅澤:知ってくれてたんですか
◯◯:は、はいまあとりあえず上がってください今お風呂沸かしますからあはは...
梅澤:お、落ち着いてくださいよ...
◯◯:そ、そうですよね...

さっきは暗くて顔わからなかった...!
いかん、いつもテレビとかライブ会場とか手の届かないところにいる人が目の前にいるってのは緊張する...
◯◯:梅澤さん何か飲みますか?温かいのならココアかコンソメスープ、冷たいのならお茶かスプライトがありますけど
梅澤:外冷えてたしコンソメスープ貰ってもいいですか?
◯◯:わかりました!ちょっと待っててくださいね

◯◯:インスタントですけどどうぞ〜
梅澤:ありがとうございます〜...ん、あったかい...どこのですか?これ
◯◯:これは某青い方の航空会社が出してるやつです!美味しいですよねこれ!僕もお気に入りなんです!

〜♬
◯◯:あ、お風呂沸いたんで梅澤さん行ってきてくださいよ、着替えは置いといたんで、濡れた服だけまとめて洗濯機にいれて上に置いてある箱からキューブ1つ入れてスタート押してもらっていいですか
梅澤:ありがとうございます...ほんとにすいません
◯◯:いえ、連れ込んでるんでこのくらいは普通ですよ笑

ガチャ
梅澤:お風呂ありがとうございました
◯◯:いえいえ〜、それより着替えこんなのしかなかったけど大丈夫でした?
梅澤:いただけるだけありがたいです...助かりました...

◯◯:それで、どういった理由で豪雨の中こんなとこに...?
梅澤:実は...

どうやら、某OGの家でチートデイをしていたら終電がなくなってしまってタクシーも呼べず、おまけに5時から豪雨の予報で電車が止まるかもとのことだったのでせめて降る前に始発が早い駅まで歩こうと思って外に出たら、道に迷った上に雨も予報より早く降ってきてしまったとのことだった。
◯◯:踏んだり蹴ったりじゃないですか!僕が目覚ましてよかったですね?笑
梅澤:...襲わないんですか?覚悟はしてます...
◯◯:なんで????


◯◯:あはははは!僕そんなに変態下心人間じゃないですよ!やだなぁ
梅澤:ごめんなさい...
◯◯:まあ雨も止みそうにないですし、ここ駅からそこそこ遠いのでせめて止むまででもゆっくりしてってくださいね
梅澤:本当にありがとうございます...!

僕が下心なく助けただけということをわかってくれて、少し体の力が緩んだようでよかった。
◯◯:寝ます?一応来客用のエアマットレスありますけど
梅澤:いや、ずっと食べてたから眠くないんですけど...その...
◯◯:なんですか?僕のできる範囲ならなんでも!

梅澤さんは一歩こっちに身を寄せて言う。
梅澤:敬語じゃなきゃ...ダメ?
◯◯(うっ...その上目遣いは反則すぎるよ梅...!)
◯◯:い、いや全然!梅澤さんがそれでいいなら!
梅澤:よかった!それで、いつもは私のことなんて呼んでるの?
◯◯:と、言いますと
梅澤:ずっと無理してるでしょ?乃木坂のファンなのも、梅澤さんって呼び慣れてないのもバレバレだよ笑
◯◯:バレてた...いつもは梅って呼んでるけどいい?
梅澤:もちろん!今は...ね!私も◯◯くんって呼ぶね!

"今は"というワードに引っ掛かりを感じたけど一旦スルーするとして、何を話そうかと迷っていたら梅からいきなり核心を突く質問をされてしまった。
梅澤:◯◯くんは、誰推し?正直に!
◯◯:誰推し...(ここで梅って言わなきゃ56されるか...?正直に言ったほうが吉か...!?)
梅澤:ダメでしょ?自分に正直に、
◯◯(やっぱりそうだよな...)
梅澤:「楓が好き」って言わないと笑
◯◯:(!?)な、なんで...!?
梅澤:あのポスターの楓かわいいよね。飾りたくなる気持ちわかるよ笑

そう、何を隠そう僕は生粋の佐藤楓推し。生写真は持ち歩いてるし、タオルとかもたくさん持ってるし、生誕グッズも毎年買ってるし、ポスターも額縁に入れて部屋に飾って...あれ?
◯◯:ま、まさか梅見たの!?部屋の中!!
梅澤:お風呂上がりに覗いちゃった♪ 一面楓だらけだったね笑
◯◯:一声かけてくれればいいのにははは...

お父さんお母さん今までありがとう、僕は今日人生が終わるかもしれません。

梅澤:でさでさ!◯◯くんは推し感情と恋愛感情は切り離せるタイプ?
◯◯:何ですか急に...
梅澤:切り離せるのかって聞いてるの!答えて!
◯◯:よくわからないけど多分切り離せる人かと...?
梅澤:へぇ...
◯◯:?

それからはお互いの趣味や仕事の話などをした。梅は僕が聞いても答えられないことはハッキリと言える人で、すごくしっかりしてるなぁとか思ったりした。そんな楽しい時間はあっという間で...
梅澤:え!?もう外明るいじゃん
◯◯:ほんとだ...梅は時間大丈夫?
梅澤:一応大丈夫だけど雨も弱くなったしそろそろお暇しようかな、今日は本当にありがとうね
◯◯:いえいえこちらこそ。玄関の傘1本持って行きな。返さなくていいからさ
梅澤:じゃあお言葉に甘えさせてもらうね、それと連絡先交換しようよ
◯◯:う〜ん...いや、やめとくよ。梅はこういう仕事してるし、キャプテンなんだからしっかりしないとね?もしアイドルじゃなくなったら、またどこかで聞いて欲しい

僕がやんわりお断りすると、梅はちょっと寂しそうな顔をした。申し訳ない気持ちにもなったけど、これは仕方のないことだし、割り切らなくてはいけないことだ。
梅澤:じゃあさ?最後にわがまま聞いてよ
◯◯:何?
梅澤:その...梅よりもっと距離近い呼び方して、釣ってほしい...///
◯◯:...わかった

いつものしっかりした感じとのギャップにやられた僕は、要求を飲むことにした。アイドルを逆に釣る経験なんて滅多にできないしな。
梅澤:(ゴク
◯◯:みなみん...大好きだよ?
梅澤:...///
◯◯:なんか言ってよ笑
梅澤:あの...ありがとうほんとに...◯◯くんこれからも乃木坂見ててね?
◯◯:わかったよ、いってらっしゃい!みなみん!
梅澤:ずるい...///

その一言を残して、梅は家を出て行った。今日の夢のような時間を思い出して余韻に浸ってはや1時間...あ。
◯◯:そういえば着てた服返してないじゃん!!

どうするんだ◯◯!何のための速乾モードだ!これはいけませーん!!
焦ってるうちに、インターホンが鳴った。

ガチャ
梅澤:ごめん忘れ物した(笑)
◯◯:ちょうど気付いたところだった...よかった、連絡先聞かなかったからどうしようかと
梅澤:ほらね?だから連絡先の交換を
◯◯:それはだめー
梅澤:ちぇ、ケチ!まあいいもんねーだ!そのうちわかるもんねー覚えとけよ
◯◯:拗ねないでよみなみん、ごめんよ    ポンポン
梅澤:ずるい...///

一通り洗濯物を回収した後、さっきのリプレイのような一言を残して、梅は家を出て行った。
我が家に静寂とちょっとした虚しさみたいなものが残った。リビングにポツンと置かれてる金属の鍵くらい、周りからは寂しく見えるんだろうな今の僕は。
でも、これで普段通りの生活に戻るだけだ。



そう、思ってたのに。

ガチャ
◯◯:誰!?

ダダダダダ
梅澤:ねーねー◯◯聞いてよ!今日楽屋で蓮加がさぁ!!
◯◯:は!?!?!?ちょちょちょ待て待て待て待て、なんで勝手に入ってきた?というかなんで入れた??
梅澤:だってこの前の着替え返してないし
◯◯:なんで入れたかの理由になってない!
梅澤:ふふふ...コロン
◯◯:えっなんで鍵...

慌てていつも鍵を入れているバッグを確認したが鍵は2個ともちゃんとあった。"謎の3個目の鍵"を梅...もといみなみんは持っている。
◯◯:なんで...?スペアキー作る暇なんてなかったろ??そもそも元の鍵ないと作れないし...
梅澤:スペアキー作る時間はあったよ?だって私この家に"2回"来てるんだから笑
◯◯:...あ!洗濯物取りに来た時!まさかあの短時間で作ったのか!?いやでも、元の鍵...も、なぜかリビングの机の上にあったわあの日!やられた!
梅澤:えへへ.../// これでいつでも会えるね♪ それとも、みなを警察に突き出す...?
◯◯:い、いやそんなことするわけないじゃん...(みな...!?かわいすぎるだろそれは!)

上目遣いと、唐突の一人称「みな」にやられてしまって、結局この状況を飲むことにしてしまった...。覚悟は決めないとな。
梅澤:んふ、よかった!じゃあこれからよろしくね?◯〜◯〜くん?
◯◯:もう!わかったよ責任取るよ!よろしくな?美波?
梅澤:ずるい...///
◯◯:......///

......確かに、僕は推し感情と恋愛感情を切り離せる人間なんだな。


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