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Flying with you!

「かんぱ〜い!」

◯◯は、飲み会に来ていた。飲み会と言っても、少々合コンの側面が強い。

◯◯(しっかし、なんでこんな休日の真っ昼間からやるかねぇ...)

◯◯はこういうイベントが苦手だ。人と話しながら飲むのは好きだが、大人数で騒がしいレベルまでくると嫌になってしまう。

◯◯(適当に飲んでさっさと引き上げるか...)
??:あのっ!お隣...いいですか?
そう声をかけてきたのは、清楚系美人な女性だった。
◯◯:どうぞ!あ、僕は◯◯といいます。普通にサラリーマンやってます。
??:鈴木絢音です!秋田出身です!絢音って呼んでください!
◯◯:へぇ〜秋田かぁ、にしてもお綺麗ですね、秋田美人だ
鈴木:そんなことないですよ〜
◯◯:絢音さんは何か趣味とかありますか?
鈴木:旅が好きです。飛行機が好きなので、空旅...ですかね!
◯◯:飛行機!僕も好きですよ飛行機。乗るのも撮るのも
そう言って、撮影した写真を何枚か見せる。
鈴木:わぁ綺麗!良い写真撮ってるんですね!私の好きな787もいるっ!
◯◯:787お好きなんですね!デザインから機内、エンジン音まで全てにおいてシャープなのがたまらないですよね

「ギャハハハハハ!!!」

鈴木:向こうすごい盛り上がり...ですね
◯◯:絢音さんはああいうのいけるタイプですか?
鈴木:何人かで喋りながらとかは好きですけど、あのレベルになると...
◯◯:同じくです(笑)。絢音さんとは気が合うみたいでよかった
鈴木:もしよければ...まだお昼だし今のうちに抜け出して空港とか行きませんか?◯◯さんが写真撮ってる姿も見たいな!
◯◯:僕でよければ!タイミング見ていきましょっか

◯◯と鈴木は、お金を置いて気付かれずにこっそり抜け出すことに成功した。

鈴木:まだ酔わないうちに出れてよかったぁ!昼から酔うの得意じゃなくて...
◯◯:わかります。ほんと気が合いますね!絢音さんと抜けられてよかった!

一旦◯◯の家で機材を準備し、◯◯と鈴木は空港へ向かった。

◯◯:ここからバスですよ!
鈴木:え?電車で空港かと思ってました
◯◯:天気いいので、いきなりターミナルはちょっと勿体ない!信じてついてきてください!
鈴木:わかりました!◯◯さんについてきます!

バスに乗っている最中も、2人の楽しそうな話し声は止まることはなかった。
20分くらい揺られ、バス停を降りて歩くこと5分。

◯◯:着きました!
鈴木:公園...?
◯◯:ただの公園じゃないんですよ!ほらっ!

キイイイイイイイイイイン ヒュゴーーー
鈴木:わぁっ!大きいっ!!
◯◯:定番スポットなんですよここ!すごいでしょ!

そう、◯◯が連れてきたのは飛行機の見える海沿いの公園だった。着陸ルートのすぐ横にあり、大きく飛行機が見えるのだ。

キイイイイイイイ バババババババ
鈴木:すごい大きいカメラ!連写もすごい!マシンガンみたい!
◯◯:ちょっと重いけど、かなりアップできるし使いやすくて楽しいですよ。飛行機は連写と望遠が命!
鈴木:なにそれ!あははは!
◯◯:(絢音さんの笑ってる姿見れて嬉しいです!)  かわいい...
鈴木:へっ...?///
◯◯:えっ?あっ!そ、そうだ絢音さん!せっかくだし被写体になってください!
鈴木:っ!/// こんな感じ?///
◯◯:そ、そういう感じ!///

こうしてしばし鈴木と飛行機のカットを撮りながら雑談に花を咲かせた。
バス停に戻り、数駅戻ってさらに歩くこと15分。

鈴木:ターミナルついたー!
◯◯:歩かせちゃってすいません
鈴木:いいのいいの!◯◯くんと話すの楽しいから!
◯◯:それならよかった!僕も楽しいよ!

いつのまにか敬語は外れ、2人の距離も近くなっていった。
鈴木:新千歳、福岡、大阪、広島、青森、新潟、秋田もある!
◯◯:こっちはホノルル、シアトル、サンパウロ、シドニー、バンクーバー、バンコク、ヘルシンキも!
鈴木:飛行機ってほんとすごいよね〜、どこでもひとっ飛び!
◯◯:ほんとにね〜...あっ、そうだ!絢音さん、今度一緒に飛行機乗ってどこか行こうよ!
鈴木:観光するってこと?
◯◯:うーんそれもいいかもしれないけど、空港内とその周辺の穴場スポットを探す旅がやりたい!絢音さんとなら楽しめそうなんだよね!
鈴木:いいねそれ!日帰りでもできそうだし今度やろうよ!

この日から、◯◯と鈴木はちょくちょく休みの日に会っては飛行機に乗り空港と周辺を開拓する旅をやっていった。
◯◯:うまっ!
鈴木:美味しい!ここは超穴場だね!みんな来ればいいのに...
◯◯:でも、秘密の隠れ家的な感じも良くない?
...

流石にヨーロッパやアメリカ、オーストラリアなどには足が伸びなかったが、韓国や台湾などへもフラッと訪れるまでに親しくなっていた。
鈴木:綺麗〜!こんな景色を見ながら食べれる韓国料理のお店なんてここくらいしかないんじゃない?しかもおいしいし!
◯◯:みんなすぐ都市部の方行っちゃうからこういうとこはあんまりフォーカスされないのかもね〜、ここも僕と絢音だけの秘密...的な?
鈴木:っ!そ、そうだねっ! (2人だけの秘密...///)
...

そんなある日、◯◯と鈴木は空港のターミナル、富士山も見える夕焼けの時間に展望デッキを訪れた。
おもむろに、◯◯が話し出す。

◯◯:絢音、話があるんだけど...
鈴木:なぁ〜に?
◯◯:絢音とこれからもたくさん楽しんでいきたい。僕と結婚してください
鈴木:へっ!?/// で、でも私たち付き合ってないじゃんっ!///
◯◯:僕にとってはそんなこと関係なかった。絢音と一緒に笑い合う時間が楽しくて、こういう日々を一生続けていきたいと思ったんだ。どうかな...
鈴木:付き合うを "飛び越す" かぁ。それも飛行機好きな私達らしい...か!もちろん、喜んで!よろしくお願いします!!
◯◯:やったぁ...!今日失敗したらどうしようかと思ってた
鈴木:ふふっ、私は◯◯と色んなところ行ったりして過ごすのがほんとに楽しいから、断るわけないよっ!
◯◯:せっかくならいつでも来れてプロポーズを思い出せるところにと思ってここにしたんだ。気に入ってもらえたかな?
鈴木:もちろんっ!ここの夕焼けがこんなに綺麗だって気付かなかったよ。大好きな人と結婚するからかな?えへへ
◯◯:ちょっと絢音いつからそんなこと言うようになったの!///

こうして、「見つけることを楽しむ」がモットーの夫婦がここに1組誕生した。
ちなみに、ウエディングフォトは飛行機の格納庫で、結婚式と披露宴は空港の大広間を式場に行われたそうな...

鈴木:◯◯〜っ!
◯◯:絢音!

「次はどこ行くっ?」


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