棒読みだけど感情豊かだと思うよ?
僕、◯◯にはとってもかわいいけど喋りが棒読みな幼馴染がいる。
そんな幼馴染はよく、感情がない人だと勘違いされる。多分棒読みでわかりにくいから。
僕に言わせてみればそんなのありえない。こんなに感情豊かな人はどこ探してもいないと思う。
だけど勘違いされている以上、本人も生きづらいだろう。
僕が理解者として支えてあげないと、と思っている。
なぜなら、僕は楓が...
◯◯:でんでんおはよ〜
楓:でんでんってやめてよーせめてでんちゃんとかにしてよ
◯◯:ごめんって、そんで?なんか嫌なことでもあったんか?
楓:えー別にないよー
◯◯:いーや、明らかに嘘だね、「考え事してて寝てません」って顔に書いてあるもん
楓:...
棒読みだけど、感情はほんとわかりやすいよな、この人は。何でみんなわからないのかがわからないくらい。こんなにわかりやすい人は珍しいと思うけど。
楓:...実は昨日さ、陰口聞いちゃったの
女1:ウチのクラスの佐藤楓ってさ、マジで何考えてるかわかんなくない?
女2:わかる。感情ないから話できないよね
女3:感情ないって厨二病かよ(笑)
女2:この年で?ありえな(笑)
女3:ワンチャン何しても抵抗しない説ない?感情ないなら(笑)
女1:じゃあ明日やってみっか、楽しくなってきた(笑)
◯◯:なるほどなぁ...
楓:何されるかわかんなくて、怖いの...
◯◯:まあなんかありそうならわかると思うし、いざという時は守ってやるからまあ心配するなよ
楓:うん...
昼休み。
女2:こっちこっちー
楓のためになるだけ早くトイレを済ませて教室に戻る途中に、女1,女2,女3の集団に連れられる女子生徒と遭遇した。
◯◯(楓...?)
行き先は、トイレの前の水道だった。バケツもある。何かが起こる気がした。今すぐにでも助けたい。けど、ここではぐらかされたら終わりだ。
◯◯(楓ごめん、ちょっと耐えてくれ...)
こっそりスマホのカメラを起動させ、動画を回す。
バシャ
楓:わぁっ
女2:は?感情ない癖に抵抗すんなよ
女1:マジありえないんだけど?しけるわ〜
女3:面白くないから痛めつけるしかないな〜(笑)
楓:や...めて...
女3:だから〜、感情ない厨二病の分際で抵抗するなって言ってんの
もう十分。録画を止め、これ以上エスカレートしないうちに助けに行く。
◯◯:何してんだ!おい、でん大丈夫か?
女2:あ、◯◯く〜ん!佐藤さんが濡れた状態で転んでたから、助けてあげなくちゃって!
女1:そうなの〜大変だよね〜!
は?しらばっくれやがってカスども。
......でもここは、小説とかでよくある無駄なネタバラシをするより向こうの話に乗っておく方が賢いだろう。
◯◯:それは大変だな。あとは任せてくれていいから行っていいぞ、授業遅れるって言っといてくれ
女達:は〜い!
女達が去ったのを確認して、楓を抱きしめる。
ギュ
◯◯:楓ごめん、もっと早く助けてやれなくて...
楓:ううん、いいの...私が勘違いされるような人なのが悪いから...嫌われて当然だから...
◯◯:それは違う。楓が嫌われて当然な理由なんてないよ。勘違いしたまま思い込みでいじめるのが悪いから
楓:◯◯...
抱き合ってると、ちょうどよく見回りの先生が通りかかった。そういえば今は時間的に授業中だ。
教員:おい、お前ら授業中なのに何してる?
◯◯:あ、先生ちょっといいですか?
教員:どうした?
◯◯:これなんですけど...
僕は、隠し撮りした動画をその先生に見せた。これを撮ってたせいで、楓を早く助けてやることができなかった。けど、これが最善の立ち回りだと思う。
教員:これは...
◯◯:今そこでずぶ濡れになって座り込んでいるのはそれが理由です。何とかしていただきたい。もちろんそれは教師の役目ですよね?
教員:おう。これは職員会議で共有して、生徒の処分を決めさせてもらう。ちょっと着いてきてくれ。
先生についていき、職員室まで行く。
教員:君たちのクラスは?
◯◯:僕らも、この動画の3人も2-Bで同じです
教員:⬜︎⬜︎先生のクラスだな。情報ありがとう。この動画をそこのパソコンに取り込んでくれ
その後、女子生徒3名は厳重注意、次やれば一発退学という重いイエローカードの処分が下った。それを聞いてホッとし、帰るためにバド部の活動終わりの楓を迎えに行ったのだが。
◯◯:あれ?いないな、外か...?
見つけた。察した。急いでカメラを回す。
女1:おい、お前やってくれたな
女3:チクリやがって、感情ねえくせにそこだけはキモい動きすんのかよ
ボコッ
楓:嫌っ...
女2:ここなら誰も来ねえだろうし存分に仕返しさせてもらうよ
一発殴ったのが映ったので録画は十分だ。これ以上傷付けさせるわけにはいかない。
◯◯:僕は無理だと思うなぁ
楓:...!
女2:あっ、◯◯くん...
◯◯:何してんの?また転んでるし
女1:なんでこんな女心配するの?別にどうだっていいじゃん!
その一言を聞いて、もうこいつらと会話する気も起きなくなった。この場は波風立てないようにするから早く退学になってくれよ。さようなら。
◯◯:まあ何があったかは聞かないでおくから、はよ帰んな
女達:う、うん!じゃあね!
女3:あぶね〜
女1:◯◯くんに気付かれなくてよかったな、ちょろくて助かった
女2:見逃してくれそうだったからセーフかな(笑)
ギュ
楓:......怖かった...!
◯◯:ごめん、ほんとは一発食らう前に助けたかった。今から職員室行く用事ができたからついてきて
あの後、動画によって、女1,女2, 女3は退学になった。
その後、楓をクラスの人に紹介するつもりで色々と動いた。その成果もあってか、クラスに馴染めるようになってきたみたいだ。
◯◯:でん帰ろ!
楓:うん
いつも通りの帰り道、楓が突然話し出した。
楓:◯◯ってほんと優しいよね...
◯◯:急にどうしたの?(笑)
楓:いつだって私もそうだけどみんなのこと気遣ってくれてさ。何で私の感情がわかるの?◯◯しか、わかってくれる人がいないの
◯◯:そりゃ、長くいるし。でんは結構顔とかに出やすいタイプだと思うけどね?みんなが気付かないだけなんだよ
楓:あの...さ。多分私よりもっとふさわしい人がいるから、期待しないけどね?私...
おっとストップストップ。その先はこっちから言いたいんだ。
◯◯:楓、好き。付き合ってほしい
楓:......えっ?
◯◯:何言おうとしたかくらいわかるよ。そのセリフは先に言いたかったから
楓:なんで...わかるの......私も好き!好きなの!大好きなの!
◯◯:知ってるよ。楓は多分僕なしじゃ生きていけないでしょ?(笑)
楓:もう!バカにしないでー?
◯◯:だってほんとのことじゃん!嬉しそうじゃんすごく!
楓:嬉しいけどー!
◯◯:これからもよろしくね、楓!
この感情豊かだけど棒読みの彼女を、一生支えて、理解してあげて、抱きしめてあげられるように。頑張ります!
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