棒読みだけど感情が無いわけじゃない。
私はよく感情がないと言われる。
理由は、普段喋ると全部棒読みだから(らしい)。
自分では全然そう思わないのだが。
けど、感情が無いわけじゃない。喜怒哀楽もちゃんとある。
ただ誰も気付いてくれない。1人を除いて。
◯◯:でんでんおはよ〜
楓:でんでんってやめてよーせめてでんちゃんとかにしてよ
◯◯:ごめんって、そんで?なんか嫌なことでもあったんか?
楓:えー別にないよー
◯◯:いーや、明らかに嘘だね、「考え事してて寝てません」って顔に書いてあるもん
楓:...
私の幼馴染、◯◯だけは、私の感情を読み取ってくれる。
そんな◯◯は、イケメンで気遣いができるから、男女問わず人気なんだ。
私が話しづらいことも先回りして聞いてくれるから、救われている。
楓:...実は昨日さ、陰口聞いちゃったの
女1:ウチのクラスの佐藤楓ってさ、マジで何考えてるかわかんなくない?
女2:わかる。感情ないから話できないよね
女3:感情ないって厨二病かよ(笑)
女2:この年で?ありえな(笑)
女3:ワンチャン何しても抵抗しない説ない?感情ないなら(笑)
女1:じゃあ明日やってみっか、楽しくなってきた(笑)
◯◯:なるほどなぁ...
楓:何されるかわかんなくて、怖いの...
◯◯:まあなんかありそうならわかると思うし、いざという時は守ってやるからまあ心配するなよ
楓:うん...
昼休み。
女2:佐藤さ〜ん、ちょっといい?
楓:はーい(やばい、今◯◯いないのに...)
女1:急ぎだからはやく!
楓:あっごめん今行くー
◯◯(楓...?)
バシャ
楓:わぁっ
やっぱり、やられてしまった。こんなの嫌だ...
楓(◯◯...助けて...!)
女2:は?感情ない癖に抵抗すんなよ
女1:マジありえないんだけど?しけるわ〜
女3:面白くないから痛めつけるしかないな〜(笑)
楓:や...めて...
女3:だから〜、感情ない厨二病の分際で抵抗するなって言ってんの
もう一発を覚悟した時、聞きたかった声が聞こえてきた。
◯◯:何してんだ!おい、でん大丈夫か?
女2:あ、◯◯く〜ん!佐藤さんが濡れた状態で転んでたから、助けてあげなくちゃって!
女1:そうなの〜大変だよね〜!
違う。違うよ。◯◯なら、わかってくれるよね?
◯◯:それは大変だな。あとは任せてくれていいから行っていいぞ、授業遅れるって言っといてくれ
女達:は〜い!
ギュ
◯◯:楓ごめん、もっと早く助けてやれなくて...
楓:ううん、いいの...私が勘違いされるような人なのが悪いから...嫌われて当然だから...
そう。私が悪いから。私が理解されないことが、全部悪いんだ、きっと。
◯◯:それは違う。楓が嫌われて当然な理由なんてないよ。勘違いしたまま思い込みでいじめるのが悪いから
楓:◯◯...
教員:おい、お前ら授業中なのに何してる?
◯◯:あ、先生ちょっといいですか?
教員:どうした?
◯◯:これなんですけど...
◯◯は、スマホを先生に見せながら何か話していた。私は落ち込んでいて、よく聞いてなかったけど...。
その後、女子生徒3名は厳重注意、次やれば一発退学という重いイエローカードの処分が下った。それを聞いてホッとしたのも束の間、部活終わりに、あの女3人に捕まってしまった...
女1:おい、お前やってくれたな
女3:チクリやがって、感情ねえくせにそこだけはキモい動きすんのかよ
ボコッ
楓:嫌っ...
女2:ここなら誰も来ねえだろうし存分に仕返しさせてもらうよ
さすがに、ここまでは◯◯も来てくれないか...逃げたい...嫌だ...助けて...
◯◯:僕は無理だと思うなぁ
楓:...!
女2:あっ、◯◯くん...
◯◯:何してんの?また転んでるし
女1:なんでこんな女心配するの?別にどうだっていいじゃん!
◯◯:まあ何があったかは聞かないでおくから、はよ帰んな
女達:う、うん!じゃあね!
女3:あぶね〜
女1:◯◯くんに気付かれなくてよかったな、ちょろくて助かった
女2:見逃してくれそうだったからセーフかな(笑)
ギュ
楓:......怖かった...!
◯◯:ごめん、ほんとは一発食らう前に助けたかった。今から職員室行く用事ができたからついてきて
あの後、◯◯が撮ってくれた動画によって、女1,女2, 女3は退学になった。
その後、◯◯のおかげもあって、クラスに馴染めるようになってきた。
◯◯:でん帰ろ!
楓:うん
こういう時くらい、たまには勇気出して本音を言ってみてもいいのかな...
楓:◯◯ってほんと優しいよね...
◯◯:急にどうしたの?(笑)
楓:いつだって私もそうだけどみんなのこと気遣ってくれてさ。何で私の感情がわかるの?◯◯しか、わかってくれる人がいないの
◯◯:そりゃ、長くいるし。でんは結構顔とかに出やすいタイプだと思うけどね?みんなが気付かないだけなんだよ
◯◯の言葉はいつだって暖かい。いくら感情がわかっても、私だって人を好きになるってことは知らないだろう。さすがの◯◯でも。だから、言ってみる。私はお似合いじゃないと思うけど。振られると思うけど。
楓:あの...さ。多分私よりもっとふさわしい人がいるから、期待しないけどね?私...
言い切る前に、◯◯が話し出す。
◯◯:楓、好き。付き合ってほしい
楓:......えっ?
私は耳を疑った。なんで言おうとしたことがわかるの?なんでこんな棒読みの面倒な人を、人気者の◯◯が好きになるの?なんで、なんで?
◯◯:何言おうとしたかくらいわかるよ。そのセリフは先に言いたかったから
楓:なんで...わかるの......私も好き!好きなの!大好きなの!
◯◯:知ってるよ。楓は多分僕なしじゃ生きていけないでしょ?(笑)
なんでわかるんだろう。敵わないや。これからは、棒読みでもいっぱい好きを伝えるんだ。棒読みでも、◯◯ならきっとわかってくれるから。
楓:もう!バカにしないでー?
◯◯:だってほんとのことじゃん!嬉しそうじゃんすごく!
楓:嬉しいけどー!
◯◯:これからもよろしくね、楓!
......告白まで、先回りされちゃった!
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