金持ちは意外と金がかからない生活をしている(ようだ)
僕のまわりには、そんなに金持ちというほどの人もいない。
ビンボー人ばかりというわけでもないのだが、でも、かなり金持ちな人が知り合いにいたこともある。
困窮している人のはなしは、どれも似たかよったかであることも多い。
たとえば、胃潰瘍だが医者に看てもらう金がないみたいな…おおよその見当がつくはなしだったりすることが多い。
今日は、かなり金持ちだった人のはなしである。
スーパーに勤めていた頃のことだ。
60に近い、ある会社の社長(正確には元社長でそのときには既に後見人みたいな地位に退いていた)さんが、バイトに(正確にはパート)に来ていた。
なんで会社の社長さんがそんなところでパートなんぞを?
ボケ防止と暇つぶし、それと友達作りみたいなはなしだった。
後見人みたいな地位はしかしほとんどこれといってやることがないらしい。
もっとも後見人みたいな人がやたらに口出しする会社も、それはそれで面倒臭そうだから、やることがないくらいが丁度いいのだろう。
自分の住んでる県の結構なある場所に地主として昔から勢力を誇ってる家系だったというはなしだ。
その社長さんと品出しを一緒にやってたときのこと、
そのスーパーが出してるオリジナルPVブランドの、つまり自社製品の商品にはなしが及んだ。
そのPVブランドの1リットルの紙パックコーヒーを指して「これ、美味いよね、いつも買ってるよ」と言い出した。
(「えっ、それマズくないすか。会社の社長さんがなぜわざわざそんなマズいものを…」)と喉まで出かかったが、なんとなくしてる会話だったので、自分の意見を主張するより適当に調子を合わせ「そうですよね、第一安いし…」
別の場所でこんどはコーンフレークのPVブランド商品を指して「これ結構いけるよね、これで十分だよね」と言ってきた。そのときも(えっ、そんなの食ってるんすか?あんまおいしくないっすよね。財布事情が許す限り、こっちのなんとかグラノーラにヨーグルトをかけて食べたいですけど、少なくともそのコーンフレークはあんま食べたくないな)と内心思ったのだが、やはりテキトーに調子を合わせてしまった。(自分は直接会話だと、咄嗟の展開に調子を合わすというやり方にでることが多いため、つまんない奴だと思われたのか、この社長さんには飲みに連れてってもらえませんでした。自分は相手にもよりますが直接会話より文章の方がまだ幾分、自分の考えを述べることが出来てると思います)
それはともかく、お金持ちは意外と金のかからない生活をしているようだ。
スーパーのPVブランド商品は例外はあるが基本価格は廉価で、お客にしてみればそれがメリットだ。
オリジナルPVブランド商品を弁護すれば、価格ほど粗悪なものはむしろほとんどなく、一部は通常のメーカーの既製品より画期的で魅力的なものすらある。
しかし会社の社長さんの生活は変なところで妙に質素で驚いた。
その安い紙パックコーヒーを妻に12本まとめ買いさすらしいから(どんだけ飲むんだ)これは相当お金が浮いている。
ただ、それ以外のところは結構豪奢(結構でしかないが)な感じがした。
一度、屋外の休憩所で一緒に休んでいると、かなり質感のよさそうな、色落ちが絶妙なジーンズが目に入り(そのスーパーでは当時、ジーンズにエプロンみたいな格好も全然OKだった)
「随分高そうなジーンズですね?」
と聞くと
「プラダのジーンズで、3万した」
というはなしだ、
「えっ~、プラダ?3万?」
3万のジーンズが高いか安いかは人の感じ方によりけりだろうが、
当時、自分はセール品のEdwinをはいていた。
いまは、Edwinすら高すぎて、ユニクロのジーンズをはいている。
ジーンズをプラダでというのは自分とノリが根底的に違うと思った。
また住んでるところが著名人の別荘とかが多い場所で、
昔、武道館10デイズ公演をやった某有名ミュージシャンや某超有名アナウンサーが(2人とも結構な年齢の方だ)近くに住んでてたまに飲むというはなしで、また某超有名イラストレーターにただで自分に絵を描かせたというはなしだった(実名はさすがに出せません)
自分のような者にしてみれば、フツーに驚きのはなしばかりだった。
また、自宅に部屋が9つあり(多いか少ないかよくわからないが)そのうち6つの部屋に巨大なプラズマTV(当時は4Kとかまだなく、液晶も20型がまだ8万円くらいする時代だった)が鎮座してるというはなしだった。子息は全部独立してしまい、妻と2人暮しというはなしだった。
立ち居振舞いや言葉の使い方や、離す内容、また雰囲気も確かに上等な感じがして、近寄り難いというわけでは全然なくむしろ親しみやすいのだが、成り上がりの1代社長さんとかにありがちなガツガツオーラはまったくなかった。
そんなフツーに想像できない生活をしてる社長さんも、一方では妙に質素で金のかからない生活をしていた。
ビンボー人の自分でもまず買わない廉価なPVブランドの品をこれでよしとしていた。
そんな御身分なら、食い物は紀伊国屋か成城石井、三越でしか買わないとかならまだわかるのだが、全然そんなことはなかった。
そのスーパーから貰える給料は「まぁ、たばこ代だよね」というはなしだった。
これはもう自分と相当違うところだった。
すべてのはなしが「は~あっ?」というくらい自分とちがうその金持ち社長さんは、しかし別のあるところで全然金のかからない生活をしていた。
(あとがき)
自分はいま派遣バイトなんかをやっておりまして、金銭的には結構困窮しておりますが、そうすると、精神世界や観念世界に埋没してしまう傾向が生じる一方で、逆に物質生活や金銭生活に過敏になってる部分もあります。
何て言うのか、余裕のあるサラリーマン生活していれば、年末調整のおかげで税金もあまり気にならないけど、苦しい自営業だと引かれる税金とかに過敏になるのに似ているとでもいいましょうか…
そこで昔、職場で出会った金持ちの社長さんのことをつい思い出してしまいました。
自分もPVブランドの安いコーヒー買って節約して、浮いたお金でプラダのジーンズを買おうかな…って、そういうはなしじゃないだろ!、っていうかそれじゃ意味ないだろ!って意味のわからなくなったところで締めさせていただきます。
お金持ちは意外なところで金のかからない生活しているというはなしでした。
御一読ありがとうございました。
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