ある怠け者の告白
自分は学校を卒業するくらいまで
犯罪者を収容する刑務所と、自分の家(部屋)は似て非なるものだと漠然と思っていた。
テレビで容疑者が護送されてくシーンをみると、あの人たちのいる場所と、自分の家は相当違うもんだろうと、学校を卒業するくらいまでは信じられた。
しかし、社会にでると様相が変わった。
大して金にならない職場はヘコむことの連続だ。
LINEはあまりやらなくなった。
自分は友人にグチをまき散らしていた。
そのうち自己嫌悪が生じてきて、スマホをあまり見なくなった。
スマホでは、若いピチピチの肉体をさらけ出してるキラキラ女子が、すごい数のフォロワーをたたきだしていた。
いま、コロナ禍というヤツで新卒の何割かは、スタートからリモートだ。
羨ましい気がすることもある。
あの、上司や顧客にへコまされるという苦役を免れてるからだ。
でも、分からない。
同僚にも魅力的な先輩にも会えないし、30歳くらいでコロナが解けて、はじめてあの上司や顧客にへコまされる現実へ投げ込まれるのかと思うと、ちょっとかわいそうな気もしなくはない。
いや、僕は、だんだん、自分の家と刑務所の区別がつきにくくなってきたのだ。
僕は部屋で、テレビやゲーム、スマホをほとんどやらないし、皆がよんでるマンガもほとんど読まないからだ。
この部屋は刑務所じゃないのか。
いや、多分冷静に考えれば、刑務所よりずいぶんマシなのかもしれない。
自分のバイト生活も結構な苦痛だが、前科を背負って生きていく人の苦痛ほどではないのではないかと思うからだ。
かくいう自分は、もう週五日は働かなくなった。
モノを買って人生がよくなる可能性は少ないように思えてきた。
金なんかは貯まるはずがないというのもおおよそ見えてきた。
そこが牢獄でしかないことを悟ってしまった自分は、部屋のインテリアや掃除に関心が薄れてきた。
しかし脱獄の可能性もまたない。
脱獄は火星に行くとかでないと理論的にありえない。
牢獄の中で自分はやる気を失っている。
こんな怠惰な自分のあたまの中に、空想上の老師が現れる。
「何ですと?
あなたは環境のせいにしているのですか?」
理論的にはそうなのかもしれないけど、
でもよくなるイメージが持てない
仕事も恋愛も金銭状況も
こうすると
仕事のない日
布団でぐずってしまう。
自分は布団を出る理由がない
布団の外で上手くいってるイメージが湧かないからだ。
最初は布団の中で、人生でまず会うことのない女の子をおかずに空想をする。
しかし、そのあとで生じるまず会えないだろうという現実的判断が気を滅入らせる。
しっかりしなくちゃと思いつつ、何をやるべきか分からない。
自力更生不可能なところへ転落してしまうのではないかという予感もあたまをよぎる。
こんな自分は社会では、何人の人からかは軽薄だと思われてるかもしれない。
あるいはよく分からない人だと思われてるだろう。
まわりの何人かは自分と距離をとっているようだったけど、
距離をとっているのは自分のほうかもしれないという気もする。
しかし、真面目な人だと思わても、そんなに益があるわけでもないことに次第に気が付いた。
真面目な人だと目されたが最後
大抵の職場ではたちまち便利屋さんとなってしまい、同じ給料であれもこれも押しつけられる。
それに社会は別にそんなに沢山真面目な人を必要としてるわけでもないことに次第に気づいた。
犯罪とかを仕出かさなくて、かける迷惑が許容範囲内に収まってさえいれば、社会はそんなに沢山真面目な人を必要としているわけでもないことに気付く。
真面目が何故必要かというと、主にそれは会社の評判とかが悪くならないためなのだ。
ネットであらゆる情報がまたたく間に拡散する世の中になったので、どの会社も評判を落とさないことやクレームを受けないことに神経を何倍も使うようになり、攻める企業より、過剰な自己防衛をしている企業が目立つようになった。
それに、人の真面目さというファクターだけでは、米国のGAFAみたいな産業や中国のそれに到底太刀打ちできない。
むしろ、真面目が裏切られてテロに近い犯罪をやられるくらいなら、許容限度内に収まってれば多少不真面目でも、テロに近い犯罪をやらない方が多分だけど有難いのだ。
布団の中で、不甲斐ない自分、所帯を持つぞとか起業するぞとか出世するぞみたいな甲斐性がない自分にちょっぴり寒気を覚えながらも、でもそんな自分でも生きていける場所はないものかなどと虫のいいことを考えている。
4月にしては寒い今日
自分は布団を中々抜け出ることができないでいる。
うまくいくイメージを持てないまま、布団の中でぐずっている。
(あとがき)
最近、休みの日には布団を抜け出すのに時間がかかる傾向があります。
最初のうちはおいしい空想(ほぼあり得ない空想)や過去の思い出に浸ることで自分を慰めるんですけど、そのうち、「あり得ない」というあの世にも興ざめな現実的判断というヤツが顔を出すものの、上手くいくイメージが湧かなくて布団を中々抜け出せないというあの情けないジレンマです。
でも、朝起きたときに一番恐ろしいのは、今日が昨日のつづきであることに気付いた瞬間に慄然することですよね。
あの悪夢感が一番恐ろしいですよね。
いま、自分は派遣のバイトをやってて、レギュラーで特定の職場とは関わらないのがフツーなので、昨日を引きずることは少なくなりましたけど。
上手くいってるイメージがわかなくて布団をなかなか抜け出せないというのは、あの地下道とかで毛布を日がな一日被っているルンペンさんとも被る部分があるようにも思え、ひょっとすると自分もそれらの人たちとそんなに遠くないところにいるんじゃないかってたまに慄然とすることも正直あります。
まぁ、こんなもの言いは、ひょっとすると良識派のお叱りを受けるだけなんじゃねえの、っていう予感もしたりして、そうすると、その上手くいかないイメージにさらに布団を被るみたいな悪循環があったりして、中々難しいなとは思います。
今回は布団を抜け出せないという状況の心象風景みたいなものを、多少の自己戯画化も含め書いてみました。
自分はいま、自己啓発的なポジとはもしかすると対極のところにいるのかもしれません。
でも、書こうとはしてるんだけどね。
御一読ありがとうございました。
このあとがきあとで消そうかな……
(製作データー)
書き始め 2021年4月17日午前11時01分