本当の終わり。私の未来。
#元彼の話 ④
元彼を引きずり続けて、気づいたら3年が経っていた。我ながらあまりにも長い。
その元彼から「何かしら」の報告を聞かされるらしいパーティーが、先日無事開催された。
「何かしら」。
彼は「仕事のこととか色々」と言っていたけれど、同棲して2年近く経つ彼女との婚約話だろうな、とすぐ予想はついた。
正直泣きそうになったし、
何が楽しくて本人から直接婚約話を聞かなければならないのか、とちょっとだけ腹立ちもした。
何を律儀に「報告する!」と連絡してきてるんだ。
何をしてんだあんたは。
私が引きずってるなんて1ミリも気づいてないんだろうね!
でも、
そういう真面目で律儀なところが好きで。
わざわざ報告してくれるのも嬉しくて。
好き嫌いがはっきりしている彼の中で、「直接報告したい人」でいられてることが嬉しかった。
ありがたい。
結婚、めでたい。良かったね。
会うの楽しみだなぁ。
いろんな話聞きたいなぁ。
とにかく感情カオスな状態だったけど、
結局1番大事だと思っていたのは
【笑って「おめでとう」と言う】ことだった。
彼が幸せなのであれば、それに勝るものはないのだから。
だから、心の耐性をつけて泣くことがないように
「直接婚約の話を聞く」という場面を毎日いろんなパターンで想像して、シミュレーションした。
その甲斐あってか、わりと早い段階で「結婚する人に未練はない!」と堂々と言えるくらいにはなれて。
なんなら、年単位で抱えていた重たいものが抜け落ちて、清々しい気持ちにすらなっていたくらいだった。
でもね、
予想外のことというのは起こるもので。
監督の「退職を祝う会」はそれはそれは豪華で、予想以上に大規模で、全国から監督を慕って集まった人達は皆、久々の再会を楽しんでいた。
私がいた部は、毎年年末年始にOBを呼んだ催しを開いていたから、規模は違っていても今回のようなパーティーは慣れたもの。
OBに挨拶回りをした後、当時のメンバーと円卓を囲んでくだらないことを話しながら食事をする光景は、気分を一気に学生時代に引き戻した。
見慣れた光景、見慣れた雰囲気。
の、はずなのだけど。
何も変わらない光景なのに、
彼が私の斜め前にいることが異様なくらい違和感を感じさせた。
学生当時はそれぞれの役割があったはずで、
催し事の間は話せるタイミングもそんなになかったし、横にいる時間は少なかったはずなのに、それでもなぜか彼はずっと私の横にいた気がして。
でも今回のパーティでは斜め前どころか、もっと遠くに感じて。
もう彼氏じゃないんだから当たり前なんだけど、不思議なほど違和感だった。
ほんと、自分でも驚くくらいに。
なんでこんなに違和感があるのか考えて、
すぐ思い至った。
彼は当時、催し事の間ずっと、私が困ったことにならないように気を配ってくれていたのだ。
ずっと横にいる気がしていたのは、
彼がずっと私を気にかけてくれていることに、私が気づいていたからだ。
無意識にそれに甘えていたからだ。
大学生になるまで体育会系の部活に所属したことがなく、そういう世界に不慣れな私が困らないように、ずっと見守ってくれていた。
催し事が終わった後、「こんな時はどうしたらいいのか」と話をしたら、一つ一つ教えてくれた。
そうだった。
彼はそういう愛し方をしてくれていたんだった。
不器用ながらも私を守ろうとしてくれて、
実際に守られていて、アドバイスをくれて。
だから、彼の隣はとても安心できたし
とても幸せだった。
とても愛されていた。
そのことに改めて気づかされて、離れてしまった現実をこういう形で再認識させられるとは予想外だった。
正直、堪えた。
だって、直接話を聞くことに対するシミュレーションしかしていない。
愛されていたことを再認識して、
もう別の道を歩んでいる現実を目の当たりにするなんて思ってなかった。
でも、彼の優しさと大きな愛に慣れてしまった私が彼と一緒にいられないのは当然なのかもしれないと思うと、諦めに似た気持ちになった。
会の終盤、彼から仕事でずっと希望していた部署に配属になったことと、婚約したことを聞いた。
ちゃんと、心の底から笑って「おめでとう」と言えたから、目標は達成。自分を褒めたい。
ちょっとだけ、不謹慎すぎる想像をしてしまったけれど、そんな人間らしい自分も愛しく思えた。
なんだか大きな肩の荷が降りた気がする。
雨が上がった後、虹が出て、日が照り出したような気持ちだ。
願望通りではないけれど、これで良かったんだと思う。
先日、友人に年下の男の子を紹介してもらった。
1度ランチに行って、
もう1回会いたいと言ってくれている。
真面目な男の子だと思う。
仕事もできそう。
悪いところは今のところ見当たらない。
どうしてもチラチラと浮かび出てくる元彼の存在は、無理矢理消している。
元彼と一緒にいたときのような
永遠に続けられる楽しくて心地よい会話や、
ワガママを言えて、
恥ずかしいことも曝け出せる安心感や、
愛されてる幸福感、満足感、充足感。
そんなものは、今後のお付き合いで築いていければ良い。
無理なら、それもそれで仕方ない。
のんびり自分のペースで、一緒にいたいと思える人と出会えたらいいなと思う。
親がボケる前に孫の顔を見せてあげたいけど、
それが無理でも許してね。笑
いつか結婚する時が来たら。
もしかしたら、結婚式の前日にあなたのことを思い出すかもしれない。
でも、それはネガティブなものじゃなくて
あなたとじゃなくても私は幸せになれたな、って
そう思えるようになっていたい。
私もあなたも、違う道で目一杯幸せになるんだから。
じゃあね、バイバイ!