スギアカツキ【たまごのはなし】第32回 チェコのおいしい卵事情。禁断の名物料理にもハマる
今年の夏、中欧のチェコ共和国を旅してまいりました。きっかけは、首都・プラハ在住の友人に会いに行くことだったのですが、チェコビール、豚ひざ肉のロースト、チーズフライ……、数々の「チェコ料理」に心酔し、チェコの食文化にすっかり恋をして帰国しました。そんな中、やっぱり私は「たまご」の話がしたくて、チェコで出合った“たまごにまつわる3つのエピソード”をご紹介したいと思います。
世界一美しい街といわれる「チェスキー・クルムロフ」
1.チェコの卵は有精卵。オーガニック・放し飼いも身近に手に入る。
チェコ産の鶏卵の多くは、無洗浄処理の「有精卵」。紙パックを開けると、羽が入っていたり、糞がついていたなんてことは、卵の洗浄が禁止されている他の諸外国でも見られるエピソードでしょう。
チェコならではの特徴としては、消費者が選びやすいよう、卵の殻に“数字とアルファベットを組み合わせた暗号”が表示されていること。これを確認することで、オーガニックかどうか、放し飼いであるかどうか(ケージ飼育であるかどうか)、国内産であるかどうかを確認でき、下4ケタの数字で生産者を追跡することもできます。
日本で有精卵を買うとなると、10個で千円近くにもなり、値段もかなり張りますが、チェコでは比較的手に入れやすい価格帯(6個250円~)で購入することができます。
2.チェコ土産には、割れない「イースターエッグ」がオススメ。
代表的なチェコ土産として有名なのが、「イースターエッグ」。息をのむほど繊細で美しい芸術品です。しかし、実はこれ、本物の卵の殻で作られていて、中身が空洞のため、ちょっとの衝撃で割れてしまうのが、旅行者にとっての難点。手の込んだ逸品ですから、値段もそれなり(私が購入したものは、1個600円程度)で、万が一割れてしまった時のショックは計り知れません。
実際私もドキドキしながら購入し、細心の注意を払って持ち帰ったものの、残念なことに1個割れていました。あー、がっかり……。皆さんが私のような悲劇を体験しないよう、アドバイスとしては、“木製タイプ”がオススメです。
本物の殻製よりは素朴なイメージですが、これはこれでとってもキュート! 子どものおもちゃとしても楽しいでしょう。広場などの出店でも見かけるアイテムで、1個50円程度で手軽に買えるものもあります。
3.チェコ料理「牛肉のタルタルステーキ」は、日本では禁断の味。
チェコの名物料理の中で、私が熱狂的にハマったのが、「牛肉のタルタルステーキ」。“生”の牛肉を粗いみじん切りにし、玉ねぎ、香辛料、ケチャップなどと一緒に混ぜ合わせ、ニンニクをこすりつけたパンの上に乗せて食べる料理なのですが、生肉の上に鎮座しているのは、もちろん「卵黄」。そうです、タルタルステーキに、卵の存在は欠かせません。そして、このまろやかでトロトロなレア感は、まさに禁断の味。
ちなみに、チェコで気軽に“生肉”を楽しめるのは、日本では許可されていない「放射線滅菌」が導入されているから。タルタルが食べられないことだけを安易に判断するのであれば、日本の法律が残念でたまりません(笑)。チェコを訪れる際には、ぜひ召し上がっていただきたい、希少かつ魅惑のごちそうです。
文・写真:スギアカツキ/食文化研究家。長寿美容食研究家。東京大学農学部卒業後、同大学院医学系研究科に進学。基礎医学、栄養学、発酵学、微生物学などを幅広く学ぶ。現在、世界中の食文化を研究しながら、各メディアで活躍している。『やせるパスタ31皿』(日本実業出版社)、女子SPA!連載から生まれた海外向け電子書籍『Healthy Japanese Home Cooking』(英語版)が好評発売中。
「みなさん、一番大好きな食べ物ってなんですか? 考えるだけで楽しくなりますが、私は『たまご』という食材に行きつきます。世界中どこでも食べることができ、その国・エリア独特の料理法で調理され、広く愛されている。そしてなにより、たまごのことを考えるだけで、ワクワクうれしい気分になってしまうんです。そこで、連載名を『たまごのはなし』と題し、たまごにまつわる“おいしい・たのしい・うれしい”エピソードを綴っていきたいなと思います」
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