見出し画像

車いす調整現場での実際(1/2)


目の前の事象を因数分解していく作業

数ヶ月前に、機種を変更し1つのご要望は叶えられていました。その主訴は「腰が落ち込んでいる気がする。もう少し起こしたい。」ってとこ。ただし、制約条件があり、今の部屋の中での取り回しがしにくくなることは避けたい(認知機能面からあまり大きく仕様が変わりすぎることも避けたい)ってとこ。そのご本人は、ご自身でベッドから乗り移り、車いすを手を脚で漕いで室内を動いている方で、まずはご本人に話を伺いながら、相手の言っていることを理解し、共有することからスタートとなります。もともとすごく頭のよい方でいらっしゃること、年齢に応じた認知機能面の低下が少しあるかなーってことが前提条件ですかね。
で、「〇〇さんの感じていることは正しい感覚だと思います」と前置きをしたうえで、その理由を2点お伝えしています。
①ご家族が購入しているクッション、タオルを敷き工夫しているがそのクッション(ホームセンターの¥3000くらいのハニカムのクッション)の素材がへたっていること

↑みたいなやーつ。素材は安ければ劣化スピードも早いものがほとんど。

②車椅子の座面側のフレームがお尻が滑り出さないように脚側より、お尻側のフレームを下げている構造であること
そのため、その構造を少し変えること、背中の張り調整機能の目的設定を変えることで改善すると思います、と。

わかります?画像上だと座面のパイプの右側が下に曲がってますよね?

因数分解したら再構築していくというプロセス

①について
こちらはご家族が新しいものを用意してくださることに。
可能であれば、クッション自体を車いす専用のものにした方が変数あ少なくなるのでそうしたい部分もありますが、ご家族の関わりの部分と本人が受け入れられる変数の絶対量は超えちゃいけない!!なので、これにて。
②について
同メーカーの次機種にて、違う構造のものを提案。
座面のパイプがまっすぐなものを選定します。ただし、この構造のものが良くない部分ももちろんありまして…この車いすは座面の幅調整ができるんです。「えーすごいねー」って思いますよね、調整幅広がるし。ただ、調整できる部分を増やすと部品点数から「重くなる」ってことや、今回はフレーム構造部分なので車いすのグネグネ感がでやすい、つまり漕ぐ力を出力したときにその力が駆動への力にいくその前に吸収させてしまう可能性が高くなるんですよね。雑にいると、リビングの木のフレームの椅子だとパッと動けるけど、キャンプ用のいすだと動きが吸収される(姿勢が違うじゃないかという議論はここではしません)っていうと少しわかりやすいですかね??

これ、わかりやすいようにタイヤ小さい機種にしてますが座面のパイプがまっすぐ。

こんなことを視覚的にも伝えながら、車いす全体の大きさや座面高などは変わらないことを一通りお伝えした上で情緒してもらいます。(人にもよりますが、この方の、特に今回の場合は先に情報をお伝えし、そこから体感してもらう流れがよい)
「んん!やっぱり違うわね。腰が落ちない感じがする!!」っと言葉に出してくれます。ここで、いままで車いすや車いす業者に対する不安や不満、または言っていることが伝わってるのかどうかという不信感みたいなものが1つとれてようやくスタートラインに立てたわけです。

なにを捨てるのか…

ここからは背中の張り調整をしていくわけです。
「リラックス優位」「活動性優位」か。解剖学的に必要な場所は支持しながら、重心のバランスや本人の好みや納得感がどこにあるのかを身体に触れながら探り、合わせて言葉のやりとりで気持ちがどこにあるのかを探っていきます。
「動きは良くなったけどアレがありにくくなった」っていうのは現場あるあるで、それにはいくつか理由やパターンがあります。そのうちの1つが「よいことばかり伝える関係者」ってことですかね。このパターンに陥るチームあ何機種も車いすを変えるを繰り返すんですけど、そもそも何をしたいかわからなくなり現在地迷子になりますね。そして、最悪なケースは「困難ケース」とレッテルを貼る(専門職の方たち、よく聞きますよね??心当たりないですか??)。「本人がそう言っている…」みたいなことを中心に回りすぎてるチームは怪しいですね…、そのうえでそれがどういう意味合いなのか、言葉としてそう言っているがどういうことか、またはそれは本心なのか…
話がずれましたので戻りましょう!!


今回は「活動性優位」で骨盤を少し立て気味で支持して状態を起こし気味とします(人によっては時間経過とともにゆったり座れなくて横に倒れてきたりずっこけ座りになったりもする)。そこは本人との会話の中で聞いていきます。「今まではこのぐらいゆったり座ってました。このぐらい骨盤起こすと姿勢は伸ばしやすくなりますよねー。でも起こし過ぎですかねー」っていいながら本人の気持ちを探るわけです。

それから室内の取り回しも問題ないことを確認し、この車いすで暮らしがリスタートするわけです。
「よくなったわ!ありがとう。」という久しぶりだという笑顔と前回より少し違った声色で部屋の出口で見送りをしてくれました。

部屋を出て、関係者とはほっと一息をつきつつ、また次の課題が数ヶ月後にやってくることをなんとなく感じていたりもするわけで(次回に続く)


※「こんな仕事に興味がある」っていうPTやOTや界隈の方、「こういう感じのチームで福祉用具に携わりたい」っていう方がいらっしゃれば、東京都府中市にはなりますが、『すりいでぃ府中』という事業所を開設しましたのでご連絡いただけたらうれしいです!!また、「組織内に相談できる人がいない」または「家族の姿勢についてうちに来ている人たちに相談してもピンとこない」って方もご連絡いただけたら、できることは少ないかもですが、なにか選択肢を増やすことぐらいはできるかもしれません!
株式会社スリーディメンション


いいなと思ったら応援しよう!