『号泣する準備はできていた』
「喪失するためには所有が必要で、すくなくとも確かにここにあった。」
悲しみに真正面からぶつかっていた少年時代。たくさん泣いた後にはもう失うものはないとホッとするような気持ちになることが多かった。
いつの間にか傷つかない方法を知らず知らずのうちに学んでいた私たちは、不意に悲しみが通り過ぎるようになっていた。
大人になったからではなく、強くなったからではなく、悲しむという感情を味わう勇気を私たちは失っている。
自分の気持ちにちゃんと向き合えないこと。それが何よりも悲しいことである