裸のおでこ。

髪が長いので髪を切ろうと思い、深夜にはさみを手に鏡の前に立った。ここ2、3年自分で切って失敗→プロの力を借りる、というサイクルの中から抜け出せない自分。そんな自分が嫌いで、今度こそ、理想の髪型になろうと思い、はさみを手に決意を胸に髪の毛、黒い毛を切り始めました。

失敗は成功の基、まさにその言葉通り、今回も成功の基になりました。長かった前髪は徐々にそのアイデンティティを失い、それと反比例してあらわになる裸のオデコ。前髪の心地よさで完全に忘れていたが、自分はおでこが広かった。小さめの文庫本が入るくらい、広い。

前髪が失われ、おでこが見え始めるのと同じスピードで後悔の念が胸に現れた。このままだとおでこが異常に広い角刈りになってしまう、そうはなりたくない。その思いは自分の右手に考える暇を与えることなく、瞬く間もなく、残り少ない前髪を完全に切り取った。桜の花びらくらいさみしく落ちていく前髪だった黒い毛たち。冗談ではなく、本当にスローモーションに見えた。

下を向いてはいけない、そう思って上を見ると鏡に映る広いおでこと散らされたもみあげ、そんな髪型の悲しい目をした人間と目が合った。上も下も悲しみに包まれ、それでも地球は回り続ける。

止まんないかな、自転。戻らないかな、時間。そんなアンニュイな気持ちにさせてくれた自分に感謝を。ありがとう。


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