#つい買い続けてしまう色々
「 #書いてつながろう 」
外出自粛でなかなか外に出られず、たくさんの暗い情報で頭がいっぱいいっぱい。
こんな状況だけど、みんなで「書く」ことでつながったり、楽しい習慣になったらいいな。
そんな企画に賛同したメンバーで、毎週テーマに沿って投稿しています。
参加したい方がいましたらコメント欄にてご連絡ください。
今週のテーマは「 #つい買い続けてしまう色々 」です。
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僕の好きなイラストレーターの故・安西水丸さんは身近にあるお気に入りのモノをたくさん描いていました。ちょうどイラストのちょっとしたお仕事をもらったり、新しいペンも買ったので、今回はイラストで「つい買っちゃうもの」を描きたいと思います。
前回までと文体も何もかも違いますが、あまりお気になさらず。そもそも僕は飽きっぽいのです。そんなわけで、飽きっぽい中で買い続けているものを紹介します。
3ヶ月の旅をさせてくれる雑誌。
季刊誌「MONKEY」/スイッチ・パブリッシング
カルチャー誌「SWITCH」や冒険雑誌「coyote」を出しているスイッチ・パブリッシングから出ている文芸誌。文芸誌というと、毎月ぶ厚いのが出ていますが、こちらは季刊発行なので、3ヶ月間ゆっくりと読むことができるのです。僕は一時期、雑誌の仕事をしていたのにぜんぜん雑誌を読まないのですが、コレだけは発売してすぐに書店に買いに行きます。
編集長は、「猿」ことアメリカ文学者で翻訳家の柴田元幸さん。新旧のアメリカ文学はもちろん、毎号のテーマに沿ったエッセイや短編を素敵なイラストや写真と一緒に載せています。ときどき、斬新すぎて雑誌をぐるぐると回しながら読まなきゃいけなかったり、イラストに夢中になって文章をぜんぜん読んでなかったり。文芸誌というジャンルながらデザインのクオリティがスゴイです。
僕は海外小説が大好きですが、フランスの現代文学や19世紀の名作ばかり読み、アメリカ文学と言えばレイモンド・チャンドラーやサリンジャーぐらいしか読んでいなかったのですが、この本を買うようになってからずいぶん幅が広がったような気がするのです。3ヶ月というのがまた絶妙で、ときどき読むぐらいでちょうどいいので、ゆっくりと旅しているような気分にさせてくれるのです。
イラストは2017年春の号「ともだちがいない!」です。ソール ・スタインバーグのイラストを使った2016年夏/秋の「短編小説のつくり方」もとっても素敵でした。
毎朝ちょっとうれしい。
ポーランド食器
今やどこの雑貨屋さんでも売られていますが(結構ニセモノっぽいのも多いですが)、僕が買ったのは10年近く前、田舎のポーランドとなんにも関係のない観光施設の売店でした。
一眼で見とれてしまったので、お店の人に聞いたら、オーナーさんのお友達が輸入をやっているとかなんとか。手描きで一つひとつ描かれているので、同じ柄でもちょっと違うのです。ポーランドのおばちゃん達が(おじさん達かもしれないけど)こんなに可愛い柄をちょこちょこと描いていると思うとそれだけで楽しい気分。
それ以来集めてしまって、何個か持っています。電子レンジも使えるし、ガンガン洗っても大丈夫。一番びっくりしたのは、立った状態で床に落としても割れなかったかったこと。
飲み口もちょうどいいポッテリした厚さで、朝が少しだけいい気分になります。
※余談ですが、タンザニアのアート「ティンガティンガ」が描かれたマグカップもたいへんお気に入りでした。ただ、洗ったらベロッと剥がれて泣きそうになりました。あまり知られてないので、気になる人は調べてみてね。
ああ恋しき、八角とお日様の匂い。
台湾雑貨
はじめて台湾に行った時から、台湾のデザインの虜です。漢字とデザインとユルさの絶妙な魅力がたまりません。
もちろん台北だったからかもしれないのだけど、地下鉄や街中にある広告もとても素敵なものばかりでした。日本だと一番ダサくなっちゃう公共の場のマナー広告なんかも、何を書いているかはわからないけれど、とてもいいデザインだったのを覚えています。「デザイン」というものがとても浸透しているような気がしました。
この台湾ビールのグラスは雑貨屋さんでもお土産屋さんでも、夜市でも、熱炒(ラーチャオ、日本で言う大衆居酒屋)でもどこでも見ることができます。台湾ビールの歴史は古くて、日本が統治していた時代まで遡ります(「台湾啤酒」に改名したのが日本統治が終わった1945年)。誰が作ったのかは知りませんが、絶妙なロゴデザインです。
台湾はあまりお酒を飲む人がいませんし、日本のようにジョッキでグイグイ飲んだりチビチビ飲んだりする人はあまりいないようです。熱炒にいるおじさん達は、このちっちゃなコップで「ごんぺー!」と言った後にグイッと一気飲みしてました。
現地で買ってきた雑貨を見るたびに、忌まわしいようで恋しいあの独特の(たぶん八角と臭豆腐の混ざった)においや、照りつける太陽や、ガヤガヤとした雰囲気を思い出します。
いちばん友だちになりたかった作家。
ボリス・ヴィアンの本
最後は僕の大好きなフランスの作家、ボリス・ヴィアンの本です。日本では90年代の伝説の漫画家・岡崎京子さんが描いた「うたかたの日々」(ともさかりえと永瀬正敏が主演の映画もあったよね!)が唯一知られているかもしれません。あまり紹介されることはない作家なので、過去の文芸誌や数少ない翻訳本を古書店で見つけては買っています。見つけたら結構、貴重です。
この人、とてつもなくめちゃくちゃな人でした。本業はお役人でハンコを押しまくるエリートですが、とてつもなく暇だったので作家や詩人や翻訳家やトランペット奏者、シャンソン歌手にもなり、エンジニアの資格も持っている多彩すぎる変人でした。
作家としては暴力的すぎると裁判沙汰になった「墓に唾をかけろ!」や、最も美しい恋愛小説とも呼ばれる「うたかたの日々」など今に残る傑作(当時は散々だった)も残していますし、翻訳家としてはレイモンド・チャンドラーをフランスで初めて紹介。歌手としては、「脱走兵(Le Déserteur)」はユーモアにあふれつつ強烈な反戦歌として今も知られていますし、ジャズが大好きでデューク・エリントンやマイルス・デイビスをフランスに呼んだとか呼んでいないとか。とにかく戦後のフランスであまり知られていなかったアメリカ文化の橋渡しをしていました。
オモチャみたいなミニチュアのトランペットを、夜な夜なサン・ジェルマン=デ・プレ(当時よくアーティストが集まっていたエリア)の地下のクラブで吹いたり、文化人や知識人たちに気に入られて、とにかく人気者だったので「サン・ジェルマン=デ・プレの王子」と呼ばれていました。
生まれつき心臓が弱いにも関わらず、心臓に悪いトランペットを吹き続けて、「僕は40歳までに死ぬよ」なんて言っていたら、本当に39歳で亡くなりました。それも自身の書いた「墓に唾をかけろ!」の映画があまりに酷いと、劇場で唾を吐くように言った後だったとか。
彼について気になった方は、wikipediaよりもこちらのアンサイクロペディア(wikipediaのおふざけ版)がオススメです。
こんな人生の通り、小説は自由すぎるユーモアと言葉遊びとめちゃくちゃな展開で進みます。後にも先にも、2度とこんな作家は現れないでしょう。「死者と会話する唯一の方法は読書だ」と、ミシェル・ウエルベックが言っていましたが、彼の本を読むと、酔っ払ってヘンなヤツに出会っちゃった時のような気持ちを覚えます。
出会っちゃったら、たぶん僕は彼と次の次の朝までずっと遊び続けたでしょう。たぶん、これ以上書くと長くなるので、またいつか。
またまたちょっと長くなったけど、読んでくれた方、ありがとうございました。
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来週のテーマは「 #自由な夜の贅沢 」