新人訓練②:現れて去る(中西)

もんサー(ひとりでできるもんサークル)の新人訓練をしました。

これはその記録のふたつめです。


8/19

・レクチャー

主に、全体の方向づけ、語彙の共有など

状況における参加の概念を自分専用の語彙として獲得したい

状況 =いる場/特定の時や場における具体的な関係の総体/生じている諸事の物語的に編集される以前の様子
参加 =状況とのエンゲージメント/何らかの状況において、「する(do)」こと
語彙の獲得 =既に扱える修飾語では表せない状況に立ち会ったときに、新しく修飾語が(身体感覚等、必ずしも言葉ではない形で)生まれる

自分用メモ
状況の中で、何も「しない」ままでいる(=参加しない)ことなど可能だろうか
・「する」と判断されるためのハードルはどれだけの高さなのか、その高さより下は本当に「しない」ことにあたるのか

・部屋の中に居る/外に居る

部屋からひとり、外へ出る。
外へ出たら、外の様子の中で、外に居る。
しばらくしたら部屋に戻ってきて、次の人が部屋を出る。
部屋の中では、部屋の様子の中で、部屋の中に居る。
全員が外に出て中に戻ってくることをやったら、終わり。

自分用メモ
・状況に伴って変化してしまう自分について、その把握を〈自分⊃状況〉というよりも〈状況⊃自分〉に重心を置いて行うことに、慣れていない
・自分がいるところで自分がそこにいることを捉えつつ、同時に自分がいないところのことも捉えている、という二重の責任感によって、落ち着く

・いろいろな立ち方を試す

以下のイメージを持って、ただ立つ。ひとつづつ試す。
自分の前にやっていた人がどう考えてやっていたか聞いてから始める。
やっている間、他の参加者に見られている。
(A)プレーンに立つ
(B)責任を持って立つ
(C)責任を放棄して立つ
(D)責任と放棄をミックスして立つ

自分用メモ
(A)安定感、不快感の除去、安心
(B)集中、怒る、すぐ動ける、規律を受け入れる、目を合わせる、タスクのことを考える
(C)ぼーっとする、何かに感動する、放っておく、ふらふらする、内面にこもる
(D)交互にやってみたり中間をやろうとしたりするがうまくいかない、しっくりこない

・他人が自身の身体感覚を用いて話すことを聞いて、自分はどんな風にそれを使ったり無視したりするのか
誰かが置かれていて自分は置かれていない状況について、なにを「する」ことができるか


8/20

・ディスカッション

「相手の言っていることがわかる」「自分の言っていることが伝わっている」という経験について

自分用メモ
・反応を参照して判断している
・反応とその意味の対応表が異なっているとケンカになる(わかる/わからない、とか、言った/言ってない、とか)
・対応表が手渡せる、は、状況がわかる、みたいなこと

・街に出て、人の会話を聞く

好きな場所に行って、人の話を聞いてくる
場所にいる間、メモを取らない

自分用メモ
・いつも作業しながら片手間で感じていた人の会話や場の状況を、その把握をするぞと思って捉えようとすると、情報量の多さにびっくりしてしまう


8/21

・会話を書き起こす

昨日行って聞いてきた会話を、紙に書き起こす

自分用メモ
・書き方。図/イラスト/台詞/縦書き/横書き/色使い、等。
・思い出せること(情報の種類)。配置/音/言葉/雰囲気/印象/色/年齢/権力配置、等。


8/22~24

・プレイのための素材をつくる

書き起こした会話・状況から、何らかの要素を抽出して持ち運んで別のところでもできるように、準備する


8/25

・テストプレイしてみる(in 会議室)

それぞれが持ち寄った素材で、プレイを実際にやってみる
その後、抽出箇所や狙いをシェアして、みんなでフィードバックする

自分用メモ
・案外、書き起こすときに使っていた癖(書き方・思い出す情報)とはまた別のポイントに注目する人が多く、そのギャップがまた個別的で面白い。
・手塚夏子さんと行った「実験づくり」ワークショップに迫る、連続制作感。激しすぎてもうあんまり覚えてない。


8/26

・プレイしてみる(in どこでも)

フィードバックを踏まえ、適宜内容や手順を変え、プレイを作る
制作過程を踏まえ、そのプレイに「(形容詞)(名詞)の関係」と名づけを行う
場所、人数、具体的な手順を共有して、みんなでやり、観察して、フィードバックを行う

【中西が作ったプレイ】
8/20に行ったカフェの状況から、会話の内容と音量を抽出し、持ち運べるように考えた

①並行する会話の関係
場所:広くて人が集まって座っているところ(学生会館ラウンジや中規模以上の飲食店)
人数:最低6人
手順:
・観客を1人決める(了承を取るかは問わない)。
・チームA(2人以上)は、観客からなるべく離れたところに、互いに距離を取って座る。
・チームB(2人)は、Aと観客の間くらいに、互いの距離を近くして座る。
・チームC(2人)はA、B両方から離れたところに座り、出題者と回答者に分かれる。
・チームAは、指示した形にしたがって上半身を上下させながら、前のめりに、大きめの声で話す。
・チームBは、指示した形にしたがって上半身を上下させながら、互いの共通点をできるだけ多く挙げる。
・チームCは、三択クイズを20問やる。回答は、回答がAならばチームAのそばへ、BならばチームBのそばへ、Cならば観客のそばへ、行くことでおこなう。
・チームCが最初の回答をはじめたら、チームA、Bもはじめる。チームCが20問の回答を終えて席に着いたら、すべて終了。

②並行する音の関係
場所:人がたくさんいるところ
人数:1人
手順 :
・ボーッとしてみて、聞こえてくる音や会話をひとつ選ぶ。
・それをしばらく聞く。
・同じ作業をあと2つ、別の音や会話で行う。
・3つの会話を、同時に耳に入れる。3つが同時に入ったと思ったら終了。

自分用メモ
・学生会館ラウンジ/サイゼリヤ/道/公園、様々な場所でプレイを行ってみたが、予想より遥かに迷惑顔されない(されなかったわけではない)。
・①②両方のフィードバックを経て、実際に抽出していたのは音とその空間内での位置関係だったかもしれない、と思った。立体音響的な。
・そういえばあんまり会話内容は思い出せない。しかし会話している人らの人間関係をどう判断したか、は覚えている。使った手掛かりと結果、どうなってるんだ……。
・手塚夏子さんと行った「実験づくり」ワークショップを超える、連続制作感と現場感。激しすぎてもうあんまり覚えてない。


全体を終えて

状況は常に超が付く複雑さで、ちょっと変わったことをしたくらいでは、どうにもならない(何も変わらなかったわけではない)
・ということは私は、状況とは出来事ひとつで壊れてしまう単純なものであり且つその責任を負うのは私だということ(それなりに本当にそうなのだけど)を、実態より大袈裟に予想していたことになる。
・で、そうした予想が強いと、自分で構築し上げた特殊な「状況」でしか自分のやりたいことができないはずだ、と思ってしまうな……。

・途中「状況の現れの媒体として、自分の身体を取り扱う」というコメントを講師のうらさんがしていたと記憶しているのだが、これはあんまりやったことないモデルでの把握だ、と思う。自分が周りに影響を受けて変わることについて、出来事とそこでの変化の「歴史」として構築していくのがポピュラーなんではないか。「歴史」の構築の中では自分の変化をついつい過去と辻褄の合う或る傾向に押し込めてしまう。精神の一貫性(?)に真面目に向き合い過ぎて、却っていまここの自分の身体が感じていることを軽んじている。でも本当は、自分が思うより激しく身体は周りの状況の中に放り込まれて変わりまくっている。そのことを捉えるには、大切なおもちゃくらいの感じ(かけがえのないおもちゃではある)で自分を自由に動かしてみてよい、かもしれない。

・それはそうと、二つとも大変だった。

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