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メタルギア2 ソリッド・スネーク(1990)
生まれないはずだった続編
1987年、MSX2にて「メタルギア」が発売されました。
メタルギアがどういうものか簡単に説明しますと、敵の拠点に潜入して、出来る限り存在を隠しながら任務を遂行することを目的とした、ステルスアクションと呼ばれるジャンルのゲームです。
元々、ファミコンの戦争ゲームのような作品は作れないからこそ生まれたメタルギアではありましたが、程なくして、そのファミコン向けに移植されることになります。
MSX2のような制約が無いファミコン版はさぞ名作…とはなりませんでした。
敵の配置的に必ず見つかる場所があったり、隣のエリアを双眼鏡で偵察してると倒したはずの敵が復活したり、そもそもメタルギアが登場しなかったり。残念ながら、生みの親である小島秀夫監督をして「クソゲー」と言わしめたダメ移植です。
最近、現行ハード向けにこのファミコン版が移植されたのですが、このファミコン版、「独特な体験(意味深)」というような紹介をされていて、プロモーションを担当している方の苦労を慮らざるを得ません。
そんなファミコン版ですが、MSX2は欧米で発売されていないので、海の向こうで遊べる唯一のメタルギアになります。
移植はイマイチでもベースになったゲームは名作なので、ファミコン版は海外で大ヒットしました。
その流れで、海外のファミコン(NES)向けにメタルギアの続編「SNAKE'S REVENGE」が発売されます(日本未発売)。
こちらは後のシリーズにも採用されたサーチライト等、ただの模倣に留まらない進歩が垣間見える作品でした。
いつかクリアしたら、この作品ももう少し語ろうと思います。
このSNAKE'S REVENGE。海外限定ではあるのですが、開発したのは日本のチームでした。そのチームに所属しているスタッフの1人が、ある日、自分が携わっている作品のルーツである小島秀夫監督と出会います。会社からの帰りの電車で。
小島監督はメタルギアを生み出した後、PC-88向けに「スナッチャー」という、バイオテロに晒される未来の日本を舞台にしたアドベンチャーゲームを作っていました。メタルギアは一作限りで終わらせるつもりだったようです。
そして、監督の預かり知らぬ場所でメタルギアの続編を作っていたスタッフは、初代メタルギアの大ファンでした。彼か彼女かは分かりませんが、小島監督に情熱を込めてこんなエールを贈りました。
「やっぱりメタルギアは小島さんが作らないと!」
ファンからの直接の応援に感銘を受けた小島監督は、自身による続編「2」を作ることを決意します。
Briefing
自分がこの作品を初めて遊んだのは、前作「メタルギア」をクリアした後でした。
当時の最新作を遊んでから挑戦した第1作目。遊んでみるとちゃんと面白かったのですが、最新作と比べて足りない物があるのも事実。最新作→第1作という順で遊んだら当然そうなりますよね。
ですが今回の「2」に関しては、1→2というリアルタイムで遊んだ方々と同じ道を辿るわけです。
自分の「1」の体験は古典に触れるという面が強かったのですが、「2」では当時多くの方々が感じた進化を、とても自然な形で追体験することができました。「メタルギアって、MSX2って、こんなこともできるのか!」という様なことばっかりでしたね。
METAL GEAR 2 SOLID SNAKE
この「2」もMSX2というPC向けに制作されたので、ゲームを起動すると「1」同様、MSX2のロゴが表示されます。
しかし、「1」と同じなのはここまで。
3年の月日を経て、小島監督とともに帰ってきたメタルギアは凄まじい進化を遂げていました。
まず、急にゲームスタートとなる前回と違い、オープニングデモとバックストーリーの説明が入るようになります。
下にオープニングの動画貼っておきます。よろしければどうぞ。(一応、自分で撮った動画なので大丈夫…なはず)
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シリーズでも1,2を争うぐらいかっこいいと思います
監督!
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内容そのものも、世界観やキャラクター設定により深みが。
以降のメタルギアの雛形
オープニングでは、センサーや武装、様々なパーツの設計図と共に、スタッフの名前が連ねられています。彼らが作り出したパーツによって構成されるのは、以前の物とは比較にならない、全く新しいメタルギアでした。
OPERATION INTRUDE F104
米、中ソなどの大国間の雪解けに始まり、各地の地域紛争も和解、緩和に向かい、ようやく世界は安定化の時代を迎えようとしていた。時に1990年代後半、まさに核の脅威の時代は終わりを告げ、新たな安定の新世紀、21世紀を迎えようとしていた。
しかし、平和を好まない者達もいた。中東で不穏な空気が高まっていた。ソ連、中国、中近東に隣接する小国、ザンジバーランドに軍事政権が樹立。ザンジバーランドは世界各地の「廃棄用核兵器貯蔵庫」を襲撃、未だ未廃棄であった核兵器を奪い、世界で唯一の核武装を遂げた後、隣国に対して無差別侵攻を開始したのである。核を放棄した世界にとってザンジバーランドの核武装は文字通り、脅威となった。核保有を放棄した世界に再び、核の脅威が芽を出そうとしていた。
一方、30年は持つと言われた世界の石油資源の枯渇が予想以上に早く到来し、石油に代わる安全な代替エネルギーが得られないまま、世界は深刻なエネルギー危機に直面していた。
そんな中、チェコの生物学者、キオ・マルフ(KioMarv)博士により、高純度の石油を精製するという微生物(微細藻類)「OILIX」が発明された。「OILIX」を巡って世界は再び緊張状態へと移行、アメリカでの学会に出席するためチェコを離れたマルフ博士は渡米途中、ザンジバーランドによって拉致されてしまう。ザンジバーランドは核兵器と「OILIX」で軍事優位を確保しようとしているのである。
僅か数ミクロンの微生物が、今、世界を左右しようとしている。元FOXHOUND隊員のソリッド・スネークに極秘任務が下る。ザンジバーランドに単独潜入、キオ・マルフ博士を救出せよ! 世界を核の脅威から守れ!!
かつて、タバコ一箱を片手に要塞へ潜入し、数多の傭兵達と核搭載二足歩行戦車を粉砕したソリッド・スネーク。
任務終了後はカナダで隠居していたらしいですが、古巣であるFOX HOUNDの新司令官「ロイ・キャンベル」の指令で、再び戦場に帰ってくることになりました。
1999年12月24日。中央アジアの小国「ザンジバーランド」の軍事要塞を目前にしたスネークに、キャンベルからの通信が入ります。
キャンベル「よし…OPERATION INTRUDE F014 開始。もう一度、確認する。君の任務はザンジバーランドに潜入、拉致されているチェコの生物学者キオ・マルフを奪取すること。」
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後のシリーズでも登場するが、今回初登場である
その後、キャンベルから唯一携行を許可された新兵器「動体反応センサー」や、マルフ博士の体に埋め込まれてる発信機について説明されます。
新しいセンサーを頼りに、マルフ博士の発信機の信号を見つけろとのことです。
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自分と敵の位置を表示してくれる
自分がいる場所の外の様子も、なんとなく把握できる
スネークは指示通りにマルフ博士の捜索を始めました。レーダーだけでなく、ほふく前進や壁叩き等の様々な新要素を駆使して、要塞の司令部「ザンジバービル」に潜り込みます。
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これで狭い通気孔や、車の下にも隠れられるぞ!
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音を漏らすと出所を探すようになったが、それを利用して敵を誘導することもできる!
ザンジバービル3階で監禁されていた博士を見つけ出したスネーク。早速任務完了…なんて虫のいい話があるわけなく…
マルフ博士「ふふ…愚かなFOX HOUND部隊!マルフ博士はここにはいないっ!こんな安っぽい発信機でだまそうとはFOX HOUNDも相当、時代遅れだな!」
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ブラック・ニンジャ「俺はブラック・ニンジャ。NASAの対地球外環境特殊部隊出身。」
単身潜入専門の兵士であるスネークが言えた柄ではないですが、すごい量のキャラ付けですね。
最初のボスとしてしっかり印象に残ったブラック・ニンジャとソリッド・スネーク。彼らによる手裏剣と銃弾の応酬の末、ニンジャの方が倒れました。
ブラック・ニンジャ「…スネーク」
スネーク「誰だ?…なぜ、名前を」
ブラック・ニンジャ「お、おれだ…シュナイダー。カイル・シュナイダーだ。覚えているか?」
ニンジャの強烈な自己紹介でもダンマリだったスネークですが、これにはさすがに驚きを隠せません。
カイル・シュナイダー。
前作でスネークの任務をサポートした現地レジスタンスの一人。
敵要塞「アウターヘブン」のボスの正体を知り、スネークに真実を伝えようとした時に、殺されたかと思われていた男。
しかし彼曰く、彼を殺そうとしたのは
「俺が殺されかけたのは奴らにではない、お前らとお前らの国だ」
アウターヘブンにいた人々は、元々、戦災孤児や難民でした。20世紀、世界各地で勃発した戦争の被害者であり、生き証人でもある彼らは、安寧を迎えるはずの21世紀にとって、都合の悪い存在だったようです。
スネークがメタルギアを破壊した後、抑止力を失ったアウターヘブンは、NATO軍による大規模な爆撃を受けました。
世界に見捨てられ、猛火の中逃げ惑うシュナイダー達。そんなとき、ただ一人、彼らに手を差し伸べた英雄がいました。
シュナイダー「あの人は我々のしたことを許してくれた上、我々に新しい土地や家族を与えてくれた…スネーク、今にお前もわかる。あの人の素晴らしさが…」
レジスタンスだったシュナイダー達を許した「あの人」。つまり、かつてのアウターヘブン側の人間、スネークと対峙した側の人間ということなのでしょう。
「スネーク…お前に借りはあってこそ、恨みはない。博士の居場所を教えてやろう。あの人の意思に逆らうことではない…博士の監禁されている独房の見張りを探すんだ。」
シュナイダーは、マルフ博士への手がかりをスネークに伝えます。
ブラック・ニンジャとしてではなく、シュナイダーとして。かつての仲間であるスネークにヒントを遺し、彼の身体は爆発します。
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シュナイダーの遺したヒントを元に、スネークは博士の捜索を続けます。
以前から現地に潜入してしたCIAのエージェント「ホーリー・ホワイト」、FOXHOUNDのサバイバル教官「マスター・ミラー」、傭兵上がりの情報屋「ジョージ・ケスラー」、そして現地に住む子供達のお陰で、いかにもな感じの独房に辿り着きました。
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ジャーナリストとして潜入しているCIAのエージェント
現地にいるだけあって、ザンジバーランドの設備や内情について詳しい
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FOXHOUNDの鬼教官
食後の休憩など、体調を気遣った助言が多く、根性論も好き(虹野さん?)
時々、鋭いアドバイスもする
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傭兵上がりの情報屋
ボスと戦うとき、彼に通信しておけば間違いない
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みんな戦争孤児や難民である
独房の中の様子は見えませんが、中から何やらトントン音が聞こえます。
どうにも規則的な周期の音ですが、これは音を使った暗号「タップ・コード」というものらしいです。
キャンベル曰く、解読法は説明書にあるとのことですので、電子説明書を頼りに音を聞き取ります。
解読結果は5桁の数字、無線機の周波数でした。早速電話してみましょう。
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最初に行数を送り、次に列数を送ります。
例えば、トントントン・トンと音を鳴らせば、3行目の2列目ということになるので、「M」になります。
「おう、わかってくれたか…私の暗号の意味を」
暗号の発信源だったのは間違いないようです。
しかし独房の中にいたのは、マルフ博士ではありませんでした。
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ドラゴ・ペトロヴィッチ・マッドナー博士。
アウターヘブンにて、悪魔の兵器「メタルギア」の開発を強要されていた、ロボトロジーの天才。
娘のエレンと共に、スネークに救出された過去があります。
スネークのメタルギア破壊も、マッドナーの助言あってこそのものでした。
シュナイダーといい、マッドナーといい、スネークと面識のある人達ばかり出てきます。
どうやらマルフ博士とマッドナーは友人同士で、渡米中に一緒にザンジバーランドに誘拐されたらしいです。
しかしマッドナーの誘拐は、決してマルフ博士のついでというわけではなく…
マッドナー「そう…メタルギアじゃよ。スネーク。あるのじゃ、あれが…ここに。」
メタルギアは、あらゆる地形から核ミサイルを発射するために開発された兵器です。その実力は核を搭載して初めて発揮されます。
冒頭のあらすじでも触れられた、ザンジバーランドによる核兵器の強奪。これはメタルギアを完成させるための行動だったようです。
マッドナー「スネーク…ここまで言えば、こいつらの黒幕が見えてきたじゃろう?」
スネーク「ビッグ…ボス?」
ビッグボスは、表ではFOXHOUNDの総司令官であり、裏ではアウターヘブンを創設した男です。
スネークにとっては上官でもあり、裏切り者でもありました。
3年前、旧式のメタルギアと心中したはずでしたが、しぶとく生き残ったみたいです。
マルフ博士のOILIX、そしてマッドナー博士のメタルギア。ビッグボスは、この2つの力で、世界を屈服させようとしているのです。
このままではノストラダムスの予言が的中しそうなので、せめてマッドナーだけでも助けようとしますが、二人を隔てている壁は幾らスネークでも破壊できません。
どうしようもないので、スネークは別の場所に移されたマルフ博士の居場所を探ることにしました。
マッドナー曰く、マルフ博士の体内には小型無線機が埋め込まれていて、周波数が分かれば連絡できるらしいです。
マルフ博士の居場所や周波数など、新たな手がかりを見つけるため、スネークは新エリア「タワービル」へ向かいます。
マッドナー「スネーク。娘のエレンが君のファンでね。なかなか結婚せん。困ったもんだ。」
スネーク「大丈夫だ。娘の結婚式には間に合うように迎えにくる。」
タワービルを目指すスネーク。
その手前のエリアで突然、正体不明の不気味な通信が入ります。
何者かはさっぱり分かりませんが、幸い喋っている内容は理解できます。今スネークが通ろうとしていた場所は地雷原らしいです。危なかったあ…
親切な方にお礼をしたいのですが、恥ずかしがり屋なのか正体は明かしてくれません。
「ファンの一人さ。…うまくやれよ。」
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ソ連の怪物ヘリ「ハインドD」等との激戦を超えて、スネークはタワービルに到達しました。
タワービルに入ると、CIAのエージェント、ホーリーから無線が入ります。
ホーリー「スネーク!わたし…正体がばれちゃって捕まっちゃったの!!助けて!」
博士を助けるときは手遅れなことが多いですが、女性との待ち合わせは絶対間に合わせる男、ソリッド・スネーク。
周辺の物音から監禁されている位置を特定して、ホーリーを見つけ出します。
ホーリーは、特に痛めつけられたとかそういうことはなく、普通に元気そうでした。
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彼女が言うには、マルフ博士は伝書鳩に、手がかりの手紙をくくり付けて、外に放ったらしいです。無線の周波数が書かれてるかも。
とりあえずホーリーはこれまで通り、ザンジバーランドに潜伏し、スネークを無線でサポートすることにしました。
スネークは鳩探しのため、タワービルの屋上を目指します。
ホーリー「じゃあね、スネーク…またあとで…」
スネーク「ホーリー!」
ホーリー「えっ?…」
スネーク「今のは、恋人同士の別れの言葉だ」
ホーリー「…じゃあ、私たちは?…なんて言うの?」
スネーク「生きていれば、いつでも会える」
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タワービル屋上でマルフ博士の伝書鳩を見つけたスネークは、鳩が運んできた暗号を読み解きます。暗号の内容は、予想通り無線機の周波数だったので早速電話。
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暗号の答えはこのnoteの最後に書いてあるかも?
最後まで読んでね!
解けても読んでね!
言っておくが、ネット検索をしようなどとは思うなよ?
ヒントは「デジタル文字」
今度は正真正銘マルフに繋がりましたが、地雷原のファンの時とは違い、喋っている内容が分かりません。
マルフはチェコ語とスロバキア語しか喋れないのです。
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マッドナーに相談した結果、マルフとマッドナーを護衛していたSTB(チェコ秘密警察)の女エージェント「グスタヴァ・ヘフナー」なら、通訳できるんじゃないかとなります。マッドナーもチェコ語が喋れない。
グスタヴァは変装しているらしいので、女子トイレに入る兵士を待ち構えます。立派な犯罪ですが、ザンジバーランド自体がヤバい国なのできっとセーフです。
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世界の危機だし許しておくれ…
やがて一人の兵士が女子トイレに入り、それに便乗してスネークも潜り込みます。
スネーク「グスタヴァ?」
グスタヴァ「そうよ、私…STB局員のグスタヴァ・ヘフナー」
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実はPS2移植後に名前が変更されている。
変更前は「ナターシャ」という名前だった。
スネークはグスタヴァに無線機を貸して、マルフと話してくれるよう頼みます。
グスタヴァはチェコ語かスロバキア語かもよく分からない言語を流暢に使い、マルフ博士と喋り始めました。自分が喋れない言語を使いこなす人ってかっこいいですね。
マルフはタワービル北のクレバスをさらに超えた場所、収容所にいるらしいです。
スネークとグスタヴァは、道中でちゃっかり救出したマッドナーと共に、クレバスを目指します。
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道のりは長く、一行は途中の地下道で休憩することに。床に腰を下ろすと、グスタヴァが自分の過去について語り出しました。
グスタヴァは今でこそSTBの局員ですが、昔は、スケートで金メダルを獲得するほどのオリンピック選手でした。
まだスケートをしていた頃、グスタヴァは西側の「フランク・ハンター」という男と恋に落ちます。
彼を追いかけるため、グスタヴァはスケートも家族も捨てて亡命を試みますが、西側は彼女の受け入れを拒否。故郷である東側では、選手権を剥奪され、STBに入るしかなかったと言います。
そして東西の壁がなくなった現在も、フランクとの再会は叶っていないそうです。
シュナイダーや孤児達とは少し違いますが、彼女も20世紀という時代の被害者なのかもしれません。
スネーク「彼(フランク)には…それ以来?」
グスタヴァ「会ってないわ。…私たちのベルリンの壁はいつまでも残っていたのね。」
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恋バナというにはあまりにハードな過去を語りながらも、三人はクレバスに辿り着きます。収容所がある反対側に行くためには、細い吊橋を渡らなければならないようです。
マッドナーが橋を渡りきり、続いてグスタヴァが渡ろうとした瞬間。
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飛来したミサイルが橋を吹き飛ばしました。
グスタヴァの身体が爆風で宙を舞い、地面に叩き付けられます。
グスタヴァ「…あ、私…私、やっぱり…氷の上しか歩けなかったみたい。滑ることばかりで…両足で、ちゃんと両足で地面を踏みしめて歩くことをしなかったわ…」
スネーク「東西の氷は溶け始めているんだ。グスタヴァ、今度こそ地面の上をしっかりと…自分の人生を踏みしめて味わう時だ。グスタヴァ、まだだ、まだだ…」
グスタヴァ「もういいのよ…私、何人もの死を見てきているわ。自分がどんな状態か…わかる…残念だわ。またいい人にめぐり会えたのに。」
スネーク「君のスケートをもう一度、見たかった。」
グスタヴァ「あ、ありがとう…これ…ドアを開けるカード6よ。それから…ブローチ、使い方は…」
スネーク「使い方は?」
グスタヴァ「…あ、もうだめ。…フランク…」
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雪解けの時代を見ることなく、グスタヴァの身体は凍りつきました。
なす術もなくグスタヴァの最後を看取ったスネークの耳に、聞き覚えのある声が響きます。
「スネーク!!俺だ。…グレイ・フォックスだ!」
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FOXHOUND部隊に所属し、部隊における最高の称号「FOX」のコードネームを与えられた男。
スネークと共にアウターヘブンに潜入し、メタルギアと戦った偉大な戦士。
そのグレイ・フォックスがいま、新型のメタルギアに乗り込み、クレバスを隔ててスネークと対峙していました。
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フォックス「貴様にこの橋は渡らせん!!マッドナーは連れて行く。どうだ、スネーク?昔のよしみだ。ここは見逃してやってもいい。さっさとここから立ち去れっ!いいか…いますぐに…国へ帰れ!わかったな…」
目前でグスタヴァを失い、マッドナーを連れ去られたスネークは叫びます。
「フォックス!…俺はあきらめんぞ!」
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最後まで諦めるつもりはありませんが、根性でクレバスを越えることはできません。
ホーリーに助言され、タワービルからハンググライダーで滑空し、クレバスを飛び越えることにしました。
同じFOXHOUND出身のフォックスにも、その目論見はお見通しだったようです。タワービルのエレベーターと階段には多くの兵士が待ち伏せしていましたが、スネークはその全てを跳ね除け、屋上でハンググライダーを広げました。
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苦労して登り切ったタワービルからの滑空は、とても気持ち良いシーンです。
収容所に辿り着いたスネーク。
フクロウの鳴き声を聞いて夜だと勘違いする、急にアホになった兵士達の警備をすり抜け、ついにマルフとマッドナーを見つけます。しかし、
マッドナー「あっ!…スネーク。手遅れじゃ…たった今、息をひきとったよ。」
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マルフがうつ伏せで首にあざがあったり、マッドナーが横に立ち尽くしていたり、怪しさ満点です。
マッドナーが言うには、マルフはOILIXのデータをmsxのカートリッジに隠したようで、そのカセットの場所については、最後まで口を割ら…いや分からず終いだったようです。
スネークとマッドナーで、カセットどこだろうなぁと頭を悩ませてると、ジャーナリストでもあるホーリーから通信が入り、とんでもないニュースを聞かされます。
数年前、マッドナーはスネークによって救助されました。
しかし西側諸国は、二足歩行戦車というあまりにも突飛な兵器の役割を見出そうとはせず、その親であるマッドナーの居場所を用意することもなかったそうです。
そんな時ザンジバーランドは、二重スパイとして働くことの見返りに、メタルギア開発を援助するという話をマッドナーに持ちかけます。
ザンジバーランドはアウターヘブンから名前が変わろうとも、世界で最もメタルギアを欲していた国家です。
マッドナーは東西の最新科学の情報をザンジバーランドに流しつつ、メタルギアの改良を続けることにしました。
今回のマルフの件も、マッドナーが裏で手引きしていたらしいです。
マッドナー「スネーク。マルフから、いやグスタヴァから預かったマルフのロッカーの鍵を渡せ!!」
真相を暴かれたマッドナーはスネークに襲いかかります。
スネークに取り付き、羽交い締めにするほどの健闘を見せますが、さすがに特殊部隊隊員には歯が立ちません。マッドナーはスネークに一蹴され、力尽きました。
キャンベル「グスタヴァからもらったブローチはおそらく形状記憶合金だ。ブローチの温度を変えてみろ…OVER」
キャンベルの推察は正しく、居住区の冷蔵庫でブローチを冷やすと、不思議と溶けるように形が変わり、やがて鍵になりました。(温めると別のロッカーを開ける鍵になる。そのロッカーには、ヤケクソな性能のつよつよアイテムが入ってる。)
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ザンジバーランドの国歌が収録されていて、流すと敵が止まる。
ロッカーを体を突っ込む勢い(比喩ではないです。どゆこと?)で探すと…ちゃんとありました、カセット。文字通り、世界を変えるゲームがこの中に入ってるはず。
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残念ながらマルフの救出は叶いませんでしたが、OILIXをザンジバーランドの手から守ることはできました。
あとは…
マルフのロッカーから離れ、外に出ようとした時、先程倒されたマッドナーが最後の力を振り絞ってスネークに語りかけます。恨み節ではなさそうです。
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マッドナー「スネーク…奴がこのままお前を見逃すはずはない。あれを…メタルを使うはずじゃ。む、娘のエレンへのプレゼントじゃ。あれの破壊方法を…教えてやる。わしは心の中の東西の壁を越えることはできんかった…じゃが、娘は違う。東側に残してきたエレンのために…スネーク。」
メタルギアではなく一人娘の親として、マッドナーは語り出します。彼は、エレンがバージンロードを歩くことのできる世界の継承を、スネークに託しました。
マッドナー「装甲の薄い脚部にグレネードを…これ以外の方法では破壊できん。足に…グレネードを」
メタルギアの破壊方法を伝えられた時、足元のトラップが起動します。スネークは再び地下の奥深く、悪魔の巣食う地獄に沈んでいきました。
一枚の大きな扉の前に、スネークは立っていました。聴き馴染みのある声が、再びスネークの耳に入ります。
フォックス「スネーク!このメタルギアに破壊方法なぞないわ。おいぼれ学者のひとりよがりだ!」
スネーク「フォックスか?…どこにいる?」
フォックス「すぐ会えるさ、スネーク。正面のドアを通ってこい!」
導かれるまま扉を通ると、巨大な何かが動く、いや歩く音が聞こえてきます。
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「スネーク!俺も…このメタルギアも昔とは違う。本物の恐怖と敗北感を味あわせてやる!」
フォックスの駆る新型メタルギアが、機銃弾とミサイルをばら撒きながら突進してきます。
二本の足の隙間を縫いながら、スネークはグレネードを、ひたすら脚部に投げつけました。
ダメージが脚部に蓄積し、メタルギアの各部が爆音と共に砕け散りますが、スネークもその爆発に巻き込まれ、身体に炎が引火します。
フォックスは死に体のメタルギアから脱出し、炎の対処に追われるスネークからカートリッジを奪いました。
フォックス「スネーク!カートリッジはもらっていくぞ、焼け死ぬがいい!」
引火している全てのアイテムと武器を捨て、フォックスを追いかけた先で待っていたのは、四方を地雷で囲まれた小さな部屋でした。
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フォックス「FOXHOUND最高のライバル。俺はお前とやれる時を心待ちにしていた!」
スネーク「フォックス!貴様の腐り切った性根を叩き直してやるっ!」
フォックス「スネーク!フォックスの称号の貴さを思い知れ!」
二人の体が動き出した瞬間、情報屋のケスラーから通信が入ります。
兵器と傭兵に関する知識でスネークをサポートし続けていたケスラーは、フォックスについての情報もいつも通り教えてくれました。
古巣の先輩であるフォックスについては、知っていることの方が多かったのですが、ある1つの情報がスネークとプレイヤーを驚嘆させます。
彼の本名は「フランク・イェーガー」
その名前のせいか、10年前、彼は傭兵の世界で「ハンター」と呼ばれていました。
その頃彼には東側出身の恋人がいたようで、彼女の亡命を試みましたが、西側は彼女の受け入れを拒否します。
名前でお察しかもしれませんが、この「フランク・ハンター」の恋人こそ、彼が自らの手で殺めた女エージェント「グスタヴァ・ヘフナー」だったのです。
フォックスは彼女に気付いていたのか、もし気付いていたのなら何故…。そしてそもそも、何故スネーク達を裏切ったのか。
聞きたいことは山程ありますが、スネークとフォックスの間の対話は、純粋な戦闘技術のみで出力される真っ直ぐな拳だけです。全ての疑問に対する答えは、戦うことそのものなのかもしれません。
戦争という理不尽で非人間的な行為とは似ても似つかない、平等で人間的な闘いの末、一方の戦士が膝をつきました。
フォックス「スネーク…どうやらフォックスの称号をゆずる時が来たらしいな。」
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闘いという表現法を失い、狐の皮を削がれたフォックスは、フランクとしてスネークに全てを語ります。
フランクの人生は、生まれた日から今日この時まで、戦争に蝕まれ続けていました。
ある時はベトナムで迫害され、ある時はモザンビークで拷問され。
ビッグボスは、そんなフランクを地獄から解放し、戦士としての命を与えました。
フランクにとっての戦争は、自分を蝕むものから、生の充足を与えるものに変わっていきます。
平和でなければならない世界に、フランク達の居場所はありません。彼らを受け入れた場所は戦場だけでした。
フランクは戦争を憎みながらも、死が彼らを解放するまで闘い続ける道を選びます。
例えいつか、愛した女性の命を奪うことになっても。
フランク「スネーク…俺たちは戦うしか…戦うしかない。人を…まして、女を幸せにすることなんぞ…できやしねえ。」
スネーク「彼女のことか…」
フランク「俺にはダイイング・イン・アクションが似合いだ。」
スネーク「フォックス、安心しろ。俺は決してお前のようにはならん。」
フランク「その言葉…あの世へみやげに持っていく…うまくやれよ、スネーク。…ファンの期待を裏切るなよ。」
地雷原で無線連絡してきた匿名のファン。その正体はフランクでした。
ザンジバーランドの戦士として敗北することで、苦しみに満ちた戦場から解放されたかったのか、核と戦争による恐怖の世界を終わらせたかったのか、それともグスタヴァの待っている場所に行きたかったのか。
残念ながら、スネークを助けた理由を語るだけの時間は、もう残されていないようです。
フランク「俺のわがままの代償さ…先にいくぜ、スネーク。」
スネーク「一人じゃないぜフランク。向こうでグスタヴァが待っている。」
フランク「…グスタヴァ…」
フランク「…ありがとう…スネーク」
フランクの身体が爆発します。
スネークには、彼が向かった場所を知る由はありません。
恋人を隔てる東西の壁が、存在しない世界であることを、ただ祈るばかりです。
フランクが遺した形見、カートリッジを回収すると、一人の男の声が木霊してきます。
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「こっちだ、スネーク!」
メタルギアを破壊し、フォックスを倒した今、スネークを倒し得る敵は一人しか残されていませんでした。
肉声が吹き込まれていないテキストでも、誰が叫んでいるかは容易に想像できます。
この声に従うとたいてい碌なことにならなかったのですが、道は1つしかありません。
スネークは導かれるまま、声の主がいる部屋に入りました。
スネーク「ビッグボス…生きていたのか」
ビッグボス「スネーク…ようこそザンジバーランドへ…やはり戻ってきたようだな。私の元へ。」
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20世紀最高の軍人と呼ばれたビッグボスにとって、同じく戦場の希少価値であるスネークは、敵でありながらも近しい存在です。
ある意味では同志であり、技術を与えた息子とも言えるスネークに対して、ビッグボスは自らが目指した世界について語り出します。
彼が目指したのは、兵士が唯一生の充足を得られる世界でした。
戦争という市場で武力を売り込むことで利益を生み出し、その戦争の犠牲者を兵士として育て上げ、再び戦争を誘発する。そして新しい兵士達は、また次の利益と、犠牲者という名の人材を生み出していく…
国家や思想のためでも、利益や民族のためでもなく、戦うために戦う世界。それこそOILIXとメタルギアを使って実現しようとした、理想の21世紀だと言います。
戦争の為に戦うビッグボスに対して、スネークも自らの戦う理由をぶつけます。
スネーク「…俺の戦いはただひとつ。貴様から自由になるために、悪夢をはらうために…ビッグボス、貴様を倒す!」
ビッグボス「どちらが勝っても我々の闘いは終わらない。敗者は戦場から解放されるが、勝者は戦場に残る。そして、生き残ったものは死ぬまで戦士として人生を全うするのだ。」
スネーク「例外もある。俺は…人生を愛している。」
戦士でありながら戦う以外の人生を見つけるとファンに約束したので、ビッグボスの言葉通りになるわけにはいかないのです。
もし闘いが続くとしても、それは人を殺すための闘いではなく、戦士としての自分を変えるための闘いにしなければいけません。
ビッグボス「スネークっ!…今度こそ最後の闘いだ。一回きりの…こいっ!!」
ビッグボスとの最終決戦が始まりました。
平等な戦いのために素手で挑んでくれたフランクと違い、ビッグボスは自らの身体さえも機械化した、ガチ装備で殺しに来ます。
ですが裸一貫から最終兵器を破壊したスネークにとって、いつも通りの状況であることも確かです。
諦めず基本に立ち返り、敵から逃げながら少しでも使えそうなものを収集していると、初めて見るアイテムを2つ見つけました。
手に握られていたのは「百均のライター」と「塗装用スプレー」でした。
ライフルを乱射する機械人間相手に使うには、あまりにも心許ない組み合わせです。
しかし、ダンボールにすら幾度も命を救われているんです。絶対に役に立つはず。
ヤケクソでライターとスプレーを使ってみると…ビッグボスの身体が焼けてます。
噴射されたスプレーにライターの火が引火して、火炎放射器のようにビッグボスの身体を燃やしていました。
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ここぞというとき、1番頼りになる。
即席火炎放射器を何度か噴射すると、ビッグボスは炎に包まれて倒れ込みます。
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ビッグボス「スネーク!!まだだ…まだだ…スネーク…スネ…」
メタルギア同様、歩く兵器となったビッグボスの身体が爆発しました。
今度こそ、因縁と戦場から解放されたのでしょうか。
ビッグボスも倒したし、もう安全でしょう。ふー長かったぁ…文章にしたら13000文字を超えそうだなぁ…
「動くな!」
やばっ!油断した!
ホーリー「…ごめん。大丈夫…わ・た・し」
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あー、良かった…生きていれば会えると言いましたが、ビックリして死にそうでしたよ。
全ての任務を終え、ホーリーと合流したスネークは、無線機を使い回収用ヘリを要請しました。
スネーク達は、敵の警備を突っ切り、回収地点に辿り着きます。
ヘリはまだ来ていません。スネークは別にいいですけど、ブロンド美女を待たせるとは…なかなかいい根性してますね。
敵兵をホーリーから貰った銃で処理しますが、いくら倒しても湧いてきます。そしてついに、弾切れに。
万事休すかと思われたそのとき、四方を囲んでいた敵が消えていきました。
ホーリー「ヘリだわっ…助かったのよ!」
到着したヘリが、2人の周りの人払いをしてくれたようです。
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まあ、そういうことにしときましょう
スネーク「クリスマスに間に合うかな?」
ホーリー「まだ夕食には間に合うわ。スネーク」
スネーク「行こうか…キリストは逃げないさ」
2人を乗せてヘリは、20世紀を生きた戦士達の墓場、ザンジバーランドから飛び立ち、21世紀へ続く夕空の彼方に消えていきました。
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真っ黒な画面を背景に、エピローグが始まります。
恐らく合衆国に帰還したであろうスネークとホーリー、そしてキャンベルは、マルフ博士のカートリッジをMSXに差し込んでみます。
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逆さになっていますが、しっかり「KIO MARV」の文字が刻まれています。
架空の技術が記された中身を覗くことは叶いません。しかし、今自分が遊んでいるゲームと同様に、平和への想いが込められているのは確かなようです。
マルフ博士の最後の作品を確認したスネークは、キャンベルとホーリーを残し、姿を消しました。
「METAL GEAR 2」の主人公の役目を終えたスネークが、その後の人生で銃を捨てることが出来たのか、それとも闘争に縛られたままなのか。
この問いに対する答えを自分は知っていますが、それを語るのはまた別の機会にしましょう。
Debriefing
PS1で発売されたメタルギアソリッドを遊んだ方が、この作品を初めて遊んだとしたら、ビックリするんじゃないかなと思います。
この「2」、以降の作品の片鱗が見えるとかそういうレベルではなく、「2D版メタルギアソリッド」と言っても差し支えない完成度なんです。
カメラワークや生の声が加われば、「メタルギアソリッド」そのものです。
ストーリーに関しても、シリーズ屈指のキーパーソン、「グレイ・フォックス」や「ビッグボス」の非常に重要な物語が語られます。
「メタルギアソリッド」の中でも、回想として彼らとの激闘の記憶が語られたりしますが、それで終わらせるには余りにも勿体ない!
このnoteを書いたのも、簡単なあらすじだけでなく、ゲームプレイを含めた全体の物語を知ってもらいたいと思ったからなんです。
この作品、超重要なのに古過ぎてなかなか遊んでもらえないんですよね。
ライトなファンは「フォックスとビッグボスが出る」ぐらいしか知らないですし、濃すぎるファンは今更全体のストーリーを語ろうとしません。
ライトとヘビーの中間ぐらいの自分は、この作品をもっと知って貰いたいと思って、この文章を書き始めました。
少しでも役に立ったのなら嬉しいです。
「METAL GEAR 2 SOLID SNAKE」が発売したのは1990年。この時MSXの市場は終息寸前で、本作以降、コナミがMSX向けにオリジナルのゲームを発売することはありませんでした。
作中に登場するMSXカートリッジが、マルフ博士の最後の作品だったように、この「2」も、コナミの最後のパフォーマンスとなりました。
「2」はコアゲーマーの間で「幻の名作」として語られながらも、一般的な知名度は低い作品として終わります。
メタルギアの歴史を変えたのは間違いないですが、世界を変えたとまでは言えないかも知れません。
そして8年後。1998年9月3日。
「SNATCHER」、「POLICENAUTS」、「ときメモドラマシリーズ」を経た小島秀夫監督と共に、メタルギアが帰ってきました。
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世間からも隠れがちだったゲームですが、ついに、このスリルと緊張感が世界に知れ渡ります。
ゲーム史のターニングポイントの1つになった、シリーズ3作目。
名前は
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今書いてる地点で15540文字らしいので、次を考えるのが恐ろしいですが、気が向いたら書きます…
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
…
途中の暗号の答え↓
WIS.OhIO
この文字をデジタル文字に変換して、逆さまにしてみてください。
0140.51M
これがマルフ博士の無線周波数になっているんです。
今度こそ終わり!ありがとうございました!