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分化強化

 分化強化(Differential Reinforcement: DR)とは,望ましい行動や反応を増やして,望ましくない行動や反応を減らしたりすることです。

 分化強化には4つの方法があります。
①低頻度行動分化強化
②他行動分化強化
③対立行動分化強化
④代替行動分化強化

①低頻度行動分化強化(DRL: Differential Reinforcement of Lower rates of behavior)

 DRLとは,よく起こる問題行動の頻度を,望ましいレベルまで減らすために用いられます。

ある男の子が百マス計算で満点を目指していました。しかし,他のお友達がとても早く計算することができるので,教室で一斉に百マス計算を行う時は,慌てて計算してしまいます。すると,いつも百マス計算では,計算ミス(問題行動)がとても増えてしまいます。

 ここの例では,百マス計算を学級全体で行うことで,男の子は慌てて計算して計算ミスが多くなっていました。満点をとるためには,計算ミスがないようにゆっくり計算することが重要です。
 そこで,先生は男の子の計算ミスと計算時間の平均を計算しました。すると,計算ミスの平均は10個で,計算時間の平均は1分30秒であることがわかりました。
 先生は男の子に「百マス計算の1分30秒の時間内で,計算ミスを8個までにしよう。3回行って,平均が8個以下であれば,好きなシールをあげるよ。」と言いました。
 その後,男の子は計算ミスを平均8個にすることができました。先生は男の子にシールを与えて「次は,3回の計算ミスの平均6個にしましょう。それができたら好きなシールをあげるよ。」と言いました。このようにして,次は計算ミスを3個と徐々に減らしていきました。もし計算ミスが一つもない時は,先生はすぐにシールを与えました。
 最終的に男の子は計算ミスがなく,百マス計算で満点をとることができきました。また,自然と計算時間の平均も下がりました。男の子は落ち着いて計算することができたのです。

②他行動分化強化(DRO: Differential Reinforcement of Other behaviors)

 DROとは,問題行動が起こっていない時に,好きなもの・ことを与えて,問題行動を減らすために使われます。

小学校のあるクラスでは,授業への妨害行動が多く,先生は困っていました。先生は,タイマーを黒板の前に貼り付けて,5分間隔でセットしました。もし5分間で生徒が授業への妨害行動を起こした場合は,タイマーをリセットします。一方,5分間で妨害行動がなければ,ご褒美としてクラスの全員に1分間の自由時間を与えました。その1分間の時間は蓄積されて,授業の時間の最後に使われました。

 この例では,普段は授業時間に何度も授業への妨害行動がみられましたが,先生が5分間隔でタイマーをセットして,問題行動が起こっていない時に,生徒の好きな自由時間を与えていました。そうすることで,問題行動は徐々に減っていき,生徒は多くの自由時間を得ることができ,先生は授業に専念することができました。

③対立行動分化強化(DRI: Differential Reinforcement of Incompatible behavior)

 DRIとは,問題行動とは同時には起こることができない行動を増やすことで,問題行動を減らすために使われます。

 先生は授業中に離席が多い男の子の対応に頭を抱えていました。そこで,先生は男の子の離席を減らすために,男の子が着席してできる好きな活動を与えました。先生は,男の子が好きな活動に取り組めていたら「お!集中して取り組んでいるね。」と声かけをして積極的に褒めました。男の子は,着席して活動に取り組む時間が増え,離席する回数は大幅に減少しました。

 この例では,問題行動(離席する)とは同時には起こることができない行動(着席して好きな活動に取り組む)を増やすことで,問題行動が減少していました。

④代替行動分化強化(DRA: Differential Reinforcement of Alternative behavior)

 DRAとは,問題行動に変わる望ましい行動を増やすために使われます。

 いつも些細なことで口論する男の子と女の子がいました。授業で必要なグループでの話し合いの活動の時間に,男の子と女の子が口論になることで他の生徒が発言できなかったり,話し合いが進まなくなったりします。先生は,そのことでとても困っていました。
 口論が減らすために,先生は男の子と女の子に,協力してクラスのポスターの作成に取り組むようにとお仕事を与えました。2人はとても嫌がりましたが,2人で一緒にポスター作成に取り組んでいたり,作成に必要な物の貸し借りをしたりする際には,先生は褒め続けていくと,だんだんと協力して作成に取り組むことが増えていきました。
 ポスターの作成が終わった後,先生は授業でグループの話し合い活動を設定しました。すると,男の子と女の子は口論することなく,みんなと協力しながら建設的な話し合いを行うことができるようになっていました。

 この例では,問題行動(口論する)に変わる望ましい行動(協力して活動に取り組む)を増やすためにDRAが使われていました。

 この例以外では,問題行動の代わりに望ましい行動を教えて,望ましい行動が増えた時に褒めるといった方法もあります。

 授業中に,授業とは関係ない発言をして進行を妨害してしまう男の子がいました。先生は,この授業妨害の行動は注目してほしい行動ではないかと考えました。先生は男の子に,「授業中に,手を上げて先生を呼んでね。」と伝えました。
 授業がはじまると,男の子は「先生!」と言って手を上げて,授業とは関係ない話をし始めました。先生は,「お!手を上げて先生を呼んでくれたね。」と褒めて,「授業に関係ない話は授業が終わった後に教えてね!」と伝えました。
 授業後に,先生は「さっきは手を上げて先生を呼んでくれたね。次は,授業の内容について先生に話してみてね。」と伝えました。次の授業がはじました。男の子は,手を上げて先生を呼び,授業に関係する話をしました。先生は,その話について丁寧に対応して褒めました。その後から,男の子は,授業とは関係ない発言をすることはなくなりました。

 少し長くなりましたが,分化強化の例をたくさん上げて,内容を説明していきました。間違っているところがあれば,コメントお願いします。

 次は,タイムアウトについて解説したいと思います。

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カーイエ
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