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医療従事者はなぜ一度始めた人工呼吸器を中止できないのか?

このタイトルを見て胸が痛い方は多いと思います。
人工呼吸器の治療を開始したものの、治療効果なく抜管に至らない。特に患者が強いチューブ不快を訴えていれば尚更です。自分が提案して人工呼吸器治療を開始したものの、予想に反して臓器不全が悪化するなどの状況では、本当に正しいことをしているのか悩むことも多いでしょう。

こんな時に、ご家族から人工呼吸器の治療を中止したいと言われたらどうしていますか?

しっかり話し合った上で中止するという方もいると思いますが、シビアな話を避けたいがために無理やり気管切開や胃瘻増設後に転院させたり、一度始めた人工呼吸は中止できませんと説得したり、倫理委員会で合意が得られず家族の希望に添えないで終わってしまった方もいるのではないでしょうか?

このようなことは、その医療従事者のメンタルが弱いとか、病院(倫理委員会)の制度が悪いとか、そのような問題だけにとどまらないことがわかっています。
医療従事者の心理から考えると、つまり行動経済学に照らし合わせて考えると、上記のような行動をとってしまう医療従事者の背景が理解できるようになります。

この際に出てくるのが、行動経済学の考え方です。
人間は、本来合理的な生き物と考えられてきましたが、それだと説明のつかない非合理な行動をとることが何と多いことでしょう。このような非合理な行動の根拠となる心理的背景を説明した理論を行動経済学といいます。

行動経済学を使うと、非合理な行動に至ってしまう根拠がわかるので、これを避け合理的な判断を行うことができるかもしれません。
そして、自分だけでなく、患者や他の医療従事者の合理的な意思決定をサポートすることも可能になるかもしれません。

今回は基本的な内容として、デフォルトの考え方、nudgeの考え方を通して、身近にあるドナーカードで行動経済学の使い方の基本を示しとっかかりを掴んでいただいた後に、本題にあるような人工呼吸器の中止が難しいと感じてしまう医療従事者の心理的背景を行動経済学で紐解いていこうと思います。
興味ある方は、スライドを参考にしてください。きっと、面白いと思っていただけると思います。

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