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キラーチューンにのせて [0814日記]

レスリー・ヴァン・ホーテンが何をしているか、考えてしまう。90年代の映画に出ていた子役のその後を、深夜にネットで探す好奇心の延長だった。53年間服役した、マンソン・ファミリーのメンバー。半世紀のうちに激変した塀の外に慣れるため、1年間を過ごしたリハビリ施設を出所したのが今年の夏。窓から差す光が眩しすぎて目覚めた明け方、友人と別れて地下鉄に揺られる夜、頭の中には若い頃の彼女が浮かぶ。新しい暮らしをはじめたレスリーは、お気に入りの洗剤を見つけたのか、部屋でどんな曲をかけるのか。

郡上と白鳥の徹夜おどりへ連れていってもらった。浴衣を抱えて、友人が暮らす町まで駆けた。玄関扉を開けると、彼女の家族とチワワが扇みたいに登場した。知り合いの実家へお邪魔する機会があると、自分の中の100%の善を抽出した笑顔が現れて面白い。野菜をもたせてくれたお母様、私は公共料金の振り込みを何度も忘れる人間です。

はじめて会う人(明け方になってから、一度レコードショップで見かけていたことが判明)の運転で、夜が深まる道をずんずん郡上へ。かなり久しぶりに食べたアメリカンドッグが美味しかったこと、こちらの口角も釣られて上がる運転席からの笑い声の、記憶が鮮烈。

長い長い踊りの輪の内側で、手と足をひたすら動かした。曲の振りに慣れてくると、繭のような小さな世界で音楽と私だけの繋がりが生まれた。大勢の中で、強烈で心地よい孤独。左右を見渡せば友人たちが笑っていて、気づけば白鳥おどりをハシゴしていた。

朝がきて、菊地成孔のラジオが流れる車はスーパー銭湯へ。体は重いのに心は軽やかで、ぬるい浴槽に浸かりながら、またレスリー・ヴァン・ホーテンのことを考えていた。彼女は夜更かしした翌日、何を食べるんだろう。薄緑色をしたお湯の中で、左腿に入れた獅子舞と目が合った。

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シャバ太郎
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