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光の先の羽虫 [0812日記]

元恋人からもらった手紙、30通を捨てた。大阪から毎週末に送られてくる直筆の言葉は、暗闇を照らす確かな光だった。別れて1年が経ち読み返すと、羽虫がつくる長い列に変わっていた。便箋の上を行進する黒点たちに意識を向けすぎると、サッと集合して「これからもずっと一緒にいたい」と視界に映った。

正面から向き合ったら心が保たない。手紙の束を処分する作業中に流す、プレイリストをつくった。

「厄祓い-私はてめえの母親じゃない-」

共依存の先に、穏やかな「ずっと」はなかった。生きていても楽しくないと言う人を、私なら救えると思っていた。餅は餅屋。メンタルの不調には精神科。過去の甘い幻にはX JAPAN。

「紅だぁぁぁぁぁ!」

Toshiが叫ぶ、私は破く。お前は走り出す、私は破く。慰める奴はもういない、それでも私は破く。

縦に横に裂かれた便箋が、可燃ゴミの袋の底に積もった。落ちてゆく様子が雪のようで、綺麗だった。

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