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赤い輪の内側で [0805日記]

遠くの雷鳴を聞きながら昼寝をして、陽が落ちてから盆踊りへ。タイに縁があるお寺が開催場所だったので、バンコクのコーヒーショップで買ったTシャツを着て行った。浴衣の着付けをできないなりの、正装。表には店のロゴ、裏には唐突に日本語で「デモンの軌跡 出口裕弘」とプリントされている。

デグチヒロヒロを背負い向かった会場は、かなりストイックだった。屋台はひとつも出ていない。櫓の横に長机が設置されていて、紙コップに注がれた麦茶がずらりと並んでいる。1曲踊るたびに水分補給に並び、また輪へと戻ってゆく。

提灯から漏れる光で赤く染まった櫓に、そろりと近づいた。まずは盆・導師を見つける。踊りの輪をじっと観察すると、小慣れた動きをする人たちがちらほら混じっている。ボン・グルだ。指先までキビキビと動かしていても、所作が柔らかい。彼らを視界の端に固定して踊りはじめる。予想以上に曲へとついてゆける体に驚いた。

曲が終わり、机に吸い寄せられるようにして麦茶をグビッと飲んだ。次は春駒ですとアナウンスが流れると、周りの熱気がさらに高まった。シンプルな振り付けの繰り返しはそのままに、テンポがどんどんどんどんどんどんどんどん速くなってゆく。老若男女が踊り狂い、人間と獣の中間の目をしていた。

大きな達成感と一緒に、ミスタードーナツへ寄った。無性に甘いものが食べたい口だった。帰りの電車では、今夜流れた曲の振り付けを延々と確認していた。

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