隣の席のご主人
この前、村治香織さんのギター・リサイタルに行った時の話です。
開演時間が迫ってから、高齢の男性お二人が「あ、ここだここだ」とやってこられました
お友達のようでした。
高齢の方で、男性で、お友達でこんなコンサートに来られる方って、それほどいない気がしました。根拠はないですが。
なんか、そんな友達って良いなと思いました。
開演直前、暗くなりかけても話をされていて、最近そういうのが気になるものですから、「もう始まりますよ」とそこは言いたいところでした。
一部が終わって、休憩も半分くらいの時、お二人が「トイレに行っておこうか」と立ち上がられました、そして、お隣の方が私に「トイレ、すいていますか」と聞くのです。
トイレは男女で会場の右端と左端とに別れています。しかも私は一旦席は離れましたが、トイレには行っていません。男性トイレのことはわかりません。
「どうでしょうか。わからないです」とだけ答えました。
休憩時間が終わる頃になって、お二人は帰ってこられました。何も話さないのも不自然と思って、「間に合いましたね」と声をかけました。
その方は「混んでいましたわ。もう年だから、みんな時間がかかるんですわ」と気さくにお話し下さいました。私も、「そうでしたか。でも、間に合いましたね」と応えました。
終演後、スタッフの方がその方のところにやってきました。
「申し訳ありません。車椅子のご用意が必要だったのではないでしょうか」
「いや、良いんです。家内と来るなら車椅子がいるんだったのだけど、来られないから友達に来てもらいました」
聞くつもりもなく聞いてしまった話です。
奥様がどんな方か存じ上げないです。でもこういうところでは車椅子が必要な奥様とコンサートに行くご主人。なんてステキ。勝手に想像して、きっとやさしいご主人なんだろうなと思いました。
ベージュのスーツをカジュアルに着ておられるそのご主人と、誘いに「いいよ」と乗ってくれる友達と。こちらはひとりでしたので、「連れがあるのって、やっぱり良いな」とも思ったのでした。
村治香織さんも、とても魅力的な方でした。
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