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「悩みのるつぼ」に回答します。

朝日新聞 2月18日(土)別刷り be
人気コーナー「悩みのるつぼ」です。

 今日の悩み。「母の晩年が哀れに思えて・・・」

88歳の母親が、父親を見送った後、どんどん老いていっている。
朝、椅子に座ったきり動かない。
トイレも間に合わない。

若い頃の母は明るく子どもたちを愛情深く育ててくれた。
やってもらうよりやってあげたい人。

自分の姿を認められずに苦しんでいるようだ。

「早く死ななきゃ」とネガティブなことばかり言うので、
相談者の娘さんは本当に悲しい。

憂鬱な日々を過ごしている母が哀れに思える。
自分の一生を肯定して閉じて欲しい。

といった相談内容。

回答者は姜尚中さん(私の好きな!)
姜さんは答えます。

・悩みは本質的。「生きる意味」の根源に関わる難題。
・「死」という永遠のテーマと裏表。
・イメージしてもらいたいのは、人間の誕生と終わりの境遇。

・お母さんは自分が無様でふがいなく、「年老いた赤ん坊」に見えて嘆かわしいのでは。
・それは元気な頃の自分の姿と比べているから。
・家族も、たくましい母親と現在の姿のギャップに当惑している。

・歳を重ね、人生の終わりを迎えることは、文字通り「赤子」に戻ること。
・赤子は人の助けがなければ生きていけない。

・これからお母さんの介護をどうしていくのかは、要介護認定の問題も含めて今後の課題。
・みんなで話し合って、現行の制度と家庭の事情を勘案して決めたらいい。
・人間はみな「老いたる赤子」になるというイメージを持てるかどうがカギになる。


【私】
いったん、姜さんの答えをおいておきます。

ここまで、まさにその通りと思います。

歳を取って思うように動けない。
夫は亡くなり、親しい人も亡くなっていく喪失感。
子どもも、そんな親の姿が歯がゆい。

 よくそういう方々に出会います。

 姜尚中さんの答えも、この難しい問題を優しく受け止め、
今できることを示してくださっています。


「深い孤独と絶望の中で、死の間際、光を見いだした」
というトルストイの短編の登場人物イワン・イリイチ。

 「その光のイメージをお母さんも心に思い描くことができれば
 少しは慰められるのでは」
と書いておられます。

  この短編は読んだことがないのですが、
そう、絶望の中のかすかな「光」ですよね。
高齢者の方は八方塞がりのなか、「希望という光」がないことがよくあります。

 ちょっとでも光が見えたらほっとします。

 その「光」というイメージをどうしたら持てるか。

 姜尚中さんは、人間はみな最後は「老いたる赤子」と言っておられます。


 年を取った今の自分は自然なことで、嘆き悲しむことはない。
つまり、「自分の今の姿を受け入れることができるか」
と言っておられると思います。

 ここが肝心だと思います。
老いた自分の姿、親の姿を受け入れることができるかなんですね。

 ここからちょっと私が言いたいこと。
「人間最後はみな老いたる赤子」
確かにそうなんです。
今の状態を認めること。そうすると気持ちが楽になると思います。


でも、その方の生きてきた歴史は、燦然と輝いてそこにあるのです。
その歴史の延長上に年老いた姿がある。

何を言いたいかというと、
誰もが、その歴史を忘れないで欲しい。認めて欲しい。

もちろん、姜尚中さんはそのことも含めて、赤子と言っておられると思います。
でも、少しだけ補足したいなあと思ったので、
余計な一言を書きました。


 さあ、ここからがケアマネジャーの出番です!

姜尚中さんも、
「今後のことはみんなで話し合って現行の制度と家族の事情を勘案して決めていけばいい」
と言って下さっています。

  そうです。介護保険があります。それ以外の地域の資源もあります。

  ご本人の思いを受け止めて、
これからどのように暮らしていきたいか一緒に考えるのがケアマネジャーです。


 そう、そうです。
大事なのは、「ご本人の思いを受け止める」と言うことです。

 大事な人が亡くなってつらい思いをしているなら、「つらいね」
 思うように動けず歯がゆい思いをしているなら「歯がゆいよね」

 本人の思いをそのまま受け止める。
そうすると、ご本人も、自分の思いをわかってくれる人がいるということで、
気持ちが楽になることがあります。


 ご家族はご本人に元気になってもらいたいから、
つい、励ましてしまうのです。
(それはある程度仕方がないこともあります)


 そしてその次は、その方の居場所や、これならできるという役割を作る。
きっと今より元気になります。

 そんなにうまくいかないとは思います。
きっとその方のケアマネさんも一生懸命されていると思います。

  でも、一緒にいてくれる人がいます。ご家族もいます。
相談者のお母様も、それに気がついて、
自分の人生を誇りに思い、今の自分で良いんだと思う。
そして、もう少し生きていても良いかなと思ってもらたらいいなと思いました。


  すみません、職業柄なもんで、エラそうなことを長々と書きました。
姜尚中さん、好きです!(また告白してしまった)

画像は、保育園の壁。

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