ジュンパ・ラヒリ『思い出すこと』中嶋浩郎訳
見えてはいるが、誰も見ていないものを見えるようにするのが、詩だ。
詩人・長田弘のこの言葉が、真っ先に思い浮かぶ。
インド系アメリカ人でピューリッツァー賞作家でもあるジュンパ・ラヒリが、イタリア語への憧れを満たすために40代でイタリアに移住する。その動機やことばへの接し方をイタリア語で執筆したのがエッセイ集『べつの言葉で』。イタリア語への習熟と生活への親しみを、孤独を愛する女性を主人公にして著したのが長篇小説『わたしのいるところ』。3年のイタリア生活に一区切りをつけ、1年の