[SF小説]人工世界 ‐ The artificial world ‐ 5
僕は次の獲物を探した。
「いた。」
炎の中で立ち上がり、敵である我々を撃ち抜こうと銃を構えている。しかし全ての弾が熱で暴発した後だ。動作がゆっくりでどこか滑稽だが、それがまたロボットらしさを醸し出している。
「もらった!」
h2000の後ろに回り込み、首にレーザーライフルを当て、引き金を引く。頭部からの信号が途絶えた身体が、制御を失って崩れ落ちる。トラックが燃えた時点で敵は丸腰だ。僕達は無抵抗のh2000を次々と破壊し、全滅させた。
「さすがレンだな」
VRヘッドセットを外しながらハルトは言った。
「いやハルトには及ばないよ」
ハルトは自分の操作をしながら他のh2100の攻撃承認をしているのだ。
「僕には同時にいくつもの画面を監視することなんてできないよ」
「え? 監視なんてしてないけど?」
ハルトはキョトンとした顔でこっちを見た。
「自律型致死兵器システムは禁止されてる、とか言ってなかったっけ?」
「あぁそういうことか」
ハルトは頭をポリポリ掻きながら言った。
「俺が許可を出したのは初めだけだ。あとはh2100がオートパイロットでやってる」
「それって自律型致死兵器システムってことにならないの?」
ハルトは言いにくそうに言った。
「厳密にはそう......だな。ただ、戦闘の開始のときに俺が許可を出してる。それから、引き金を引く1秒前には許可を出した記録が残ってるはずだ。」
それって......
「それって条約違反じゃないの?」
「まぁな。でも負けたくないんだろ? 例え人が戦闘で死ななくたって、戦争で負けたら大きな損失だ。それが原因で職を失って死ぬやつだっている。これが戦争ってもんなんだよ。たぶん。」
「これが戦争......」
条約すら骨抜きになる無法地帯。これが戦争ってことなのか。
「さぁ、帰ろう」
ハルトは伸びをした。
「あーつかれた。やっぱり実戦は肩の力が入るな」
「そうだね。やってることは変わらないはずなのにね」
言いながらハルトより先に階段を上がり、ふと見上げると、そこにはさっきまで戦っていたh2000が立っていた。
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