[SF小説]人工世界 ‐ The artificial world ‐ 8
「聞いても良いですか?」
「なんでしょう」
「ウォーリーはどこへ行ったんですか」
メイは少し考えた。
「緊急召集とおっしゃっていたので、国家防衛本部でしょう。仮想空間防衛隊の隊長ですから、忙しいんです」
案内するって言うからてっきりウォーリーが案内してくれるのものだと思ってたんだけど。それに隊長なら隊長って言ってくれればいいのに。いずれにしても僕は今後ウォーリーの下について働くことになるのか。
「それで?」
メイが言った。
「しばらくこの仮想空間防衛隊本部で生活することになりますけど、大丈夫なんですか? 家のこととか、ご家族のこととか」
「大丈夫です。家は小さいけど持ち家ですし、家族は誰もいないので」
両親は小さいときに事故で死んでしまったし、引取ってくれたおばあちゃんも病気で死んでしまった。家族がいないというのは寂しいことのようだが、こういうときには便利だ。
「あら、そうなんですね」
気を使わせてしまったのか、メイは話を切り上げた。
その後は居住スペース、h2100や飛行機が並んだ格納庫、研究棟、司令室、を案内され、訓練室に辿り着いた。宇宙空間防衛隊本部跡に作られた部屋ということで、大量のゲーミングソファが設置された横にロケットや人工衛星の模型が並んだ棚が残されていた。
「広いですね」
「ここは訓練室とオペレーティングルームを兼ねてるんです。最大で100人が同時にダイブできます」
「100人も… 回線落ちとかしないんですか?」
「回線落ちですか? しませんよ。一国の安全がかかってるんですから」
メイは笑い飛ばした。やはり国防となるとスケールが違うんだな。
「それでは、おかけください」
僕は促されるままにゲーミングソファに座った。
「ダイブします。準備は良いですか?」
メイはこちらを真剣な眼差しで見つめた。
「訓練ってことですね!? 良いですよ」
ヘッドセットを着けながら、コントローラーの電源をオンにする。僕はまたいつものように、ダイブした。
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