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【実話怪談】見えないものの感触

私が二十代の頃の体験。良く金縛りにあっていた。

 夜勤の仕事をしていた為に昼夜逆転の生活が続きつかれていたという事もあったのかもしれない。

 大体が寝入りばなだ。頭がジーンとなったかと想うと、身体が動かなくなった。どれだけ力を入れても身動きが取れなくなった。

 それだけではない。暫くすると身体に手の感触がするのだ。

 しかも、掌で身体をトントン……と押している。そちらに目線を向けられるわけではないので見えている訳ではないが、感覚としてその様に感じられる。

 そこからそれが少しずつ動いていく。例えば左の脇腹あたりから始まり、腹、胸、右脇腹という風に掌で押される感触が移動していく。

 そして、その掌の感触が増えていくのだ。

 左の腰辺りに感触を感じると同時に、右の胸辺りにも掌で押される感触が同時に起きる。そこから、掌はどんどん増えていき、終いには七、八本の掌にトントントントントン……と、体中を押されまくる。

 こんな事が何度も起きるようになってきた。

 始めは怖かったが人というのは不思議なものでそんな事にも慣れていくので、金縛りが起きても恐怖を感じる事は殆どなくなった……のだが。

 金縛りが起きて掌に押されるという現象について、一つだけ、嫌な事があった。

 それは、押されている間中。くすぐったいのだ。

 でも、身体を動かすことはできないから耐えるしかない。

 それが起きている間「嫌だな。くすぐったいな」と想い続けているという状況が続いた。

 今では、そんな事も起きなくなった。が、あの見えない掌に触られていた時の「くすぐったい」感覚。それだけは妙に生々しく覚えている。

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