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外食産業の食品ロス削減「mottECO(モッテコ) FESTA2024」参加レポート(後編)

こんにちは。今回は7月29日に開催された食品ロス削減イベント「mottECO(モッテコ) FESTA2024」に参加した様子をお伝えします。後編では、会場のブース展示で特に注目を集めた食品ロス削減の取り組み3つをご紹介します。

公益財団法人流通経済研究所
上席研究員 石川 友博
研究員 寺田 奈津美

中編はこちら👇


ブース展示の注目企業紹介

 当日、会場ではmottECOの取り組みに参加している企業や大学等の関係団体がブースを出展し、自社や自団体の食品ロスの取り組みを紹介していました。中でも、特に注目された3つのブースをご紹介します。

◆注目のブース①:トリドールHD

 丸亀製麺などの多業態の飲食チェーンを運営するトリドールホールディングスは、環境負荷低減に向けて食品ロス削減、食品リサイクル、プラスチック使用量削減に取り組んでいます。
 その中でも食品ロス削減の取り組みでは、茹で麺管理表を活用した麺の廃棄削減や、フードロス削減アプリを利用した廃棄削減、そして今回のmottECOコンソーシアムへの参加などを行っています。
 ブースでは、そのほかにもサステナビリティの取り組みとして、国内外食業界初の『ZEB※』認証を取得した省エネ店舗、鈴鹿店の取り組みや、自社のサステナビリティの取り組みをイラスト付きでわかりやすく紹介したトランプなども展示されていました。


※Net Zero Energy Building(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の略称で、快適な室内環境を実現しながら、建物で消費する年間の一次エネルギーの収支をゼロにすることを目指した建物のこと。

トリドールホールディングスの環境負荷低減の取り組み
自社のサステナビリティの取り組みを説明したトランプカード
「ZEB」認証店舗・鈴鹿店の環境配慮の取り組み

<研究員コメント>
 トリドールホールディングスは、mottECOの取り組みだけでなく、食品ロス削減を含むさまざまなサステナビリティの取り組みを行っており、それがトランプ53枚分にも及ぶということに驚きました。トランプにイラスト付きでわかりやすく紹介することで、消費者や従業員などのステークホルダーに自社の取り組みを広め、企業価値の向上につなげることができます。さらに、トランプで遊ぶことで、大人から子供まで楽しみながら社会課題とそれに対する取り組みを学ぶことができるため、会社にとってもステークホルダーにとっても素晴らしいアイデアだと思いました。

トリドールホールディングスのサステナビリティについて詳しくはこちら👇

◆注目のブース②:お茶の水女子大学

 お茶の水女子大学では、生協食堂の昼食営業での売れ残りをお弁当に詰め、「OchaEco弁当」として限られた時間に限定数量で販売し、食品ロス削減に取り組んでいます。今回の展示では、その取り組みの効果検証の結果が紹介されていました。
 検証結果によれば、OchaEco弁当の売上と(食材をOchaEco弁当として販売しなかった場合に)想定される廃棄コストを合わせた金額が金額的効果として考えられます。具体的には、5月が49,680円、6月が96,004円、7月が99,876円となりました。また、利用者の満足度も高く、内容満足度が77.9%、価格満足度が88.8%と評価され、今後の購入意向も「ぜひ購入したい」と「まあ購入したい」を合わせて98%という結果でした。このような結果から、「OchaEco弁当」の取り組みは食品ロスを削減しつつ、経営面でも利用者にもメリットがあるwin-winの取り組みであると言えます。

お茶の水女子大学「OchaEco弁当」の販売による食品ロス削減の実施概要と効果について

<研究員コメント>
 大学食堂での食品ロス削減の取り組みが、廃棄コストの削減と収益の観点から定量的に測定・評価されているだけでなく、利用者の満足度や生協職員の視点での評価も行うことで、金額上のロス削減効果だけでなく、取り組み自体の質的な向上にもつなげようとしている点が注目されます。
 今回の結果として、食品ロス削減と収益向上の両方が確認されたことから、今後もこの取り組みが続けられることが期待されます。また、今後は、今回挙げられた、「お弁当の中身が健康面に配慮できていない」点や、「お弁当の容器がプラスチックであり、環境に配慮できていない」といった課題の改善にも挑戦していただきたいと思いました。 

◎お茶の水女子大学では、2022年に設立したSDGs推進研究所を中心に、食品ロス削減をはじめ、SDGs実現に向けたさまざまな取り組みを行っています。

お茶の水女子大学のSDGs推進研究所ホームページ👇

◆注目のブース③:山形県鶴岡市の規格外農産物を使ったコールドプレスジュース「OOS」

 株式会社カクギンは、山形県鶴岡市の規格外の野菜や果物を使用したコールドプレスジュース「OOS(Out Of Standardの頭文字)」を販売し、食品ロスの削減に取り組んでいます。また、ブースでは「農家をアーティストに」というコンセプトのもと、規格外農産物をポストカードなどのアート作品として新たな価値を見出す取り組みや、規格外農産物の食品ロス問題についてかるたで紹介し、関心を持ってもらうきっかけを提供する取り組みも紹介されていました。

コールドプレスジュースの説明パネル(左写真)と
コールドプレスジュース(右写真上)、規格外農産物のポストカードやかるた(右写真下)

<研究員コメント>
 実際に規格外の野菜や果物を使ったジュースを試飲させていただきましたが、素材の甘みがぎゅっと詰まっていて、とても美味しかったです。
 また、規格外農産物をアート作品として生まれ変わらせる取り組みは、単に食品ロス削減だけでない、新たな価値づけをしている点で、非常に独創的な取り組みだと思いました。「農家をアーティストに」というコンセプトを通じて、消費者にその農産物を生産している農家の方の姿を想像させることで、「農産物が作られる過程で規格外農産物が発生し、それが捨てられている問題がある」という全体のストーリーを伝えることができます。これにより、消費者に規格外農産物やそれを使った製品の価値をより効果的に訴求できると感じました。 

「OOS」について詳しくはこちら👇

まとめ

 今回の「mottECO(モッテコ) FESTA2024」に参加してみて、こうしたイベント形式での発信が非常に効果的であり、さらに、同じ目標を持つ企業や団体との交流の場にもなるというメリットがあるとわかりました。今後、mottECOの取り組みに賛同する団体が増え、さらに普及することを期待しています。
 
  食品ロス削減に限らず、気候変動や地域課題などのさまざまな社会課題は、1社だけの取り組みでは解決できません。他の分野でも、企業や自治体などが協力し合い、その輪を広げていく取り組みが増えると良いと思います。また、その取り組みを消費者に知ってもらい、社会課題の解決に取り組む企業を評価し、選ぶようになってもらう必要があります。そのためにどのような方法があるのか、私たちも探っていきたいと思います。

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