物流とサプライチェーンの革新~講演内容、まとめました「流通大会2024」<2日目>
こんにちは。「流通大会2024」2日目は、物流の2024年問題が注目されている、サプライチェーンをテーマに開催しました。初日講演に続き、講演内容のポイントを研究員がご紹介します。
まとめと一言:公益財団法人流通経済研究所 主任研究員 三坂昇司
講演の概要
1.「物流の2024年問題」等への対応について
経済産業省 商務・サービスグループ 消費・流通政策課長/物流企画室長
中野 剛志 氏
冒頭では「物流の2024年問題」について触れられました。いよいよその2024年を迎え、業界を上げての取り組みが注目されている中で、この「物流の2024年問題」は2024年が過ぎれば解決する一過性の問題ではなく、年々悪化していく物流の構造的な問題で、改めてその問題に目を向ける必要があることの重要性が指摘されました。
講演内では、経済産業省の具体的な取り組みとして以下のポイントが述べられました。
①労働時間の規制の運用
2024年4月より、トラックドライバーの時間外労働の上限規制が適用されることに伴い、物流需要がさらにひっ迫されることが懸念されています。
講演内では、業界への影響や地域への影響などのデータをもとに、その運用に向けた取り組みが紹介されました。
②法制化に向けた流れについて
事業者として問題の危機意識がありながら、事業者単独ではこの問題への対応が難しいことから、実際の取り組みができていない点も問題として存在しています。政府として取り組むため、2024年の通常国会へ提出に向けた具体的な方向性が紹介されました。
③経済産業省の支援策について
この問題について、法律によって事業者を規制するだけでなく、投資が必要な分野であることに対応し、事業者に向けて政府が準備している支援施策についてご説明いただきました。
※詳しくは政府発表の資料にて公開されている情報をご確認ください。
2.2024年の物流・サプライチェーン重点戦略
公益財団法人流通経済研究所 専務理事
加藤 弘貴
2024年は「物流の2024年問題」を一端として、物流政策が大きく動き出す年となります。生産年齢人口の減少を考慮すると、2030年以降さらに深刻化することが想定されるため、今後数年内に対応を完了できるよう、取り組みを加速させる必要があると提言が行われました。
経済産業省及び国土交通省が主催する「フィジカルインターネット実現会議」に対応し、経済産業省、一般財団法人流通システム開発センターおよび公益財団法人流通経済研究所が2011年から取り組む「製・配・販連携協議会」では、現在以下の4つワーキンググループを設置し、活動に取り組んでいるとのことでした。
①商流・物流におけるコード体系の標準化(商品マスタ、事業者マスタ等)
②物流資材の標準化および運用の検討
③物流の効率化の妨げになっている商習慣の検討
④データ共有による物流効率化
講演では、個々のワーキンググループでの具体的な取り組み内容について紹介されました。
3.日用品メーカーのロジスティクスEDI構想について
ライオン株式会社 サプライチェーン企画本部副本部長 兼 ロジスティクス政策部長
木村 忠彦 氏
日用品メーカーの物流効率化に向けた先進的な取り組みとして、同社の共同物流に向けた取り組みについて紹介されました。
同社はこれまでも、効率化によってコストを下げる取り組み(主に90年代)から、環境への配慮が加わり(主に2000年代)、その後事業継続リスクや社会課題の取り組みの必要性から他社との取り組み(主に2010年代)に進化させてきたとのことです。
今後の取り組みの方向性として、①「SDGs・ホワイト物流の実現」、②「物流クライシスへの対応」の2つの視点についてデジタルトランスフォーメーションによって取り組む方針であるとのことです。
講演の中では「ロジスティクスEDI構想」「ASNを活用した効率化の取り組み」など具体的な取り組みについて紹介され、資材類のコストや作業時間の削減等の成果を確認しているとのことです。
4.スーパーマーケットの商品調達・物流施策の取り組み
株式会社ラルズ 専務取締役 兼 株式会社アークス 執行役員
松尾 直人 氏
アークスグループでは、「ゆとり物流」という考え方のもと、荷主が配送業者の意見を聞くということを徹底して取り組んでいることが述べられました。
直近の課題として、「物流の2024年問題」には、配送業者も含めた定期的なミーティングを開催し、対応済みであるとのことです。具体的には、物流の波動への対応、店舗納品の接車時間30分の厳守、納品リードタイムの延長、積み残し物量の後回し納品などを実施したとのことです。
今後も配送効率化に向けた対応として、モーダルシフト推進、店舗事情を加味したダイヤグラムの策定など、作業改善への対応としてマテハンの小型化や店舗作業の効率化など非常に多岐にわたる取り組みについてご報告いただきました。
講演を通じて、同社が現場とのコミュニケーションを重視し、主体的に取り組む姿勢が伺えた講演でした。
<注>
「研究員からの一言」は、筆者がリアルタイムで聴講した内容をもとに記述しています。聞き間違いなどを含んでいる可能性がある点にご留意ください。また、「感想」の内容は筆者個人のものです。
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