Yngwie Malmsteen「rising force」
トレンドとは全く違うことを。
ロックギターは3度革命を起こしている、ジミヘンドリックスの登場、エディヴァンヘイレンの登場、そしてイングヴェイマルムスティーンの登場だ。
エディヴァンヘイレンのギタープレイはロックギターの演奏レベルを上げたが、イングヴェイマルムスティーンは更にもう一段レベルを上げたと思う。
テクニックは勿論だが、彼はクラシックに影響を受けていることだ。
ロックギターにクラシックの要素を取り入れたギタリストにリッチーブラックモアがいたが、イングヴェイがストラトキャスターを使用しているのはリッチーブラックモアの影響がある、が、リッチーブラックモアはペンタトニックスケールを基本としている。
しかし彼はロック的なスケールを一度放り出した。
影響を受けたのはロック系のギタリストではなく、クラシックの作曲家、演奏家達だ。
バッハ、ヴィヴァルディ、パガニーニ、チャイコフスキー、モーツァルト、「バロック音楽」と言われるものだ。
そして彼はヴァイオリンの技術をそのままエレキギターに導入した、確かに彼以前のギタリストにそういった人はいなかったと思う。
速さの基準とテクニックが跳ね上がり、ハーモニックマイナースケールやディミニッシュスケールのスウィープアルペジオの多様が見られた。
そして彼は「ネオクラシカルメタル」と言われるジャンルを生み出したのだった。
シングルコイルから生み出されるフェンダーストラトキャスターの彼のプレイは(当時)「クリスタルサウンド」とも言われた、特に初期の作品はギターの音が歪んではいるのだが、沢山音を詰め込んでいるにもかかわらず一つ一つの音の粒が綺麗に揃っているのが聴こえる。
80年代のメタル系のギタリストでシングルコイルのストラトキャスターを使用していたギタリストはあまりいなかったような気がする、殆どのギタリストは歪みを出す為にパワーを増強させた「スーパーストラト」を使用していた。
「rising force」という作品をリアルタイムで聴いた
人はかなり衝撃を受けたと思う、今までのロックギターのスタイルと別次元だった筈だ、テクニックの面でもエディヴァンヘイレン以上だったし、クラシックの要素をここまで取り入れたのは彼が初めてだろう。
今までクラシックやジャズにテクニック的に遅れを取っていたロックギターだったが、彼の登場で演奏レベルは数段上がったのである。
イングヴェイはロックギターに革命をもたらした、が、しかし90年代に入るとグランジロックの影響で、テクニック主体のヘビィメタルは「ダサい」というレッテルを張られるようになった。
特にイングヴェイが生み出した「ネオクラシカルメタル」というジャンルは過去のものとなってしまい、メインストリームから完全に消えてしまった。
イングヴェイ本人は「そんなことはどこ吹く風か」と言わんばかりに今だに「ネオクラシカルメタル」を貫いているが、時代によってスタイルを変えるような人間ではないのは彼を知っている人ならわかるはずだ。
しかし最近の彼の作品は従来のファンにもあまり支持されていない感がある
「手癖フレーズのオンパレード」
「サウンドがデモテープ以下」
「自分で歌って予算をケチっている」
等…
自分はそこら辺についてはコメントできないが…90代にリリースされた「seven sign」はハードロック、メタルの名盤だと思うし、「alchemy」はイングヴェイらしいネオクラシカルメタルで良いとは思ったが。
最近リリースされた作品も周りがけなすほどではないと思う、飛び抜けていいというわけではないが、自分はたまに「エレキギターの速弾き」が聴きたくなる時があり、彼の作品を聴いたりする。
彼のヴォーカルはどうだろう…現在ではヴォーカルを兼任することが多いが、予算をケチっているわけではないと思うが…まぁ別にメガデスのデイヴムステインも上手いわけではないし。
確かに今の彼には「rising force」に収められているような曲は作れないかもしれないが。
しかしその時の彼のギタープレイを聴いた世界中のギタリスト衝撃を受けたのだった。
この作品の「black star」「far beyond the sun」「イカルスの飛翔」は必ず聴いてほしい、クラシックの壮厳な感じ、緊張感、メロディが上手く融合している。
1984年作品。