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社長にブレーキをかけることも社労士の大事な仕事
労務専門の社労士の多くは、お客様が企業であり経営者となります。
企業から報酬をいただいている以上は、お客様の役に立つように、情報や助言、サポートを提供します。
とはいえ、外部の専門家の立場として、社長の意に沿わない助言を行わないといけないケースも多々あります。
私はその都度、結構神経をすり減らすのですが
その伝えづらいことをどのように社長に伝えるかという点が、社労士の特徴を分ける大きなポイントになるのだろうと、個人的には感じています。
社労士が社長にブレーキをかけるシーン
①社長が感情的になっている
おもに従業員とのトラブルが発生したケースです。
色々な経緯があって、社長自身が従業員に対して感情的に「許せない」という境地になってしまうと、社長はもう「とにかく早くその従業員に会社を去ってほしい」ということで頭がいっぱいになってしまいます。
事の経緯について全部相談を受けていると、社労士である私も「それはひどい」と社長の気持ちに共感することも多くあります。
とはいえ、当該従業員を即解雇できるかどうかはまだ別の話で、強引に解雇に持っていくことで更なる紛争に発展し、それにより社長にまた大きな心身の負担を負わせることにつながるリスクも、見え隠れします。
社労士としては、そのリスクをどうにか社長に伝えないといけないのです。
ー感情に寄り添い、やるべきこととリスクを助言する
こちらの記事にも書いたのですが、感情が高ぶっている社長からの相談は、まずは膿を出し切ってもらえるようにとにかく話を聴くようにしています。
私の経験上、この「話を聴く」ことをすっ飛ばしていきなり法律論で諭すか、まずは感情に寄り添うかで、意に沿わない社労士の助言を社長が冷静に聞いてくれるかどうかが左右されるように思います。
もちろん、最終的な決定権は社長にありますが、その最終決定をしていただくためにも、リスクはきっちりお伝えするようにしています。
②事の重大さを認識していない社長の「大丈夫っしょ?」
例えば、よそから助成金の話を聞いてきて、私に「この助成金使える?」と聞いてこられたパターン。
私は詳細を見て要件を満たしていないと判断しているけれど、よそから持ち帰った情報から「いやいや、それくらい大丈夫っしょ?」と申請を押し通そうとするケースにも稀に遭遇します。
今はYoutubeで簡単に大まかな情報収集も出来ますし、業界の繋がりでこういった「聞きかじり」の情報を得て来られるようです。
でも助成金には本当に要件が細かいですし、軽い気持ちで申請することは会社にも社労士にとってもリスクが高すぎます。
助成金以外のケースでも、社長自身の感覚で「これくらい大丈夫っしょ?」と言ってこられて社労士が困ってしまうというケースに遭遇することがあります。
何でもかんでも法律論で完結するわけではありませんが、やはり中には「それはリスクが高すぎる」と判断して仕方ないケースもあります。
そのような場合は、やはり社労士の立場としては事の重大さを認識していただくための説明をしなければなりません。
ーなぜ、それがだめなのか根拠やリスクを示す
しかし単に社労士が「それはダメです」とだけ伝えても、社長は何がだめなのか分かりませんし、自分がバッサリ否定されているような気にさえなってしまいかねません。
もしかすると「この社労士、仕事したくないだけでは?」と思われてしまう可能性すらあります。
実際に、私もお客様からキレ気味に「そんなに細かいの!?」と詰められたこともあります。
そこで、それはダメだと判断した根拠となる法律条文や行政の資料、支給要領を提示し、さらには実際に処分・事件化された事案のネット記事を提示するなどして注意喚起することもあります。
「こういうリスクを負っていることなんですよ」ということを、きちんと伝えて、なんとか理解してもらうというのも、社労士側にとっても結構大変な役割だと思っています。
私はこういったケースに遭遇する都度、胃がキリキリ痛みます。
以上、ご参考いただければ幸いです。