アクアポニックスで食べていけるのか? ~500平米でできる現実的な農業経営のすべて~第2部:設備投資の実際とその内訳
「えっ、これだけかかるんですか?」
見積書を見た田中さんは、思わず声を上げました。栽培システムと魚槽システムを合わせて、1,100万円。さらに、運転資金として200万円は必要だと言います。
確かに、大きな金額です。しかし、これは決して高すぎる投資ではありません。
設備の中身を理解する
例えば、栽培ベッドの中心となるNFTシステム。一見、単なる樋のように見えるこの設備、実は精密な水流制御が必要です。根の成長を妨げない流速、適切な傾斜、水温の維持。これらが少しでもずれると、作物の生育に大きく影響してきます。
特に重要なのが循環システムです。魚の飼育水を野菜の栽培に利用し、その水をまた魚槽に戻す。このサイクルが止まれば、すべてが止まってしまいます。
佐藤さんは言います。
「安かろう悪かろうの設備で始めると、後からお金も手間もかかります。最初の設備投資は、ケチらない方がいいですよ」
設備投資の具体的内訳
【栽培システム:600万円】
▼栽培ベッド一式:300万円
・高耐久NFTパネル
→耐用年数10年以上
→UV加工済み
→清掃が容易な構造
・架台構造
→耐荷重性を考慮
→高さ調整可能
→防錆処理済み
・循環ポンプ
→予備系統込み
→インバーター制御付き
▼環境制御装置:200万円
・空調システム
・換気設備
・制御盤
▼作業設備:100万円
・作業台、選別台
・資材保管棚
・工具類一式
【魚槽システム:500万円】
▼主水槽:250万円
・FRP水槽(10t×3基)
→断熱構造
→排水システム付き
→観察窓付き
・ろ過システム
→生物ろ過槽
→物理ろ過装置
→スラッジ除去装置
▼管理システム:150万円
・水質監視装置
・自動給餌機
・モニタリング装置
▼配管設備:100万円
・循環ポンプ類
・配管・バルブ類
・予備システム
資金調達の現実
総額1,300万円の設備投資。これをどう調達するか。田中さんは以下のプランを立てました。
【調達内訳】
▼自己資金:500万円
▼農業公庫融資:600万円
・金利:0.9%
・期間:15年
・月々返済:4.2万円
▼補助金活用:200万円
・農業次世代人材投資資金
・県の新規就農支援
・環境配慮型農業支援
【運転資金:200万円】
▼種苗費:30万円
▼初期餌料:20万円
▼人件費予備:100万円
▼その他経費:50万円
「補助金の申請、もっと増やせないんですか?」
この質問に対し、農業指導員の山田さんはこう答えました。
「補助金は、あくまでもプラスアルファと考えるべきです。交付決定に時間がかかることも多いですし、条件も厳しい。基本は自己資金と融資で回る計画を立てることですね」
この言葉には重みがあります。実際、補助金待ちで事業開始が遅れ、計画が狂うケースも少なくないのです。
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