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アクアポニックス経営の実際 ~成功者たちの現場から学ぶ運営のすべて~第4部:経営を安定させる工夫

「数字より大切なものがある」

そう語るのは、静岡で5年目を迎える鈴木さん。天井から吊るされた栽培ベッドには、みずみずしいレタスが整然と並んでいます。

「もちろん、売上も大事。でも、お客さんの"また買いたい"という言葉。それを聞くために、私たちは細かなことにこだわっているんです」

品質へのこだわり

早朝5時。鈴木さんは収穫したレタスを一株ずつ丁寧に確認していました。

「葉の張り、色つや、根の状態。基準に満たないものは、容赦なく加工用に回します」

市場出荷なら、もう少し基準を緩めることもできる。でも、それはしない。理由を聞くと、鈴木さんは静かに微笑みました。

「一度でもお客様の期待を裏切ると、信頼を取り戻すのに何倍もの時間がかかります。だから、少々効率が悪くても、品質は絶対に譲れない」

効率化という誘惑

「最初は、とにかく効率を追求していました」

群馬の山田さんは、過去の失敗を率直に語ってくれます。作業時間を短縮するため、収穫から出荷までの工程を極限まで簡略化した時期もあったそう。

「でも、それで品質が落ちて、常連のお客様から苦情をいただいてしまって...」

その経験から学んだこと。それは「効率化は必要だけど、それは品質を維持した上での話」だということ。

今では、必要な手間は惜しまない。その代わり、本当に必要な作業とそうでない作業を見極める目が養われたといいます。

人の育成という投資

「技術は教えられます。でも、心構えは伝染するもの」

愛知の中村さんの施設では、パートさんも含めて全員が品質管理の目を持っています。

「どうしてここまで細かいことをするの?と、最初は戸惑う人も多いんです」

でも、お客様からの「おいしかった」という言葉を直接聞く機会を作る。すると、徐々に変わってくるそう。

「自分たちの仕事に誇りを持てるようになる。それが一番の品質保証になります」

データの活用

「感覚も大事。でも、数字で裏付けられると強い」

鈴木さんの施設では、様々なデータを取っています。でも、それは単なる記録ではありません。

出荷した野菜の状態、お客様からのフィードバック、保存状態による変化。それらを丁寧に記録し、次の改善につなげています。

「たとえば、気温が30度を超える日の午後に収穫したロットは、傷みやすい傾向があることが分かりました」

この発見から、真夏の収穫時間を早朝に限定する取り組みが生まれたそうです。

価格設定の哲学

「安売りは、絶対にしません」

山田さんは断言します。

「品質に自信があるなら、それに見合う適正な価格を付ける。それが生産者の責任だと思います」

実際、山田さんの商品は地域の相場より2-3割高め。でも、多くのお客様が定期的に購入してくれています。

「美味しさと安心。それに見合う価値を提供できているという自信があるから、価格は下げない」

コミュニケーションの力

面白いのは、多くの成功者が「農業は接客業」だと口を揃えること。

「お客様との会話は、何よりの市場調査です」と中村さん。

「食べ方のアドバイスを求められたり、保存方法を聞かれたり。そんな何気ない会話の中に、商品改善のヒントが隠れています」

直売所での会話、SNSでのやり取り、料理教室の開催。様々な形でお客様との接点を作り、そこから学んだことを生産に活かしています。

明日への投資

「経営の安定は、目の前のことだけを考えていては実現できない」

鈴木さんは、毎月の売上の一部を必ず設備の更新準備金として確保しています。

「古くなった部品の交換、新しい技術の導入。それらの準備を怠ると、必ず後で痛い目を見ます」

でも、それ以上に大切なのは人への投資だと言います。

「技術を磨き、お客様との信頼関係を築く。それができる人材を育てることが、本当の意味での経営の安定につながるんです」

[続く...]

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