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1/23 海

海に行きたい。と思った時に浮かぶその海は、ホイッスラーの描く水辺のように穏やかな波が打ち寄せ、水面がきらめいている。
実際に海を目の前にしてみるとそこにあるのは、身体にぶつかってくるような巨大な波の音と、一瞬たりとも休まず髪を乱す風と、風に乗って目や靴やあらゆる身体の隅々に侵入する砂。

命を感じる。圧倒的な命。
私が妄想の中で思う海とは違うその命の躍動を、海に行くたびに新鮮な気持ちで受け止める。

はじける飛沫のひとつひとつ、打ち寄せる波のひとつひとつ、ただ一度だけ共にある細胞たちはどのくらいの時間一緒にいて、そして離れてゆくのだろう。

例えば忘れたくない思い出があったとして、私たちの細胞なんて一年もあればほとんどが生まれ変わっているのに、その懐古的感情はどこから来るのだろう。

魂と呼ばれるもの、だろうか。

空も海もいつも変わらずそこにあると人は言うけれど、
同じ姿であるはずはなく、一瞬前のそれはもう、二度は現れない。
私たちのよう。

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