晩夏のカエル
カエルは土から出てくると
空が高いのに気が付いた
雨上がりの陽の光は
もうずいぶんと遠くに見えて
しずくの一滴がこずえの先から滴った
さてこの一滴が
カエルの鼻の先を打つと
少し肌寒くなった
乾いた落ち葉の下が
まだ少し暖かかった
気の早い仲間たちは
もう鳴くのもやめて
せっせと冬の支度に入るらしい
カエルは土の中で
自分はどうしようかと考えて
まぁ、あと一週間くらいは鳴いてみようかと
そしてもう一度眠ることにした
今年の夏は雨が多かった
真夏のある夜
湿った空気に胸を躍らせ
月に向かってゲコゲコ鳴くと
一つ二つと声が増え
やがて夜は月と星の瞬きと
そして仲間の声に満たされて
この時のために生まれてきたのかと
少し涙など浮かべて
今年の夏も楽しかった
やっぱりもう少し鳴いていよう
仲間も何匹か誘ってみよう
夜の間に雨でも降らないかと
木陰の隙間から空を見ていたが
何度見ても陽の光は
ずいぶんと遠く鮮やかで
それはそれは綺麗な茜色であった