20歳で初のお葬式お焼香

そう、今から36年前のお話だ。
不動産ブローカーというグレーからブラックじゃろというカラーの仕事を彼はしていた頃に、私はその彼の子を産んだ。
子を産むことで、ややこしいブラッ社会に巻きこまれたが仕方がなかった。
何故、彼の子を産んだ?
今も母に聞かれるけれど、産むことしか考えなかった私が確かにそこにいたのだから。
そんなある日、知り合いが亡くなったからお香典を届けてほしいと連絡が入る。香典とかお葬式とか行ったこともなく無経験だから、何を着てどうすればいいのかぶっつけ本番先生だ。
20歳の私の頭の中は「とりあえず喪服」
喪服って何?
黒い服だろうな?
身体の線がピッチピチのワンピースに、黒いサテンの帽子にチュールで髪はソバージュだった(パリピか!)
黒いストッキングの後ろ脚側にはストライプの線がばちこん入っていた。
メルセデスで、世田谷のお寺まで出向きピンヒールで砂利道を歩く。

明らかに嬉しい程に場違いだ
浮きに浮きまくり
厚めの香典を渡すと、署名しろとか言われたので使ったことのない筆ペンで
彼の名前を書いた。
なんと汚い字
なんと名字で一杯な名簿
早く帰りたい!

それしか頭に浮かばない
すると
「せっかくですからお焼香をして下さいませんか?」
と言われる。

お焼香?
20歳でお焼香という単語を人から聞いた。
何それ?

皆喪服で質素ないでたちのお葬式会場に、一人パリピ風の私は合わない
やだなーーーーとだけ思うけど、亡くなった人は悪くないし私も挨拶くらいはするのが筋だろう。(そんな筋いるのか?)

長い一列に並び、何やら祭壇でやっている人たちを真後ろで覗くように右に左に私は折れ曲がるほどに除いた。
どうも、皆一回は腰をおり何かを食ってる?或いは、息でも吹きかけてる?
そしてきちんと立ち何かをして、またおじぎをしお坊さんの後ろを通りすぎていた。大体の人がその体制だった。
何を食っているのだろう???

まずいぞ、私の出番がもうすぐそこじゃないか!!!!
私は、一人ドリフト族のように前の人を後ろから除きこんだが肝心の事が背中越しなので見えないのだ。悪夢だ・・・・

さあ、私の番だ慰霊写真を眺め棺の人と見比べてみた
同じ人だ(当たり前だ)
人々が何か食っていたであろう物は、ゴミみたいな粉のような物とお線香とろうそくなどが並んでいる。
どうする?
どうする?
どうする?

多分ゴミみたいな物は食わないが正解らしいが、どうするのよ?
時間は押しているし困った私は、粉末をひとつまみしてはらりと投げたのだ
イメージは、初詣の時にお賽銭を投げ入れるイメージだ。
お焼香をしに来た人が、そんな事をした人がいるだろうか?
お坊さんは気が付いただろうね。

私は2回投げて、お辞儀をしてから大股で帰った
絶対間違えていると分かっていたので、私の記憶を他人から消そうと大股で逃げメルセデスを急発進させ帰ったのだ。

喪服でミニのワンピ
イギリス王室か?という程の帽子とチュール
セクシーライン入りのストッキング
ツイスト踊れないよねくらいのピンヒール
赤茶髪のソバージュ
厚め過ぎる香典
何度ものぞき込む参列者
お焼香の意味ややり方が分からなくて、最後はお賽銭と同じ行為をした女

昨日、母とその話で腹がよじれるほど笑ったのだが母曰く
「私はその場所に居なくて良かったわ本当に・・・笑い死ぬと思うもの」
と言っていた。

知らないとか若いとか黄金級に素晴らしいよね
その後祖母が亡くなり主人も亡くなり経験値は上がったからこそ、死ぬほどおかしい私の行為。
ちょいちょい、へんてこりんな行動をやらかしていた私は20代だったけど
そういえば、30代でもやらかしていた事を今うっすら思い出している。










私の望む世界を自分なりに表現したいと思います。大体実話でございますのでよろしければ、読んでいただけましたら小躍りしたいと思います。足が不自由になってからより書きたいと思う事が増えてまいりました。私には背中に翼があることを隠せない性分なのです☆