【2025年に向けたドル円とクロス円の展望 ~トランプ政権と日銀政策の狭間で~】
最近の為替市場では、トランプ政権の関税政策と日銀の金融政策が大きな注目を集めています。
特に昨日と今日にかけて、オーストラリアとニュージーランドで相次いで利下げが発表され、市場に大きな影響を与えています。
これらの動きは、世界的なインフレ抑制の流れを示す一方で、
トランプ関税への警戒感も背景にあるんですよね。
オーストラリアの利下げは実に4年3ヶ月ぶりということで、
その影響は円高方向への圧力となっているんです。
ただし、アメリカについては少し状況が異なっています。
インフレ傾向が強まっており、他国とは違った動きを見せているんですよ。
このような環境下で、ドル円相場はどのような展開を見せるのか、
慎重に見極めていく必要があります。
まず注目したいのが、トランプ関税の影響です。
今、下のような関税措置が予定または実施されています。
・総合関税の検討
・カナダ・メキシコへの25%関税(3月4日まで延期)
・中国への追加関税10%(既に導入済み)
・自動車関税25%(4月に公表予定)
特に注目すべきは、3月4日まで延期されているカナダ・メキシコへの関税と、4月2日に予定されている様々な政策構想の結果発表です。
これらの動向が、為替市場に大きな影響を与える可能性が高いんですよ。
ただし、市場の見方にも変化が出てきています。
当初懸念されていたほど厳しい関税措置にはならないのではないか、
という見方が出始めているんです。
実際、昨日のNYダウは最高値を更新しました。
これには、ロシア・ウクライナ戦争の終結に向けた動きへの期待も影響していますが、トランプ政権の関税政策への過度な警戒感が和らいできた面も大きいですね。
特に注目すべきは、カナダやメキシコ、オーストラリアに対する鉄鋼・アルミニウムの例外措置です。
米国の主要な輸入先に対して高関税を課すことは、
米国内の需要にも大きな影響を与えかねないという認識が広がっているんです。
さらに、総合関税についても即日適用ではなく、
国ごとに調査期間を設けて段階的に導入していく方針が示されています。
これは市場にとってポジティブな要素と言えるでしょう。
こうした状況を踏まえると、トランプ政権の関税政策は、市場が当初想定していたほど急進的なものにはならない可能性が高まっているんですよ。
では、アメリカの実態経済について見ていきましょう。
株価は最高値圏推移していますが上値の重さも感じられ始めているんです。
特に3月は市場にとって重要な時期となります。
四半期末を控え、クアドラプルウィッチング(第3金曜日の先物・オプション一斉決済)もあることから、機関投資家のポートフォリオ調整が活発化する可能性が高いんですよ。
インフレ動向も注目です。1月の消費者物価指数は前年比3.0%増、
コア指数は3.3%増と、いずれも事前予想を上回りました。
この発表後、一時的にドル円は154円台を回復する場面も見られました。
一方で、小売売上高は2年近くで最大の落ち込みを記録し、
前月比でマイナス0.99%となりました。
これを受けてドル円は152円割れ寸前まで下落しています。
ただ、1月の落ち込みには、12月のトランプ就任前の駆け込み需要の反動という側面もあります。
特に耐久消費財(自動車、家具、スポーツ用品など)が大きく落ち込んでいるんですが、これらは頻繁に買い換えるものではないため、
2月以降の回復は鈍い可能性が高いと見ています。
さらに注目すべきは、1月の生産者物価指数の動向です。
28日に発表予定のPCEデフレーターの構成項目の多くが、
12月と比べて大きくマイナス方向に動いているんです。
特に航空運賃は12月のプラス5%から1月はマイナス0.3%へと大きく低下しました。金融部門やヘルスケアサービス部門も軟調な推移となっています。
このPCEの数値が予想以上に低い場合、
再びドル円の下落要因となる可能性があります。
実際、2月13-14日にかけて米10年債利回りが大幅に低下したのも、
主要金融機関がPCEの大幅な低下を予想し始めたことが背景にあるんですよ。
では、より長期的な視点でアメリカ経済を見た場合はどうでしょうか。
家計の状況を見ると、株高の恩恵を受けている一方で、
いくつかの懸念材料も出てきています。
ニューヨーク連銀の最新の家計債務統計によると、
クレジットカード残高や住宅ローンなど、
家計の債務残高が過去最高を更新しているんです。
住宅ローンは12兆600億ドルに達し、自動車ローンも増加傾向にあります。
さらに気になるのは、3ヶ月以上の延滞率が、
オートローン、クレジットカード、住宅ローンのいずれでも上昇傾向にあることです。
特にクレジットカードは金利が比較的高く、
毎月の返済負担が家計を徐々に圧迫し始めているんですよ。
これらの状況を踏まえると、
FRBの利下げ余地がどの程度あるのかが重要なポイントとなります。
市場では年内1-2回の利下げを予想する見方が多いものの、
一部には利下げは困難との見方もあります。
一方、日銀の動向も注目です。1月のCPIは前年比4%台の上昇が予想されており、日銀の金融政策にも変化の兆しが見え始めています。
特に、新たに就任した小田審議委員は脱リフレ派として知られ、
金融政策の正常化に前向きな姿勢を示しています。
GPIFの動向も重要です。昨年12月末時点のポートフォリオでは、
外国債券・株式、国内債券・株式の配分が変化しており、
今後の運用方針の変更が市場に影響を与える可能性があります。
このような環境下、
ドル円相場については、下のようなシナリオが考えられます。
短期的には140円どころがネックラインとなり、
これを下抜けた場合は137円台後半までの下落も視野に入れる必要があります。
より中長期的には、135円前後を目指す動きが予想されます。
ただし、極端な円高には進みにくい要因もあります。
日本の貿易収支やデジタル赤字の拡大、財政状況などが、
円高圧力を抑制する要因として働くと考えられます。
2025年に向けては、トランプ政権の関税政策と日銀の金融政策の行方が鍵を握ることになるでしょう。
投資家の皆さんには、これらの動向を注視しながら、
慎重な投資判断を心がけていただきたいと思います。