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【書評】『教育の効果 メタ分析による学力に影響を与える要因の効果の可視化』
どんな教育が効果的なのかだけでなく、それがなぜ効果的なのかについて、800以上のメタ分析から導かれたエビデンスをもとにした説明がなされている一冊となっています。ただ、そこで得られた効果のある教育方法が「答え」ではありません。この本の狙いはあくまで、教師の実施している指導方法を相対的に比較しながら、その効果の説明を展開することにあります。
したがって、この本から読者は「自分の教育に対する思い込みを、たくさんのエビデンスを持って相対化する」ことができると思います。
1. 影響要因の効果をどのようにして測るか
学力に与える効果についての連続尺度である効果量を作り、その影響要因を効果量に載せて比較することが1つの目的であります。この効果量という尺度は以下のような式から算出されます。
効果量 = [ 平均値(処遇群) ー 平均値(統制群)] / 標準偏差
5万件の研究成果をもとにした800のメタ分析を統合して、効果量の計算を行い、平均(d=0.4)以上の影響を「学力の向上に効果のある影響要因」と分類することとします。
2. 気になった影響要因
1. 学習者、2. 家庭、3. 学校、4. 教師、5. 指導方法という章立てで、それぞれの影響要因の効果量を並べて可視化・説明しているのですが、このnoteでは自分が気になった影響要因のみを紹介したいと思います。本には大量のメタ分析結果が載っているので、興味がある方は目を通してみてください。
■ 学校外の学習プログラム (d=0.09)
学校外で行われる学習プログラムによってもたらされる学力の伸びは小さく、教育による大きな違いは見られない。
■ 学級規模(d=0.21)
エビデンス全体を通して、学級規模の縮小が学力に与える効果は一貫して小さいことを示した。
■ クラスメイトの影響(d=0.53)
支援すること、個別指導を行うこと、友人関係を作り出すこと、フィードバックを与えること、教室や学校を学習者が毎日来たくなるような場とすることなどの影響が考えられる。
■ フィードバック(d=0.73)
最も効果の高いフィードバックは、視聴覚機器やコンピュータによって与えられるもの、あるいは達成目標と照らし合わせた形で与えられるもの、学習者に対して学習を喚起し維持するものであった。また、プログラム学習、褒めること、罰すること、外的報酬を与えることはいずれも学習に対して効果がないものであった。
■ 相互教授法(d=0.74)
各学習者が交代で「教師」となり、教師と学習者がテキストの内容に関するやりとりを交互に行い、質問生成や要約を行うことで、読んでいる文章に関する理解度をお互いにチェックする。
3. 感想
P.276からの「彼らはなぜ変われないのか」に、教師が変われない理由について研究した結果が書いてありました。以下はその引用になっています。
Shermer(1997)はある考えがたとえ効果的でなかったとしても、我々学校教育に携わる者はその考えを(時には一心不乱に)信じてしまいやすいのはどうしてかを研究した。その結果、逸話を過信してしまうこと、科学的な言い方や教育学に特有の言い回しあるいは専門用語などを用いて自分たちの考えを飾りたててしまうこと、大胆なことをいおうとしてしまうこと、他社の経験よりも自分の経験を拠り所にしてしまうこと、自分の経験こそが十分なエビデンスだと主張してしまうこと、循環論法に陥ってしまうこと(私はそれをしている、だから正しいに違いない)などが原因だと指摘した。
確かに経験知も大切。しかしエビデンスがあるならば、うまくミックスしていい教育・指導に繋げられないかな。データ分析プロジェクトにおける壁と少し似ている気がします。架け橋を上手に作れる人材になりたいです。
少々お高いですが、購入はこちらから。