IX. 西野流呼吸法基礎の稽古が終わる IX-1 捻揺、そして脊柱を左右回転、上下移動
足芯呼吸から始まった立位の西野流呼吸法基礎の稽古は、華輪、さらに頸椎から体幹、膝、足首までの回旋、次いでバレエの動作を感じる伸展呼吸、そして半身を交互に緊張と弛緩させる応涯、応天、応響、応地と進んできた。
繰り返し、繰り返し、自分の身体を意識し、身体に働きかける。
また当初は考えてもみなかった進化の古いプログラム、あるいは脊椎動物の原点である脊柱と近傍の筋群の感覚まで体験できた。
しかし、なぜこれが呼吸法Bodyworkなのか?
なぜ普通の深呼吸動作がないのか?
多くの方が持つ疑問だろう。
呼吸法と体幹運動の相互性に気がついた現在では、この不思議な呼吸法基礎稽古はMMC系体幹筋群への呼吸運動によるアクセス法と考えている。
ほぼ1時間にもわたる「不思議」な稽古。
年月を重ねれば重ねるほど動作の深みが、あたかも味が沁みるように身体に感じられる。
ここ数年Zoom呼吸法基礎短縮版を始めて、このBodyworkの日常化にも努めている。
まさに自分自身の「身体を習う」という稽古なのだと実感できる。
最後にもう数動作で、不思議な締めくくりを行う。
1)骨盤の左右回転 骨盤の鍋で芋の煮転がしを作る 「捻揺」
説明の難しい動作である。
指導員の言う「骨盤は鍋、その鍋で芋(内臓)の煮っ転がしを作るように2回廻して、左回転の時は右手を前に放り出しながら息を吐く(西野流呼吸法総本部リンク、https://www.youtube.com/watch?v=Zi0bwUFrcxQ)。
反対の右回転に移りながら速やかに息を吸って、2回転、今度は左手首を前に掘り出し、息を吐く。
ここでも手の動きは、腰(丹田)の回転の後を追って、最後に前に出す。
左右それぞれ5回。合計10回ぐらい繰り返す。
これは骨盤近傍の脊柱系体幹筋群にアクセスしている事は理解できる。
しかしさらに深い医学的意義はまだ不明である。
2)腰(身体軸)の回転 - 背骨を中心にしてその回転が上下する
これは西野流呼吸法の初期の稽古には入っていなかった動作である。
捻揺動作で腰(丹田)が気持ちよく回転するようになる。
まず腰の高さで左右回転させる。
仙台の東北大学加齢医学研究所の稽古では、その体軸回転をさらに上下に移動させるBodyworkを加えてきた。
やり方は、腰部の回転を少しずつ上方へ移動させる。
みぞおちの高さでグルグル。
さらにその上、肩甲骨の高さでグルグル。
最後は肩の高さでグルグル。
肩の高さでグルグル回すと、両腕は肩を中心にグラグラと揺れる。
肘も、手首も柔らかくグラグラになる。
(もともとは旧いVHSビデオ動画で肩での左右回旋運動をみたのが始まり)
今度は逆に、背骨に沿ってゆっくりと下にたどりながら、左右回旋を続けて腰まで。
腰でしばらく左右方向へ回したら、さらに下、膝までおろしてゆく。
膝での回旋は全身へ伝わりやすい。
肩や膝での回旋に慣れると、この動きはどこかで目にしたことを思い出す。
犬や猫が身体の水を、背骨をブルブルと回転して、周囲にふり撒くのと同じ動作である。
不思議な哺乳類に共通の、ということは学習ではなく、built-in 神経プログラムがある動作か?
膝の回旋で全身が緩んだところで、最後の「旋転・旋遊」のBodyworkに進む。