見出し画像

エピソード(V-1):華輪動作と脊髄構造・体幹骨格(肩甲骨、腰骨)・関連筋構造を考える

華輪という不思議な動作は、回旋運動で体軸(体幹筋群の連携)に働きかけるのではないか。
逆に華輪動作で連携された体幹筋群が、「体軸」感として意識化されるともいえる。
 
その華輪が中段、上段、下段と三つに分かれている。
この三つの動作にはどんな意味があるのか?
それは身体の何に働きかけているのだろうか?
 

我々脊椎動物は背骨といわれる椎骨の連続構造で体幹が形成されている。
脊椎は胎児期身体形成段階で次々と体節として尾側方向に形成されていく。
(エピソードV-2、https://note.com/deepbody_nukiwat/n/n0b8882bad5d6?magazine_key=m5c150c5d198f
この脊椎に守られている神経情報経路が脊髄であり、頭側から尾側へ続く、一連の神経細胞・神経線維の集団である。
その一部は脊椎骨から順次左右身体へ出入りし、体節毎に末梢へ分布(運動神経)、逆に身体情報(感覚神経)を集めて脊髄に戻る。
 
この脊髄という複雑な構造はどう形成されるのか?
その事実が遺伝子レベルで明らかになったのは、20世紀の終わりから21世紀に移る頃である。

神経板から神経管へ、そして神経細胞とグリア細胞への役割分化もしながら、頭尾方向、背腹方向にShh(Sonic Hedgehog)、Wnt(wint, wingless+int 1)、BMP(bone morphogenic protein)などの物質濃度勾配により、位置により機能の異なる神経細胞集団が形成されていく。
(少し詳細に関心ある方は、脳科学辞典の「脊髄の発生」(リンクhttps://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E8%84%8A%E9%AB%84%E3%81%AE%E7%99%BA%E7%94%9Fを参照。また不思議な記号のShh、Wnt、BMPなどは、形態形成に関与するタンパク質とその遺伝子名で、Wikipediaなど参照)
 
 
さてタイトルの図を見ていただきたい。
1918年解剖学教科書の脊髄スケッチである。
よく見ると脊髄の二カ所にふくらみがある。
これは頸膨大(cervical enlargement)、腰膨大(lumbar enlargement)と呼ばれる脊髄の部分である。これらの膨大部はなぜ膨れているのだろうか?
 
思い出していただきたいのがProject DeepBodyの説明に使った図(リンクhttps://note.com/deepbody_nukiwat/n/nc215a5f922a4?magazine_key=md3a66cacf93c)である。ここに再掲載する。


(出典:Grillner S, et al; Physiol Rev, 2020, doi: 10.1152/physrev.00015.2019, free article)

脊椎動物進化で、脊椎動物は元々は祖型のヤツメウナギのようにくねくね前進運動が中心であった。その左右交互システムがMMC(medial motor column、桃色部分)である。
それが対鰭(ツイキ)と呼ばれる胸鰭(後の上肢)が進化で発生し、その前後に腹鰭(後の下肢)も発生し、これらを動かす脊髄の神経システムも同時に進化した。これがGrillnerのいうLMC(lateral motor column、緑色部分)である。
 
脊髄の図に戻れば、実はこの部分が頸膨大、腰膨大に相当する。
先の脳科学辞典に戻っていただくと、このMMCやLMCも説明されている(現在これらの説明は見つけにくい)。それのみならず、体幹筋群(epaxial、hypaxial muscles)という、我々の基盤的身体構造も明示されている。のちにまたこの図に戻ることになる。
 

さて話を華輪の動作に戻そう。
いずれも身体が上部から吊されているという感覚でBodywork動作をする。
丹田(下腹部体幹筋群よりなる)から回転が始まる。
最初は中段の振りである。そして肩の上へ上肢を交互に掘り上げる上段の振りが続く。最後は深く回旋して、反対側踵を上方から覗き込む下段に続く。
 
さて以上記すと、なぜこのエピソードが脊髄の説明から始まったのか?
勘のいい人は頸膨大、腰膨大と上段、下段の華輪が結び付いたのではないか?
私は残念ながら最近になり気づいた。
(上段、下段動作の詳細は各論でまた別個述べる)。
 

さらに、この頸膨大、腰膨大の脊髄内部構造は、実際の身体構造でどんな骨格・筋群構造として反映されているのか?
前者は肩甲骨及び関連筋群から上肢の筋群である。後者は仙骨・腸骨(仙腸関節)・寛骨と関連筋群と下肢の筋群である。ともにLocomotion運動の実働部隊として完備されている。
こう理解すると、実は東洋・西洋のBodywork関連の伝承や工夫が、実際にこの体幹構造に関連することが理解出来る。
 
ここではまず理念のみで整理する。
体幹運動と呼吸を結びつける伝承として、西野流呼吸法以外に西欧バレエと、日本の相撲も並べて考えてみよう。

(脊髄、上肢・下肢骨格/筋構造、東洋・西洋Bodyworkの関連)

西野流呼吸法という東洋系Bodywork・呼吸法、体幹の関連する現象を、医学として考え、医学への応用を考えるとき、こうした図式は(今後さらに改訂しつつ)基本スキームとなるのではないだろうか?
 
一方で、西野流呼吸法がバレエをベースとして東洋系 bodyworkを取り込んだ、大変オリジナルなmethodsである事実も、この表で理解できるのでないか?

加えて、華輪のBodyworkに見られる共通点として、竹刀「素振り」、テニスラケット素振り、あるいは野球バット素振り(それが米国大リーグ大谷の大記録にも繋がる)等の、伝承に起源のある特徴的な日本スポーツの稽古である。
この問題は、後に議論したい!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?